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城山文庫の書棚から021『GDX:行政府における理念と実践』若林恵編集 2021

GDX=Government Digital Transformation, 行政府のデジタルトランスフォーメーション。我が国で早急な導入が叫ばれている課題だ。本書は「世界各国のDX推進手法の調査」に基づきまとめられたブックレット。太っ腹なことに、書店で無料配布されている。私は職場も近い若林さんから直接ゲット。

https://note.com/blkswn_tokyo/n/nca8be9fe0da3

対象は英国、デンマーク、オーストラリア、タイの4ヶ国。前ふたつがDX先進国だ。興味深いのが「DXって何?」という質問に対する各国共通の答えが「ユーザー中心」ということ。要は「供給者」でなく「受益者」の視点からサービスを開発・運用しろということだ。

レポートは若林さん得意の楕円問答、脳内ひとり対話で進行。DXの本質は実はUX、デジタルよりもユーザー・エクスペリエンスが重要だという。

VUCAとよく言われる不確実性の高い現代社会は非連続的であり、だからこそ我々全員がリカレント教育の対象となる。組織もまた常に学び続けることが求められる。今後どんな未知のシステムが来ても対応できるスキルやマインドセットが不可欠になるのだ。

2021年9月に発足したデジタル庁は、DXの本質をつかんでいるのだろうか?大臣になるとされる人物が恫喝紛いの言動を垂れ流す状況を見る限り実に心許ない。台湾のオードリー・タン氏が言う通り、行政府と国民の信頼関係無くしてDXの成功はあり得ない。英国のDX担当者が言うように、"政府”のことばではなく"人間”のことばでコミュニケーションが行われることを望む。