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城山文庫の書棚から068『レジリエンスの時代』ジェレミー・リフキン 柴田裕之 訳 集英社 2023

米国の経済社会理論家リフキン氏が2022年に上梓して昨年和訳版が出た話題の本。地球を人類に適応させる「進歩の時代」から人類が地球に適応し、自然界と共存する「レジリエンスの時代」へ。気候危機が深刻化する中、不可避の方向性だ。

前半は経済学と物理学の対比が面白い。アダム・スミスが「資本の動きはニュートンの第三法則で説明できる」と言ったそうだが、どちらも数学で解析され、速度と方向性を持った物理的現象にも準える。現実の経済には非平衡、熱力学の法則が当てはまるという指摘も秀逸だ。

今まさに社会に求められているレジリエンス。災害大国である日本では「脆弱性の克服」と捉えられることが多い。しかしレジリエンスとは、ただ主導権を取り戻すことでは断じてなく、心を開いて新たな形で系の中に定着する場を確立することだと著者は説く。

1月6日の朝日にリフキン氏と斎藤幸平氏の対談が掲載されている。斉藤氏が提唱する「脱成長」に対して、リフキン氏は更なる技術革新=第三次産業革命に期待を掛ける。2人が合意したキーワードは「共感力」。人類が地球環境と共存していくうえで不可欠な要素である。