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琥珀の女王

「いらっしゃい」

お好きな席へどうぞ、と促された。

テーブル席の木製椅子に座る。
カウンター席には、白髪の男性客がこちらを背にして大分合同新聞を読んでいた。
がさり、とめくると、アンティーク調のカップから出ていた湯気が、ふわりと揺れた。
薄暗い店内には観葉植物が飾られる。横には、焙煎された豆が積み上げられていた。棚にはステンドグラスのランプが灯される。
アルカイックな喫茶店。

目的のものを告げて、メニューを閉じる。

店の中心には、男性の背丈ほどの器具が並べられている。
球体のガラスから、ぽたり、と水滴が落ちる。
じわり、と時間をかけて、深い焙煎の海へと落ちてゆく。
その水滴は、長い時間を掛け、色を宿して輝く雫となる。


その器具で蓄えられた液体が、目の前に、ことりと置かれた。

煮詰めたカラメルのような、深い、深い、真っ黒な飴色。
これから喉を通るコーヒーを思い、喉鼓が鳴る。

その名は、「琥珀の女王」。



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