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読書完走#385『ビオクラシー』平井有太 2016

福島に所縁のある人々へのインタビュー集。著者の平井有太さんは3.11後から福島の復興に関わるフリーライター。幕開けいきなりホセ・ムヒカ単独インタビューがすごい。しかもノーアポで。思いだけでぶち当たり、ちゃんと気持ちが通じている。遠藤ミチロウ、中川敬といった著名ミュージシャンから被災した福島の人々、2011年3月11日に現地で生まれた子供たちまで。平井さんの書く文章はラップのようにリズミカルで速度がある。短い言葉を連ね重ねて話者の心の声を描き出している。

彼の進める作業はソーシャルスケープ、社会が映し出す人々の心に形を与えること。タイトルのビオクラシーも造語で「生命主義」、資本主義や民主主義のその先にあるもの。福島にはそれがすでにあると言う。原発事故を受けた福島に否応なしに生まれた状況を指す言葉だ。

本書は友人の中村奈保子さん達によるクラウドファンディング・Nippon AWAKES, The 10th FUKUSHIMAで選んだもの。巻末に平井さんは2010年に書いた文章を載せている。“クリーンで安全な”原発をはっきり肯定する内容だ。誠実な人。そこから3.11を経た反転が彼を突き動かし、この本が生まれた。