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国産クラフトでビアスタイルひとめぐり

前書き

近年よく名前を聞くようになった「クラフトビール」。その魅力は、少量生産ならではのこだわりももちろんですが、大手ビールにはない個性・多様性にもあると思っています。

フルーツを使った甘酸っぱいビールや、コーヒー豆で香り付けした深いコクのあるビールなど、他の酒ジャンルでは類を見ないくらい(知らないだけだったらごめんなさいmm)わかりやすく個性的なレシピがあたりまえのように日々発明されています。

そこでこの記事では、日本の素敵なクラフトブルワリー(醸造所)さんの紹介も兼ねて、いろいろなスタイルのビールを、あえて国内のビールを通じて紹介していこうと思います。みんなの感想や写真を見られるリンクも一緒に貼っておくので、ぜひ見てみてください。

今年はこんな情勢ですから、せっかくなので「いつもの居酒屋」ではなかなか飲めない、ちょっと贅沢なビールで年末年始を楽しむというのはいかがでしょう。打撃を受けたブルワリーの支援にもなります。名案だと思いませんか?

なお、僕はただお酒をいっぱい飲むだけの素人なので、もし不正確なところがあったりしたら優しく教えてください 笑

おまけ: ビールの材料の話

各ビールの紹介に入る前に、知っておくとちょっと楽しいかもしれないビールの基礎知識を紹介しておきます。ウンチクなんざ後でいいんじゃ!という方は読み飛ばしちゃってください。

麦と酵母

そもそもお酒というのは、酵母とよばれる微生物の働きによってできあがります(発酵)。酵母くんたちも生きているのでどこかから栄養を摂らないといけないのですが、この酵母くんたちの主食が糖分です。彼らは糖分を食べることで栄養を得て、アルコールを排泄します。これを利用して作るのがお酒です。ようは糖分がたくさんあるところに酵母くんたちを放り込んでおくと、アルコールがたくさんできてお酒になります。

酵母くんたちは呼吸もするので、酸素を吸って二酸化炭素を出します。ほとんどのビールでは後から炭酸ガスを追加しているはずですが、この自然に出てくる二酸化炭素だけで炭酸をつけたビールというのも存在します。

ビールが麦から作られていることは多くの人が知っていると思います。麦も米などと同じような穀物ですから、お米をずっと噛んでいると甘くなってくるように、麦もいい感じに処理してあげると甘くなります(糖化)。この糖分を酵母くんたちに食わせたのがビールというわけです。

ホップ

ビールにはもう一つ、ホップというハーブが使われていることも多くの人が知っていると思います。ここまで麦と酵母しか登場していないので、じゃあホップは何をしてくれるんだという話なのですが、ホップは「ビールの魂」とも呼ばれるほど重要な登場人物です。

ホップには抗菌作用があって、そもそもビールの品質を安定させるため、持ちをよくするために使われてきました。が、たとえばもし、技術の進歩でホップなしでも安定してビールが作れるようになったとして、やっぱりホップ抜きで作ったビールには物足りなさを感じると思います。ビールの特徴というと、ぱっと思い浮かぶのはこんなところじゃないかと思います:

・綺麗な泡ができる
・がつんと苦い
・麦の香り、味わい

実はこのうち上の二つはホップのしわざです。ホップはそもそも、そのまま食べるのは結構しんどいくらい苦いハーブです。これを麦汁と一緒に煮込んであげることで、ホップの苦味や香りがビールに溶け込みます(煮沸、異性化)。またこの苦味成分には泡を壊れにくくする性質もあるので、綺麗な泡ができます。

このように、ホップは発酵には直接かかわらないものの、ビールを特徴付ける大切なハーブになっています。

さてさて、ひとしきり語って満足したので、いよいよビールの紹介をしていきます!

いつものやつ! - Pilsner 🇨🇿

ピルスナーはチェコのピルゼンで生まれ、その後世界中に広まったスタイルです。クリアな金色、良くも悪くも水っぽくて軽快、後味にはキリッとしたキレの良い苦味 、一言で表すならズバリ「いつものやつ!」です。グビグビからのプハーがたまらないアレです。大手メーカーがほぼほぼこのスタイルのビールを作るので安物と思われがちですが、温度を低く保ってじっくり発酵させる必要があり、なにげに手間のかかるビールでもあります。

岩手・ベアレン醸造所 - THE DAY Trad Gold Pilsner

ベアレンさんは毎日飲めちゃう感じの、軽め&堅実に美味しくて飲み疲れしないビールが多い素敵なブルワリーです。ビールをレモネードで割った低アルコール飲料「ラードラー」などが定番メニューにあるあたりからも、狙って健全なドリンクを作っている印象があります。 THE DAY は一般的な大手ビールと同じ「ピルスナー」スタイルではありますが、麦のやさしい甘みが豊かに感じられて、「いつものだけど、いつもとはひと味違う」ビール体験ができると思います。そんなに高くもないので、普段のビールと一緒に買って飲み比べてみるのもおすすめですよ!

ガツンとくる苦味とホップ香! - IPA 🇬🇧

IPA は「インディア・ペールエール」の略で、名前に反してもともとはイギリスのスタイルでした。当時植民地だったインドに届けるため、特別なレシピでビールを作ったのが元になったとされています。抗菌効果を狙ってホップを通常よりもはるかにたくさん投入した贅沢なビールで、ガツンとくる苦味と、ホップ特有の華やかな柑橘っぽいハーブ香が楽しめる、一番人気のスタイルになっています。

静岡・べアードビール - スルガベイ インペリアルIPA

べアードさんは静岡・沼津港にオープンした一軒のビアパブに始まり、今では都内各所に複数の直営店、さらにキャンプ場まで持っているすごいブルワリーです。ホップ農園も自社で持っており、ほとんどのブルワリーで使われる「ペレットホップ」(ホップを乾燥・圧縮して輸送しやすくしたもの) を使いません。この生ホップを最大限に活かしたのがスルガベイ・インペリアルIPAで、強烈なホップの香りと力強い苦味を体験できます。堅実でていねいな作りもべアードさんの魅力で、ホップを入れすぎたビールにありがちな渋みもあまりなく、ガスを使用せずにつけたなめらかな炭酸も楽しめる、ただ派手なだけじゃない完成度の高いビールです。

まろやかな香りが癖になる - White / Weizen 🇧🇪 🇩🇪

ホワイトはベルギーを、ヴァイツェンはお隣ドイツを発祥とするスタイルで、どちらも大麦に加えて小麦を使用するのが特徴です。小麦のタンパク質がビールに残るので、うっすら濁ったマットな見た目、シルキーな舌触りを持つものが多いです。これらのビールには独特の香り(エステル香)を放つ特別な家系の酵母が使われるので、「バナナのよう」と形容される、まろやかでフルーティな香りのビールになります。

埼玉・麦雑穀工房 - 雑穀ヴァイツェン

麦雑穀工房さんはその名のとおり、穀物類の自家栽培からビール作りを始める、自然派・手作りが魅力のブルワリーです。麦汁を取ったあとの麦かすを再び肥料に使うなど、栽培と醸造とが互いに共生してひとつのサイクルになっているのもユニークで素敵です。このように醸造家さんの思想や、背景のストーリーまで楽しめるのもクラフトビールの魅力だと思います。雑穀工房さんのヴァイツェンには小麦だけでなく、ライ麦、アワなどさらに複数の穀物が添加されていて、ヴァイツェン特有の香りとあわせてまろやかな飲み口が強調されています。

麦茶みたいなまったりビール - Bitter 🇬🇧

ビターはイギリスの伝統的なスタイルです。名前だけだとすごく苦そうに見えますが、どちらかというとホップの刺激的な苦味は控えめで、むしろ麦茶を思わせるような麦の甘みやコクがはっきり感じられるスタイルです。ビターよりもさらに軽い「マイルド」というスタイルがあり、それに比べれば苦いため、この名前になっています。昼からまったり飲みたくなっちゃうやさしい味わいで、僕のお気に入りスタイルのひとつです。

静岡・沼津クラフト (柿田川ブリューイング) - マージーサイド ESB

沼津クラフトさんは沼津の市街地から少し歩いたところにあって、こちらも極端に尖ったビールというよりは堅実に美味しいものが多い印象のブルワリーです。名前の「ESB」は「エクストラスペシャルビター」の略で、ビターの中でも特に強くて濃厚なものを指します。といっても、そもそも素の「ビター」が 4% ちょいの非常に軽いスタイルなので、「エクストラスペシャル」になってもせいぜい 6% 程度と十分飲みやすいビールです。沼津クラフトさんの ESB はあまり甘さに振りすぎず、比較的すっきりしていてバランスが良い印象があります。

肉が進むスモーキーなビール - Rauch 🇩🇪

ラオホは主にドイツのバンベルクで作られるスタイルで、名前はドイツ語の「煙」からきています。その名の通り、スモークした麦芽を使用して作るため、がっつり燻製の香りがします。ウィスキーを飲まれる方なら、「ビール界のアイラ」と言えば伝わるでしょうか?笑 ちょっと癖のあるビールで、苦手な人は苦手なようですが、好きな人にはたまらないものです。

山梨・富士桜高原麦酒 (富士観光開発) - ラオホ

国内でラオホスタイルのビールを作っている数少ないブルワリーの一つが富士桜さんです。富士桜さんはラオホに限らずもっぱらドイツビールを得意としていて、上で紹介した「ヴァイツェン」の黒ビール版「シュバルツ・ヴァイツェン」など、日本では珍しいスタイルのビールを多く作っています。この記事で紹介するブルワリーの中ではおそらく醸造規模も大きい方で、デパートや高級志向のスーパーではお目にかかれることもあるかなと思います。ビアフェスにもよく出展されているので、もし見かけたらラオホ片手に「ラオホチキン」をぜひ!

味わい深いハイアルコール - Belgian Strong Dark 🇧🇪

ベルジャン・ストロングはベルギービールの1スタイルで、氷砂糖を加えることで酵母によりたくさんの糖を食べさせて、よりたくさんのアルコールを生成させた、文字通り「ストロング」なビールです。なかでも濃色に仕上げたものがストロング・ダークで、茶褐色の見た目、ドライフルーツのような深みのある味わいとアルコールのポカポカ感で、冬の夜をゆっくり過ごすのにもってこいです。

山梨・Far Yeast Brewing - 馨和 (KAGUA) Rouge

山梨のブルワリー Far Yeast さんの代表作が KAGUA シリーズです。これは和食に合う高級ビールをコンセプトにデザインされたシリーズで、中でも Rouge はどっしり構えたベルジャンストロングをベースに、山椒をがっつり効かせてアクセントに柚子を入れた、華やかなハイアルコールビールです。一度飲んだら忘れられない個性的なビールなのに、しっかり美味しくて食事の邪魔もしない、無二の体験ができます。 Far Yeast さんは缶商品を大規模展開しつつサブブランドではかなり挑戦的なビールを作り続けていたり、産業とカルチャーの狭間でクラフトビールのあり方を模索されている印象があって注目しています。

ドライで素朴な田舎ビール - Saison / Farmhouse 🇧🇪

セゾンはベルギー発祥のスタイルで、昔の農家さんたちが夏場の水分補給のため、冬の間に仕込んでいたビールが原型とされます。そのためファームハウス (農家) エールとも呼ばれます。キリッと辛口寄りで、ホワイトなどと同じく酵母の作る独特の香りを生かしたものが多いです。また酸味、臭み、エグみなどの複雑な味わいにも比較的寛容で、適度ならそれも魅力とされるイメージがあります。地元のフルーツで香りづけしたビール、野生の微生物で自然発酵させたビールなど、手作り感のある作品が多くて好きなスタイルです。

神奈川・ヨロッコビール - All you need is Flowers (& Seeds)

ヨロッコさんは「Your local beer」と「喜び」をかけた名前になっていて、文字通り「地元に根ざしたビール」をコンセプトにしたブルワリーです。地に足つけて地元の飲み手に愛されるビールを作っていくことで深みが出てくる、という考えが素敵だと思います。素朴で繊細な味わいが得意なイメージですが、中でも去年・今年の夏に発売された All you need is Flowers (& Seeds) はお気に入りの一杯です。ややドライで癖もそこまでない、さっぱり飲みやすいセゾンに、地元鎌倉で採れたカモミールを加えて香りづけした、外で昼からゆるゆる飲みたい感じの癒し系ビールです。定番品ではないのですが、次の夏にはきっと現地で、笑って乾杯できたらいいなという期待も込めて紹介させてください。

濃厚でコクのある "黒ビール" - Porter / Stout 🇬🇧

ポーターはイギリス発祥のスタイルで、「運ぶ-人」 (port-er) の名の通り、当時荷運びを仕事にしていた人たちの間でよく飲まれたビールだそうです。深煎りの麦を混ぜて作るため、色はこげ茶〜黒で、見た目のとおりコーヒーやチョコレートを思わせるようなコクがあります。いわゆる「黒ビール」です。なかでも特に度数が高く濃厚なものをスタウトと呼ぶようですが、ポーターを名乗るビールにもなかなか強烈なものはあるので、あまり気にしなくてもいいと思います。

宮崎・宮崎ひでじビール - 栗黒

ひでじさんは 90 年代のいわゆる「地ビールブーム」の頃から続く、国内のクラフトとしては古参のブルワリーのひとつです。栗黒はひでじさんの代表作と個人的に思っている作品で、アルコール度数 9% の強めのスタウトに、地元宮崎の栗で香りづけをしたビールです。僕はもともと栗のフレーバーコーヒーなんかも好きだったので、そんなの美味しくないわけがなかろうという気持ちで試してはみたのですが、飲んでみると期待以上に美味しくて驚いた記憶があります。栗のまろやかで香ばしい香りとスタウトのずっしりとしたコクがばっちり噛み合っていて、たんにそれぞれの素材の味が感じられるだけでなく、長期熟成をかけたビールのような、独特の深み・一体感があります。

ネクターのような濃厚ホップ爆弾 - NEIPA / Hazy IPA 🇺🇸

NEIPA は New England IPA の略で、名前の通りアメリカ北東部 (New England) で独自進化を遂げたやばい IPA です。ホップのフルーティな香りを徹底的に引き出すのが特徴で、苦味も控えめなので、トロピカルジュースのように極めて飲みやすいビールです。ホップの成分が大量に残るため濁った見た目をしていることが多く、 Hazy (霧がかった) IPA とも呼ばれます。「ホワイト」のように小麦・オーツ麦などをブレンドすることでさらに濃度をつけ、よりジューシーに仕上げたものもあります。ど派手なスタイルで賛否はありますが、今ぶっちぎりでバズっているのは間違いないスタイルです。

三重・伊勢角屋麦酒 (二軒茶屋餅角屋本店) - ねこにひき

伊勢角さんは創業数百年にもなる歴史ある茶店に始まり、代々続くお餅 (和菓子) 屋さんのかたわら、現在の社長さんのもとビール醸造でも大成功しているユニークなブルワリーです。社長さんが微生物好きすぎて博士号まで取ってしまったというエピソードが好きです (「ヒメホワイト」はその成果を生かしたビールと思われます)。ねこにひきは本場アメリカの Culmination さんとタッグを組んで醸造した NEIPA で、ジューシーでバランスのとれた飲みやすいビールになっています。 NEIPA は派手でわかりやすいジャンルなので、ホップの密度をどんどんあげるとか、濁りをどんどん強くするといった過激な方向に行きがちなのですが、ねこにひきは NEIPA スタイルのいいところは生かしつつ、あくまで安定感のある仕上がりになっている印象があります。伊勢角さんの社長と Culmination さんの社長さんがともに猫を飼っているので、「猫二匹」をデザインしたラベルになっています。

きゅっと酸っぱい個性派ビール - Sour

サワーはその名前の通り、「酸味」が特徴のビアスタイルです。ものによっては口がキュッとなってしまうくらい本気で酸っぱいものもあるので、「酸味の強いコーヒー」くらいを想像してかかるとビックリするかもしれません。サワーは正確にはひとつのスタイルというより、スタイルの総称というのが近くて、酸っぱいビールの中にもまたいろいろな作り方のものがあります。

野生酵母系

サワービールの流派は大きく2つに分けられます。片方は、純粋培養された酵母ではなく、野生の酵母を使ってビールを作る派です。日本酒の「蔵つき酵母」に近い概念かもしれないです。野生酵母で作るビールには、ビール作りで通常使われる酵母 (S.セレビシエ) 以外にもいろいろな微生物が入るので、その相互作用で複雑な味わいのビールができます。特に乳酸菌が十分含まれていれば、彼らが乳酸を作って酸っぱいビール、サワーができます。昔からの伝統製法を守り続けているブルワリーや、それをリスペクトする一部のブルワリーで作られます。

ケトルサワー系

サワーのもう一つの流派がケトルサワー派です。こちらは通常のビールと同様、培養されたピカピカの酵母を使います。その代わりに、酵母を投入する前にあらかじめ乳酸菌を入れて酸味付けをしておきます。十分酸味が付いたところで麦汁を煮込んで乳酸菌を殺菌し、こんどは酵母を入れます。このようにサワーづくりを二段階に分けることで、伝統的な方法に比べて安全・手軽に、クセの少ないサワーを作ることができます。そのままでは味気ないので、フルーツやスパイスを入れることで複雑な味わいを加えることも多いです。

滋賀・Two Rabbits Brewing (二兎醸造) - Pineapple Kiss

Two Rabbits さんは滋賀の小さなブルワリーで、ブルワー (醸造家) さんの出身地でもあるオーストラリア産ホップのフルーティな香りを取り上げた SMaSH IPA (Single Malt and Single Hop) などを作られています。 Pineapple Kiss は Two Rabbits が去年・今年の夏に発売したケトルサワーです。これは IPA のようにホップの香りを効かせたサワーで、乳酸の酸味とホップのトロピカルな香りが合わさって、とてもフルーティな味わいのビールになっています。名前の通りパイナップルをぜいたくに使用……と思いきや、ホップと乳酸発酵の力だけでこの香りが出ているというので驚きです。酸味もほどほどでサワー初心者にもおすすめしやすく、来年も出るといいなーという期待も込めての紹介です。

洋酒のような長期熟成ビール - Barrel Aged

バレルエイジド (樽熟成) は文字通り樽に詰めて長期熟成させたビールの総称で、たとえば樽熟成したスタウトなら「バレルエイジド・スタウト」と呼びます。略して BA と書かれることもあります。洋酒などの熟成に使用した中古の樽を流用することが多く、もともと入っていたお酒の香りや、木樽の香りが移って、濃度も増し、洋酒のような味わいの贅沢なビールになります。ウィスキーの「シェリー樽フィニッシュ」などに近いイメージかなと思います。

長野・志賀高原ビール (玉村本店) - THE FAR EAST

数百年の歴史を持つ長野の酒蔵、玉村本店さんのビール部門である志賀高原ビールは、独自のビール x 音楽フェス (Snow Monkey Beer Live) を主催するなど、国内のクラフトビールシーンを語る上では外せない、存在感のあるブルワリーです。 THE FAR EAST は例年末に発売されるバレルエイジド IPA で、その熟成にはジャパニーズウィスキーのファンで知らない人はいないであろう「イチローズモルト」の樽が使われています。熟成期間の違う原酒を複数ブレンドし、そのアルコール度数は(年にもよりますが)約 15% という、もはやビールとは思えない濃厚贅沢な作品です。イチローズ樽由来のまろやかなウィスキー香がはっきりと感じられつつ、ハイアルコールビールらしい濃厚で深い味わいが全体を支えます。ビール単体でも、ウィスキーやハイボール単体でも、辿り着けない境地がここにあるという感じで、ウィスキーファンにこそぜひ飲んで欲しい一本です。

次に来るかもしれない、やばいスタイルたち

最後に、海外(特にアメリカ)では流行しているものの、まだ日本ではあまり作られていない「次に来るかもしれない」スタイルたちを紹介します。大体やばいです。

大人のデザート黒ビール - Pastry Stout 🇺🇸

パイやタルトなどのパン菓子を表す「ペイストリー」の名前の通り、ペイストリースタウトは濃厚で香ばしく、がっつり甘いスタウト(黒ビール)のスタイルです。ナッツ類で香ばしい香りをつける、チョコレートやコーヒーでコクをつける、メープルシロップやバニラ・乳糖でがっつり甘くする、洋酒の樽で熟成して香りをつけるなど、かなりやりたい放題ですが、ハマると癖になるスタイルでもあります。アルコール度数も平然と二桁台を叩き出す、まさに「飲む大人のデザート」です。

国内で飲めるペイストリースタウトとしては奥多摩・ Vertere の Baldwinii などがあります。

どろり濃厚フルーツスムージー - Smoothie Sour 🇺🇸

野菜やフルーツをミキサーにかけて作るドリンク「スムージー」の名前の通り、スムージーサワーは信じられない量のフルーツを放り込んで作ったサワービールのスタイルです。飲み終わったあとのグラスには本物のスムージーのようにフルーツ果肉がびっしり残る、冗談抜きで濃厚なビールです。乳酸の酸味、ほのかな炭酸、後味のかすかな穀物感などにサワーエールの形跡を感じることができますが、あくまで主役はフルーツという画期的なスタイルです。ここまできたらもうビールじゃなくていいのでは、という声も少なくないですが、美味しいのもまた事実。一番尖ったスタイルかもしれないです。

国内で飲めるスムージーサワーとしては山梨・うちゅうブルーイングの QUARK がありましたが、まだ一度リリースされただけなので定番商品になるかは不明です。

まとめ

クラフトビールのいくつかのスタイルと、国内の代表的なクラフトブルワリーをかいつまんで紹介してみました。気になったものがあればぜひぜひ試してみてください。

また、「1スタイル x 1ブルワリー」縛りのために紹介できなかった大好きなブルワリーさんもまだまだたっっくさんあるので、もしビールって面白いんだなーと思ったら、ぜひぜひ自分の手で脚でいろいろなブルワリーを発掘してみてください!

ではでは良いお年を!

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