科学雑誌を読んで、四色定理のゲーム『サバンナテリトリー』をつくった話 デザイン編
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科学雑誌を読んで、四色定理のゲーム『サバンナテリトリー』をつくった話 デザイン編

実は、ボードゲームのルールらしきものを考えるのはそんなに難しくはありません。何度もやっていれば、思いついたアイデアを元にして一見成立しているルールを書き上げるのは数分でできるようになります(その後の調整でその数倍の時間がかかりますが)。

一番大変なのは、書き上げたルールが実行できるモノがあって、プレイヤーが遊んでくれる状態をデザインすることです。それらを成立させるために必要なのがコンポーネントであり、ルールブックです(そしてもっと言うと印刷・流通・PRであります)。

アイデアだけでは意味がなく、実装した人こそが偉いとはどこの業界でも言いますが、ボードゲームでもおんなじなのです。

本noteではそんなボードゲームのデザインで、サバンナテリトリーが苦戦したポイントをお話しします。

ゲーム内容に対してパッケージがデカすぎる問題

サバンナテリトリーのコンポーネント開発でぶち当たった最も大きな壁は、ゲームボードのデザインでした。ゲーム内容に対して、ボードがデカすぎたのです。

プロトタイプ段階で、およそ20cm四方の正方形のサイズ。そのままパッケージ化するなら、およそ25cm四方弱のサイズにはなってしまうでしょう。下箱にボードを収める時、それを上から覆う上箱はより大きなサイズでなければならないからです。

4色定理ゲーム

この大きさに問題があるというわけではなく、このゲームの体験に対してボードが大きすぎるということです。これはいちゲームプレイヤーとしての勘になってしまうのですが、サバンナテリトリーのシンプルなプレイ感に対してこの大きさの箱サイズは噛み合わないと感じました。既存のボードゲームでいうなら『BIG SHOT』や『カルカソンヌ』のサイズになります。プレイ時間で言えば40分〜と言ったところです。

大きなサイズのパッケージになればそれだけ所有物としての満足感を高められますが、より重要なのは期待値との齟齬を生まないことだと考えました。25cm程度のパッケージではプレイヤーは上に挙げたようなゲームのプレイ感を期待してしまうのではと思われたのです。別のやりかたを考える必要がありました。

単純な分割では別の問題が発生する

加えて、気軽に手に取ってもらって、気軽に遊んでもらえるようなゲームになってほしかったので、片手で持てなさそうなサイズは避けたいとも考えていました。成人男性(僕)の手のサイズが縦横大体17cmなので、それで手に余るようだと女性やお子様はもっと大きく感じそうです。

そこでまずあたってみた解決策は、ボードを4等分してしまうことでした。

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プレイ時には4つを組み合わせて20cm四方にします。こうするとボード1つあたりのサイズは10cm四方になり、パッケージサイズも12cm四方くらいにできます。これなら、片手で持てるサイズでしょう。また、組み合わせる向きが変えられるようになったので、ゲームボードにバリエーションが生まれるというメリットがありました。

しかしこの仕様で実際のゲームをプレイしてみると、別の問題が発生しました。コマを置く時にちょっと指が当たったりしたら簡単にボードが動いてしまうのです。不可逆な動きではありませんから、すぐに直せばいいのですが、これはプレイヤーにとってストレスです。

それを解決するために、枠を更に用意してボードをそこにはめる方式も検討しましたが、そうすると結局枠パーツを収めるためにパッケージを大きくせざるを得なくなり、本末転倒なのでした。今思えば迷走ですな。

キャプチャ

検討中の図

あとはそれこそ『BIG SHOT』などのように四つの小さな四角がつながっていて、広げて大きな四角にして遊ぶボードもアリだったんですが、4分割の時に思いついたバリエーションが生まれるという良さを捨てることになるのが悩ましいところでした。

他のゲームにアイデアを求める

行き詰まったら自分の頭で考えるのはさっさと切り上げて、偉大な先人たちの頭を借りることにします。つまりすでに出版されているゲームの中から参考になるものを探すのです。

分割されたボードを組み合わせて大きなマップを作るゲームは数多く存在します。例えば世界一売れているボードゲームである『カタン』もその一つです。『カタン』では正六角形を組み合わせて、枠パーツによってそれをまとめあげています。

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画像は日本カタン協会より引用

今回は枠は無理そうだという結論は出ていましたが、正六角形というアイデアはいいかもしれないと思いました。正六角形は敷き詰めるのに適した形状だからです。

平面に図形を敷き詰める時、無駄なくできるのは正六角形・正方形・正三角形だけ。なぜかというと、それぞれ一つの角の角度が120°・90°・60°なので、並べた時に360°を作ることができるからです。

敷き詰め

よってボードの形状としては正方形以外なら、正六角形か正三角形が有力なのです。しかし、それらでもプレイ中に指などが当たってボードがズレてしまう問題は解決できません。いずれにせよズレないためには、なんらか固定する手段を講じる必要がありました。

そこで次に目をつけたのは、『クリプティッド』のボードを作る方式でした。『クリプティッド』では正六角形をいくつか組み合わせたミドルサイズのボードを6つ組み合わせることでゲームボードを形作ります。この方式であれば、ボード同士が噛み合うので、ズレるリスクが減少します。

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画像はJELLY ONLINEより引用

そうして最初に作ったのが下記のプロトタイプです。正六角形を5つ組み合わせた形状で、ちょっと触れたくらいではズレません。

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しかしこれではパッケージに入れた際にスペースのロスが大きいというデメリットがあったため、最終的に採用したのは正六角形を7つ組み合わせた形でした。

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この形状であればスペースのロスが少なめになり、当初抱えていた「パッケージが大きくなってしまう」「プレイ中にズレてしまう」という課題を解決しつつ、「様々なボードの組み合わせで遊べる」というメリットを享受できます。

こうして出来上がった形にイラストを載せてラインを調整し、サバンナテリトリーのボードは完成に至ったのでした。上の写真の白いモックが下の写真の完成形になったのはアシタさんのお力です。

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というわけで、サバンナテリトリーのメイキングnote、デザイン編でした。長々と読んでいただき、ありがとうございます。

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10月も半ばになり、サバンナテリトリーの先行販売の予約受付も残り2週間となりました。特典付きでまだまだ受付中なので、気になったかたは是非!

サバンナテリトリーのご予約受付中です


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ミヤザキユウ/ボードゲームデザイナー

ナイスプレー!

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ボードゲームを作る仕事してます。株式会社バンソウ https://banso.tokyo/ 『DEATH NOTE人狼』やGoogleさんのボードゲームの制作。自社で『トポロメモリー』『コトバグラム』『サバンナテリトリー』など。 お仕事のご相談は、仕事依頼noteへ。