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【意外と美味い】冷蔵庫とタッパーで自家製クラフトジンをつくる方法
そうだ、ジン作ろう
僕はお酒のジンが好きです。
好きが高じてジンを作るボードゲームの「ジンクラフターズ」を企画してしまうくらいに好きです(クラファンありがとうございました)
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ゲームはジン作りの楽しそうなところを再現するようデザインしていて、そのためにミヤザキはジンの作り方をはじめ周辺情報を勉強しています。すると、単純なのですが自分でもジンを作りたくなってしまいました。お気に入りの味で作れたら楽しそうだし、経験は良き勉強になります。
そんな簡単に素人がお酒作れないでしょ、と思われるかもしれません。でも実はジンは作りやすくて、自由なお酒なんです。
ジンについてざっくり説明すると、世界4大スピリッツの1つで、多くは無色の強めな蒸留酒です。作り方はベーススピリッツと呼ぶアルコールに、ボタニカルと呼ばれる様々な種類の植物や果物で香りをつけるだけ。
日本では「ビフィーター」や「ボンベイサファイア」といった銘柄が有名ですね。最近だと「翠」も人気。お酒売り場で見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
ボタニカルとして使用されるものはクミンやコリアンダーといったスパイスや、ローズマリーなどのハーブ、他にもフルーツや花などかなりの幅がありますが、ただ一つ、ジュニパーベリーだけは必ず入れます。
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それはジンのあの独特の香りの元になっているのがジュニパーベリーだからです。重要さで言えばバターソテーにおけるバターです。EUなど地域によってはジュニパーベリーが入っていないとジンと名乗れないと法律で決められています。
そして香りづけの方法にはさまざまな種類があったり器具があるのですが、最も簡単な方法でしたら自宅でも可能です。それはベーススピリッツにボタニカルを漬け込むというダイレクトなやり方で、かつては風呂場で作られていたことからバスタブジンとも呼ばれます。最もミニマルなクラフトジンです。
これらを踏まえると、素人でもベーススピリッツとジュニパーベリーさえ用意できればジンは作れるということ。それを知ったので僕も軽率に「ジン作ろう」と決意できたのでした。
本当にやって大丈夫か、税務署に聞いてみる
ところで、一部の方はおやおや?と思われたかもしれません。できるって言っても、素人がお酒つくったら密造酒なのでは?
その疑問は全く正しくて、基本的にお酒をつくるには税務署に申請して製造免許をもらう必要があります。ただしスーパーなどで夏が近づくと梅酒キットが売られるように、ちょっと作って個人で飲むためなら例外的に許されているのです。つまり今回は僕が飲むだけなので合法というわけ。
しかし念の為に公式ルールテキストを見よう、と国税庁HPのQ&Aを確認していたら、下記のような記載を見つけてしまいました。
焼酎等に梅等を漬けて梅酒等を作る行為は、酒類と他の物品を混和し、その混和後のものが酒類であるため、新たに酒類を製造したものとみなされますが、消費者が自分で飲むために酒類(アルコール分20度以上のもので、かつ、酒税が課税済みのものに限ります。)に次の物品以外のものを混和する場合には、例外的に製造行為としないこととしています。
また、この規定は、消費者が自ら飲むための酒類についての規定であることから、この酒類を販売してはならないこととされています。
1 米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじ
2 ぶどう(やまぶどうを含みます。)
3 アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす
ベーススピリッツにアルコール度数が強いものを選べばいいし、入れちゃいけないものも1や2は間違いようがありません。
しかし気になったのは3です。アミノ酸とかビタミンって、植物とか果物に含まれているのでは? つまり、ジンを個人で作ろうとしてお気に入りのボタニカルを加えたら違法…?
マジかと思いつつも、専門家ではないので解釈のしようがありません。とはいえジン作りをnoteに書いたらそれが証拠になって捕まるという体験は避けたいので、念の為に税務署に電話して話を聞いてみました。
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ミヤザキ:1と2はいいんですが、3のアミノ酸とかビタミンって大体の植物とかに入ってる気がするんですが、お酒に入れたら違法なんですか?
税務署の方:純粋なアミノ酸やビタミンじゃなければ大丈夫ですよ。
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大丈夫でした。食品添加物としてのアミノ酸などはNGらしいですが、アミノ酸やビタミンが含まれている食品、なら添加してOKとのこと。
冷静に考えるとこれがダメならスーパーに売っている梅酒キットも全部違法キットになるので、そりゃそうだという感じなのですが、理解していない法律周りのアクションを無調査でやるのは危ないので石橋を叩いた次第です。
最高のジュニパーベリーの割合を探る
前置きが長くなったんですが、これで安心して自宅でクラフトジン作りができるようになりました。
というわけで早速ベーススピリッツとしてウォッカと、ジュニパーベリーを購入します。Amazonで買えます。
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ベーススピリッツはアルコール度数20%以上ならなんでもいいのですが、後で香りをつけたいのでその邪魔をしないウォッカを選びました。ちなみにこのウォッカは40%です。ジュニパーベリーは良し悪しを判断できないので、他の香辛料を買うときにも見かけるGABANのものにしました。
いずれも大量(2L&200g)に買ったのですが、その理由はベーススピリッツに対してどのくらいジュニパーベリーを入れればちゃんとジンらしい味になるのか、分からなかったからです。グーグル先生に聞いても事例が見つかりませんでした。よって試行錯誤が必要になった場合備えた多め仕入れです。
早速、3パターン試してみます。
煮沸消毒した3つのタッパーにウォッカを100mlずつ入れ、それぞれ5g、10g、15gのジュニパーベリーを加えます。見た目からして15gはかなり多く思われたので、それ以上の量は省略しました。100mlの水に大さじ1の塩を入れるようなもんなので、体感的にも十分な量と言えるでしょう。
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あとは蓋を閉めて冷蔵庫に入れて待つだけ。非常に簡単です。丸一日待ってみます。
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おお、かなり色がついています。風味も溶け出していることでしょう。一般に販売されているジンは無色透明であることが多いですが、この差がまさに製法です。通常はボタニカルを漬け込むにしてもその後蒸留しするので、透明になります。今回は僕が飲むだけなので見た目は気にする必要がありません。
味見します。結論から言うと、僕の舌では区別がつかないほどにどれもジンでした。ちなみに6時間経過時点でも味見してまして、その頃はかなりウォッカの味が残っていたので、やっちまったかと思ったのですが、時間をおくとしっかりとジュニパーベリーの香り(つまりジンの香り)が強くなって、一口飲んだ瞬間にジンだ!となる味わいになっておりました。
つまり嬉しい誤算として、ジュニパーベリーは最少量の5gで十分だったようです。今後ジンをクラフトしようと思われる方は、僕のようにジュニパーベリーを200gも買う必要はありません。ぜひ覚えておいてください。
そのままボタニカルを漬け込む
しっかりジンができたので、続けて醍醐味である、ボタニカルによる香り付けに入ります。ちなみに味の違いはわからなかったので中間の10gのやつでトライ。
手法はジュニパーベリーと同じくバスタブメソッドになりますので、出来上がったタッパージンにお好みのボタニカルを漬け込むだけです。
今回入れたのは、山椒とクミンです。なぜなら僕が好きな風味だから。これらが入っているメニューをレストランで見かけると、つい頼んでしまいます。それに、市販されているジンにも入っているものがいくつかみられるので、味を大きく壊す心配もありません。いずれも1gずつ入れています。
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これも冷蔵庫に入れて大体1日待ちました。
見た目の変化はそんなにありませんでしたが、味はバッチリついていました。うまい。目隠しで飲んでも山椒とクミンが入っていることが明白で、当然お気に入りな味です。絵で例えるとジュニパーベリーを背景にして山椒がドン、クミンがドンと描かれている感じで非常に分かりやすい。ジュニパーベリーの味もまた強く残っているので、ジンの枠を外れることもありませんでした。
炭酸水で割って、ジンリッキーにもしてみます。ストレートのままだと40%のアルコールパワーがガツンと来てしまうのですが、割るとご飯に合う感じでよいです。カレーなどスパイシーな料理と合いそう。
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当初はもうちょっと試行錯誤する予定だったのですが、なんと一発でそこそこいい結果が出てしまいました。裏を返せばこれだけ雑にやってもそれなりにジンになるなら、最適な分量を研究していけば、もっと美味しくなるということかもしれません。世のクラフトジンメーカーがこだわりの味を追求し続けている理由の一端がわかった気がします。
趣味にするにしても冷蔵庫と材料があればできるので、満足度に対してコスパは非常に高いと思います。おすすめです。その後も僕は生姜、唐辛子、りんごなど色々漬けてみましたが、唐辛子以外はぜんぶ美味しかったです。
是非お試しいただきたいのですが、日本酒などアルコール度数が20%未満のお酒でやったり、お米とか入れちゃいけないものを入れてやらないように気をつけてください。
そして自分で材料そろえてやるのは面倒だけど、ゲームで体験してみたいなという方は、ジンクラフターズをぜひ。ボタニカルを集めてジンをつくる職人になれるゲームです。
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