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D&Dの公式レシピ本『ヒーローズ・フィースト』でキッチンを異世界にしよう

ミヤザキは『ヒーローズ・フィースト』を手に入れた。

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『D&D』(ダンジョンズ&ドラゴンズ)という世界的TRPGの公式料理本だ。

以前にnoteで本書の出版社であるボーンデジタルさんの書籍をご紹介したのがご縁で、こちらもいかがですかと送っていただけることになったのだ。ありがとうございます。

ちなみに『ヒーローズ・フィースト』というタイトルはD&D世界の同名の呪文が由来。その効果は“どこからともなくご馳走を生み出す”こと。つまり『ドラえもん』劇場版でおなじみの「グルメテーブルかけ」の魔法版。実在したら飲食店の株価は大暴落だ。

ファンタジー世界なのに即物的ではないかと思うかもしれないが、ダンジョンに潜るとき、常に恐れるべき敵はモンスターではなく自身の身体である。腹が減っては戦ができず、補給もままならないのがダンジョン。ただ、あまりにも多くの食料を外から持っていこうとすれば、武器などの探索に必要な他の道具が持ち込めない。ヒーローズ・フィーストはこのジレンマをエレガントに解決する。本書はそんな夢の呪文のようなレシピ集というわけだ。

ただそんなゲーム世界にちなんだ書籍だが、立派な料理本である。ミヤザキの本職はボードゲームデザイナーなので、二つ返事で紹介を引き受けたものの、料理本を紹介する作法を実は知らない。だがなんであれ本を読んだ後の振る舞いとして圧倒的に正しいのは行動することだ。古賀史健さんも、いい文章は人の心を動かし、行動させると言っていたので、いい本を読んだなら行動しなければなるまい。

そして料理本を読んだ後の行動とあれば一つ、書かれていたレシピの料理を実際に作ることである。もちろん本書は読者がD&Dの世界に住んでいなくても調達できる材料でレシピを掲載してくれているからその点は問題ない。

というわけで、「旅人のシチュー」を作った。

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本書には様々な種族の料理が紹介されているが、こちらは我々と同じヒューマンの料理だ。ドワーフ料理やノームの料理も載っていたけど、見た目に惹かれてこれを選んだ(ちなみに本書の料理の写真はいずれもやりすぎなくらい凝っていて、見るだけでも楽しい)。

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そして旅人のシチュー、クリティカル美味しい。黒ビール入れて作るシチューが美味しくないわけがない。パセリは乾燥したやつでなく、生を丸ごと乗っけてみたらビールの苦味とマリアージュした。

市販のルーなどは入れずにつくるレシピだけど、肉に小麦粉をまぶして焼くことでルーに近い旨味のドロドロが鍋内に生成されるから、弱点はない。

そして、やってみて改めて分かったことがある。人並みには料理をするので、レシピを見ながら何かを作ることにはそこそこ慣れているけれど、『ヒーローズ・フィースト』のレシピは一般的なそれらと比べると、かなり大雑把な部分が多い気がした。たとえば、あるレシピにはそのまんま「大雑把に砕く」という指示があったりした。

だけど、そうした大雑把さが本書においてはむしろ正しいと思う。なぜならフォーゴトン・レルムの地下迷宮真上にある酒場に来て、野菜の切り方に文句をつける冒険者なんているだろうか。重要なのはダンジョンに潜る前の腹ごしらえと栄養接種である。レシピはそれを提供するのに必要十分な情報が書かれていればよいのだ。

『ヒーローズ・フィースト』が本当にそういう編集方針で制作されたのかは知らないけど、そうした点においても完璧な「D&Dの公式レシピ本」だという気がする。おかげでキッチンでシチューを作っているだけで、すごく特別なことをしているような気分になれた。異世界のシチューを食べて過ごす休日は、非常にいいもんだよ。

それが『ヒーローズ・フィースト』。一度だって冒険したことがあるプレイヤーなら、本書を開けば何かを作らずにはいられないことだろう。


ナイスプレー!