科学雑誌を読んで、四色定理のゲーム『サバンナテリトリー』をつくった話 ルール実装編
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科学雑誌を読んで、四色定理のゲーム『サバンナテリトリー』をつくった話 ルール実装編

新作ボードゲーム『サバンナテリトリー』の発売が決まりました。ただいま、バンソウのECサイトで先行販売分の予約受付中です(先行予約は10/25まで)。

バンソウのECで購入いただくと、一般販売よりも早く受け取れる&特典のオリジナルコマが付きます。

発売日までの間、ルールや予約特典のご紹介、デザインノートなどの最新情報をnoteで順次公開、マガジン化しています。

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本noteではそんなサバンナテリトリーができあがるまでのストーリー、アイデアがゲームのルールになる過程をお話します。下記のnoteの続きです。

多くのボードゲームデザイナーにとって、「ルールらしきもの」を作るのはそんなに難しいことではないんじゃないでしょうか。

難しいのは、”こういうことができたら面白そうだぞ”という思いつきレベルの「ルールらしきもの」を、”多くの人が遊んで面白い”になる「ゲームのルール」に昇華させるプロセスです。

サバンナテリトリーでも、このプロセスで大いに苦労しました。

ゲームデザインは生まれた子殺しを繰り返すこと

サバンナテリトリーは製品版のルールが仕上がるまでに、何度もボツルール案を作りました。

ルールをボツにする決断は気分のいいものではありません。苦しみながら産んだ子を自分の手でくびり殺す感じです。

出来上がっているルールの背後には、こうすると面白いぞと思ってそれを考えた過去の自分がいて、それはそれで遊んで楽しいと言ってくれた人がいて、ルールブックをレイアウトしてくれたデザイナーもいます。いろんな人の力が積み重なって一度は仕上がったものだから、決して悪いものでもないのです。しかし、殺さなければなりません。

テストプレイでゲームのコアな体験を損ねかねない欠陥が見つかった時、それに見ぬふりをしてリリースしてしまうのは、将来ゲームを購入いただくお客様への裏切りだからです。お客様を楽しませるために考えたものが、それを損ねる可能性を孕んでいて、事前に気づけたなら、そうなってしまう要素を排除する必要があります。

サバンナテリトリーのプロトタイプにも、そんな要素が含まれてしまっていました。

「キングメイカー」と呼ばれる欠陥

それは「キングメイカー」と呼ばれる欠陥でした。キングメイカーとは1位争いをするゲームにおいて、1位になり得ない人が、誰が1位になるのかを決める権利を得てしまうという状態です。

例えば、ポイントを多く集めたら勝ちというゲームがあるとします。そのゲームの最終ラウンド、現在3位の人が同率1位の2名どちらかに大量のポイントを与える権利を持っていて、それで勝者が決まってしまうというケースが該当します。

僕はサバンナテリトリーで最終的に勝つのが、知力を振り絞った人であってほしいと思いました(もちろん運の要素もあるゲームですが)。そうでないと、勝ったときに嬉しくありません。だからキングメイカーが存在するのを許せませんでした。

その発見は入稿1ヶ月前

しかし実は、これに気づくことができたのは、開発がかなり進んでからのことでした。具体的に言うと、6月半ばごろです。デザインも固まっていました。今振り返ると、入稿の1ヶ月とちょっと前ということになります。ヤバイ。

サバンナテリトリーは1月時点で核となるアイデアができたものの、その後のルールの実装フェーズはコロナの影響もあって対人でのテストプレイがほとんどできていない状態でした。しかし、これ以上温め続けているだけでは、どんどん発売が遅れるばかり。だけどテストプレイをしないでリリースするわけにはいかない。でももうサタケさんにイラストもいただいている…!という感じ。

そこで苦肉の策で始めたのが、データを入力すればオンラインでボードゲームを遊べる「テーブルトップシミュレーター」でした。そのおかげでキングメイカーが見つかったのでした。リアルと全く同じというわけにはいきませんが、人と遊べば、頭の中だけで考えているルールの脆さが明らかになります。

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その後、感染対策をした上で対面のテストプレイを実施し、原因を明らかにしました。それは、情報がオープンになりすぎていることでした。プレイヤーがボードに置いていくアニマルチップが、お互いにほとんどオープンになっていたのです。

情報がオープンになっていても、囲碁や将棋のような2人用のゲームであれば問題ありません。ただ、サバンナテリトリーは3人・4人でも遊べるゲームなので、他プレイヤーの手が明らかな状態だと先の手を読むのが容易になり、ひいては勝敗を決する場面でも誰を勝たせるかを意図せず操作できてしまう形になってしまっていたのでした。

また、情報が明らかになりすぎていると、どうしても勝ちたいプレイヤーは全てのパターンを読み切るというプレイスタイルに走ることになります。しかしサバンナテリトリーは対局時計があって持ち時間を定めてプレイするようなヘヴィなゲームでもありませんので、それをすると他のプレイヤーはただただヒマになってしまうのです。

いろんな意味で、解消しなければいけない問題点でした。

情報は、考えすぎない程度に隠して、判断できる程度にオープンに

それを踏まえてさらに何度かのテストプレイと修正の試行錯誤を行い、仕上がったのが現在のルールです。詳しくは下記のnoteをご覧ください。

プレイヤーが持つチップのうちのいくつかは隠してもらい、最終局面までキングメイカーに繋がるような「完全な正解」が生まれにくいようにしました。考えすぎても答えが出ないので、他の人がヒマになるほど時間をかけることが少なくなりました。

また、プレイヤーが引かなかったチップはオープンにしておくことにしました。他のプレイヤーのチップと余ったチップが両方クローズだと情報量が少なすぎて、判断そのものができないという問題が生じたからです。

また、勝利時のポイント獲得方法に差を設けることで、誰もが最終局面でも優勝できる可能性が増すようにしました(かといって、今まで全然勝ってなかった人が急に勝ってしまうような極端な大逆転はありませんが)。

こうした改善を加えることで、サバンナテリトリーの「ルールらしきもの」が「ゲームのルール」になりました。ある限定的なシチュエーションでのみ面白いのではなく、いつ誰と遊んでも面白いゲームに仕上がったのです。

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アイデアが製品に到るまでの話をこのnoteでは最後までやりたかったのですが、やっぱり長くなってしまいました…なので完成に到るまでに欠かせない「デザイン編」はまた別noteでお話したいと思います。乞うご期待!

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サバンナテリトリーのご予約はこちらから。特典付きで一般販売に先駆けてお届けします。


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ミヤザキユウ/ボードゲームデザイナー

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ボードゲームを作る仕事してます。株式会社バンソウ https://banso.tokyo/ 『DEATH NOTE人狼』やGoogleさんのボードゲームの制作。自社で『トポロメモリー』『コトバグラム』『サバンナテリトリー』など。 お仕事のご相談は、仕事依頼noteへ。