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オンラインワークショップ設計の落とし穴と飛び越えかた

先日、オンラインワークショップを初めて設計&実施したのですが、当初想像していたよりも大変でした。

設計したのは、Nサロンの講座「日経新聞読み合わせワーク」。

簡単に言うと新聞をみんなで読み、シェアしあい、学び合うワークショップです。元々は日経新聞社の会議室に集まって、新聞紙をみんなで広げてワイワイやるつもりでした。しかし新型コロナウイルスの感染拡大防止のために急遽オンラインでの実施に換装することになったのでした。

恥ずかしながら、オフラインからオンラインへの換装を当初は軽く見ていました。オフラインのテストプレイで手応えがあったので、そこで見つかった修正点を踏まえてプログラムは仕上がっていたし、身体を使うようなワークでもないのだから、やることはほぼ変わらない…などと思っていたのです。

しかし蓋を開けたらオンラインのワークショップは全然別物。本番ではみなさん楽しんでいただけて一安心でした。が、舞台裏は1回目のテストプレイで「このままではヤバイ!」となって慌てて軌道修正し、本番前日に2回目のテストプレイをし、なんとかプログラムを完成させたという有様でした。このnoteでは、その過程で見つけた落とし穴とその飛び越えかたをシェアします。

地獄のテストプレイで落とし穴に落ちまくる

1回目のテストプレイは、端的に言って僕にとっての地獄でした。

滞る進行、起こらぬリアクション、参加者の頭の上に浮かぶハテナマーク…。仕上がっていたはずのプログラムは、オンラインでやろうとすると、ぜんぜん機能しませんでした。幸い、オフラインでのテストプレイにも来てくださった方も参加されていたので完全崩壊にはいたりませんでしたが、本当に申し訳なかった…。

ただ、ここで思いっきりやらかしたおかげで、オンラインワークショップの落とし穴が見えました。主に2つです。

落とし穴その1:参加者の環境がバラバラ

ワークショップをオフラインで開催するときは、みんな同じ部屋に物理的に集まります。当然、全員の環境が同じです。しかしオンラインではそれがバラバラというのが一つ目の落とし穴。

PCで参加している人もいれば、タブレットやスマートフォンで参加している人もいるかもしれません。それによってファシリテーターとしては大きめの文字で用意したはずのスライドが小さくて見えなかったり、OSによって見え方が違ったりといった事態が発生します。

つまり、こちらが情報を想像している受け取り方をしてもらえないシチュエーションが発生する可能性がオフラインとは段違いで多くなります。同じふうに発信したとしても、受け取り手がどう受け取るかの幅が広くなってしまうのです。

一方向で講義をする場合でしたら顕在化しにくい点かもしれませんが、参加者になんらかアウトプットもしてもらうワークショップでは、大きな影響が発生します。僕は気づかず自分の環境を基準にしてしまっていたのですが、そんなうまい話があるわけないのです。

落とし穴その2:お互いがどういう状況か想像しづらい

落とし穴はハード面だけでなく、ソフト面にも発生します。他者のことを想像しづらいのです。

たとえば同じ部屋にいる時、誰かがワーク中に筆箱の中身をぶちまけてしまったら「大変だなぁ」と思い、他の人も「大変だなぁ」と思っているだろうと想像できます。しかし、それぞれがそれぞれの部屋から参加するオンラインワークショップでは、他の参加者のカメラに写っている部分以外で何が起こっているのかを考える余裕って、きっとないんじゃないでしょうか。

この想像しづらさはファシリテーターと参加者間だけでなく、参加者同士でも発生します。ちょっとワーク中にもたついている人がいた時、話を聞き逃していてできないのか、通信環境が急に悪くなってしまったのか、家庭内でトラブルが起きたのか…などいろんなパターンがありうると思いますが、そこに想像を巡らせて寛容でいられるかは個々人の性格とか、それこそ環境に左右されそうです。結果、特にグループワーク中に戸惑う人が多く出る印象でした。

まとめると、「環境バラバラ×お互いを想像しづらい」というアンチワークショップのような前提があるということです。オフラインでのワークショップがいかに恵まれた環境だったかを改めて悟りました。

もちろん一方で、画面共有で資料をパッと見せられる、チャットでも会話できる、ファシリテーターがカンペを見ながら進行できるなどメリットもあります。それらのメリットが、落とし穴を飛び越える助けになってくれます。

落とし穴を飛び越える3つのアプローチ

見事に2つの落とし穴にハマってグダグダなワークショップをやらかした後、改善するために取ったのが下記3つのアプローチです。

1.表現の幅を狭める

落とし穴1&2によってもたらされた最も大きな影響は、参加者が何をしていいか分からなくなる時間が発生してしまったことでした。環境の違いでワーク内容がうまくイメージしてもらえず、グループワークでもお互いの頭の中を想像できないのでまごまごしてしまうという感じ。

そこでまず大きく変更した点がここでした。参加者が使用するツールは1つ。アウトプットにはフォーマットをあらかじめ用意します。今回はGoogleスライドを使用しました。

オフラインではホワイトボードを使うつもりだったので、当初はそれを再現するために自由度の高いアウトプットができる場をと思いスプレッドシート を用意したのですが、噛み合わずにむしろ不自由さを増長してしまっていました。自由すぎて足がつかない無重力状態みたいな感じ。

そこでフォーマットを用意することでアウトプットの仕方を統一しました。加えてフォーマットに沿ったアウトプットの見本も改めて用意しておき、いつでも見られるようにしておきます。お互いの頭の中を想像しやすくすると同時に、バリエーションがありすぎるであろう個々人の環境にアウトプットが左右されにくくするのを狙いました。

2.考える時間を絞る

ワーク以外で頭を使って考えてもらっていた部分も、こちらで選択肢を用意して選んでもらう形式に変更し、工程を短縮しました。深く考える時間は本ワーク中だけ。

国語のテストで言うなら、全て記述問題だったのを、一部を抜き出し問題や穴埋め問題に変更していったという感じです。そのほうが問題を解く負担は小さくなります。ただし、ワークの一番大事なところだけは記述問題でガッツリ頭を使ってもらいたいので、その切り分けを意識しました。

この変更のでやったことはプログラムの書き換えですが、その前段階でファシリテーター側でこのワークの価値や意味ってなんだっけ?という問いを明確にするのが大事そうです。

3.やっていることをあの手この手で伝える

他者を想像する難しさの一つに、「何やってるか分からない問題」があります。同じ部屋にいたら、参加者はファシリテーターが次の流れの準備をしてるんだなとか、何か書いてるなとか分かるのですが、オンラインではマウスをカチカチしてウインドウを探したり画面共有をしようとしてたりしても、目に見えるのは同じ顔だけです。そんな状態でひとたびやることが分からなくなったりすると、参加者の集中力が離れていく原因になります。

なので「いま画面共有しようとしてますよ~」とか「見せたいスライドを探してる所です」みたいに、自分が何をしようとしているのかを喋りながら動くようにしました。これはちょっとくどいくらいに言うのでちょうど良いなと思います。オフラインのワークショップだと他の人がやってるのをチラ見して理解したりできるんですが、そういうオプションがオンラインだとありませんし。

また、同じ効果を狙って運営側にツッコミ役にいてもらいました。Zoomの機能切り替えなどをフォローいただくのに加えて、チャット欄で言ったことをメモったり、今やっていることの意味をあえて質問してもらったりするなど。

これはすでにオンラインワークショップを手掛けられている臼井さんからの学び。臼井さんは”ワクワクさんとゴロリ”という言い方をされていました。

番組におけるゴロリは失敗したり、文句を言ったりしてワクワクさんの作業進行を妨げます。当然、ゴロリがいなくても工作は完成するのですが、番組のゴールは「ワクワクさんによる工作の完成」ではなく、「視聴者の工作の完成」です。そのゴールのために、ゴロリは視聴者がつまずきそうなところ、大変なところを先回りしてカバーしているというわけなのです。

オンラインワークショップにおいてもワークを遂行するだけならファシリテーターは一人でもいいかもしれませんが、参加者が全員ワークを遂行できる場を作るならサブファシリテーターがいた方が断然良いというのがよく分かりました。

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というわけで以上、地獄のテストプレイを経て見つけた2つの落とし穴と3つの解決アプローチでした。ワークによって解決アプローチは変わってくると思いますが、落とし穴は大体一緒なんじゃないでしょうか。このnoteがそれを避ける助けになれば幸いです。

ちなみに、こういう経緯で完成した「オンライン新聞読み合わせワーク」、ただいまNサロンメンバー限定でお届けしているワークになっていますが、参加後にレポートを書いてくださった方がいらっしゃいます。noteで「新聞読み合わせ」などと検索すると見つかりますので、気になる方はぜひ。



ナイスプレー!