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すいれん

10月1日 晴れ
後期の授業が始まった。この時期は何を着ればいいか迷う。ただでさえ着られる服が少ないのに、しばらく憂鬱。久しぶりの大学に疲れたら、あの本屋に逃げ込んでしまった。夏も春も、そうだった。もやもやしたり、なんか気持ちが落ちたときに行ってしまう。本屋って、平等だから。
久々のコーヒー、やっぱりいい。200円様様。久々のコーヒー、忘れてたよカップは遠くに置いておかないと。手が当たって、はい白Tにばしゃん。貴重な薄手の長袖が。しかも驚かせたのか、近くの女性もほぼ同時にコーヒーをこぼしたし。なんか、ごめん。
10月何着よ。

10月1日(水)
夏休み明け、みんなの髪色が前に会ったときよりも落ち着いている。グリーンが入った色の子が多い。色、綺麗だねって言いたいのにまだ自信がない。違ってたら。
人にたくさん会うと、その分落ち込むことも多い。
本屋さんに寄って、薄めの小説を買ってそのまま読んだ。カフェでレシートにスタンプを押してもらうと、私には栞になる。本の名前と日付と、お店の赤いスタンプ。そんなことを始めて何冊本を買ったんだろう。
インクを替えたばかりだったのだろう、まだレシートを本に挟めなくて、机の上に置くしかなかった。近くの人がコーヒーをこぼして、びっくりして本を放したらパフっとなってレシートが飛んで。あっちにもこっちにも気を取られたら、私までカップを倒してしまった。

10月6日 晴れ
月曜の1限、やっぱり人が少なかった。夏休み明けってのもあるし。異様に少ないイレギュラーな感じ、好きだけど。
本屋に行って、そのままカフェで3時間近く読んでた。今日ご機嫌かよ。前の、コーヒーをこぼした女性が今日もいた。可愛い。というか、素敵。文学少女の言葉が似合うやつ。読んでる本は、色?表紙が鮮やかで色彩とか書いてある。何それ気になるじゃんって、しっかり興味を持ってしまった。今日めっちゃご機嫌。

10月6日(月)
2300円の本を買いました。日本の伝統色の図鑑みたいな本。ペラペラめくるだけでワクワクしてくる。昔の青や緑が好きだな。浅葱色、覚えておく。
しばらくは本を買うの我慢しないと。まだ月の前半なのに、お小遣いがすでにピンチ。この本をたっぷり読まれよ。

10月11日 晴れ
バイトで恋愛話になった。違うな、これは妄想話だろう。若い女の子やカップルが多いカフェで、客を見て好き勝手にかっこいいだあれはこういう関係だと言い合う。どっちがかっこいい?と聞かれて、心が冷えた。こういう、面倒くさい甘ったるい話題は苦手だ。ここのバイトの子たちは、こういうことばかり話す。もっと静かな喫茶店とかにすればよかった。
何で辞めないんだろ。何でわざわざこんなところで働き続けるかな。
本屋に行きたい。

10月11日(土)
今日はだらだら本を読んで過ごした。文字を追わずに色と少しの説明を眺めると、本当にだらだらしている感じがする。小学生の夏休みを思い出す。
読書中の癖でコーヒーを求めてしまったのに、丁度コーヒー豆を切らしていた。わざわざ買いに出かけてよかった。浅葱色、見つけた。静かな雰囲気のおばあさんの、使い込んだ皮のバッグ。
高いコーヒーを買ってしまった。節約が難しい。

10月15日 晴れ
少ーし涼しくなって、やっとスウェットを着られる。ピンクのフードのを着ていったら、咲希ちゃんにかわいいねと言われた。泣きそうになって悔しかったー。どうしたらいいのか、どうしたいのか。金木犀に顔を突っ込んでリフレッシュ。
最近、本屋のカフェにあの人がいない。確かずっと前から、よくいた気がしたけど。

10月15日(水)
いろんな色を知って、今度は散歩欲がうずうずしている。名付けて色彩散歩。でも今の本は持ち歩けないから、スマホを片手に。
今日一番笑ったこと。大学にある金木犀の香りを盛大に嗅いでいる人を見た。男性だと思う、ピンク色のパーカーを着た人が身体を折って深呼吸をしていた。あのまま電車に乗ったら、人気者だろう。
まだ色を諦めたくない。

10月16日 曇り
夜中まで本を読んで寝落ち。起きたとき、金木犀臭くて笑った。秋限定・金木犀の香りって甘すぎないか?
今度行ったらいるかな。
最近気づいたのが、読書ばっかりしてても太らないってこと。動かないけど食べないし。
大阪万博の雰囲気が案外好きだった。55年前のは歴史の教科書で見て古くさいと思ったけど、いろんな国のそれぞれを認めてる感じが心地よかったし興奮した。

10月16日(木)
誕生日におしゃれなお茶をもらった。ありがとうね。ジャスミンティーのジャスミンを「茉莉花」と書くことは知っていたけど、改めて文字を見るとまるで電車みたい。草の冠列車。コーヒーとはまた違うスーっとするおいしさがある。たまには読書にジャスミンティーもいいみたい。明るい気持ちになれた気がする。

10月21日 曇り
授業前に本屋に寄ったらめっちゃ静か。通ってるっぽいおじいさんばっかり。広々してて自由な感じがした!買った本を教室で読んでたら、咲希ちゃんが、そんな本読むんだって言った。そんな、は多分似合ってないってことだろな。咲希ちゃん知らないでしょ、本屋には素敵な人がいるんだよ。
知的なファンタジー最高。

10月21日(火)
2週間ぶりに本屋さんに行ったら、もう匂いが懐かしい。ワクワクが止まらなかった。文庫本なのに1000円もする厚い本を狙っていたのに、まさにそこの棚に空洞が。この隙間の厚さは間違いない、レジで取り寄せをお願いした。まだ節約中だから本もカフェもなし。日本庭園の花の写真集を立ち読みしてきた。
今日の講義は面白かった。ジェンダーについての洋画を観て、特に私自身は意識したことがないはずなのに泣きそうになっていた。少し似ているのかもしれない。色が前のように見えないことで困ったり、悲しくなったり、感情を殺したり。誰にも恋愛感情を抱かない女性のあの笑顔を私はよく知っている。週末は雨かな。

10月26日 雨
雨、寒い。フードを被って本屋に走ったら、レジにあの人がいた。取り寄せ?で買ってた本は、まさに今週買った分厚いファンタジー小説。カフェで声をかけてみたら、静かにだけど嬉しそうに話してくれた。格好も話し方もすごくいい。水さん。すいって響きが綺麗で似合ってる。レシートを栞にするセンス、めっちゃ好き。いつ買ったかの記念にもなるのか。というか、取り寄せることになったのは自分のせいだ。それはごめんね。それと、嘘ついた。今度会えたら、水ちゃんって呼んでみようか。

10月26日(日)
本が届いたから、雨だけど本屋さんへ。そうしたら若い人に声をかけられて、同じ本を最近買ったと言われた。コーヒーと本の両方を謝られて、今月頭のあの人がこの人だと知った。名前がよく聞き取れなかったけれど、れんさんだと思う。どんな字を書くんだろう。雨で濡れて色が分かりづらかったけど、ピンク色のパーカーにこの体型は、金木犀の人だ。聞きそびれた。れんさんはとても綺麗な人で、二重の目と柔らかい笑顔が中性的な感じがした。

11月1日 晴れ
いい日になった。
土曜日にわざわざ取った授業がめっちゃ面白い。ショーペンハウアーが言ってたってやつが好きだった。倫理とか哲学って楽しい。
で、学食に行こうとしたら水ちゃんに会った。同じ大学だったのか。金木犀にダイブするところ見られてたらしい。本屋じゃなくても水ちゃんは静かで知的な感じで、一人で歩いてるだけで何でか魅力的。連絡先を交換したら、名前のこと話してた。何だっけな、すいれん、睡蓮か。蓮は水ちゃんが好きな花の字で、二人の名前を合わせてたらすいれん。草が連なるで列車が何とかって言ったときはびっくりした。発想力が豊かで、素敵なんだけど。

11月1日(土)
今日は目の調子が悪かった。会う人の唇がみんな緑色に見えて悲しかった。大学で蓮さんに会った。そう、蓮と書く。字からジャスミンティーの味を思い出して、草の冠列車の話をしてみたのはいまいちだったかもしれない。
そういえば蓮さんの声は女性だ。ボーイッシュな雰囲気だから可愛らしい男性だと思っていた。

11月3日 曇り
いるだろなと思って行ってみたらやっぱりいた。文化の日ですからね。いつも読んだ本の感想を書いているらしくて、そんなとこも素敵だ。ノートをちらっと見たら、藍色の大人っぽい綺麗な字があった。ますますおしゃれ。本を貸してくれて、そこから人文学部と水ちゃんの社会学部の違いについて盛り上がった。ジェンダーが最近気になるって聞いて、右手の中指を握り隠してしまった。水ちゃんなら、理解してくれるだろうか。

11月3日(月)
祝日は本屋さんへ。文化の日は本屋さんへ。
蓮さんとお互いの学部の違いを議論したのがとても楽しかった。波長が合うとはこのことだろうか。蓮さんは不思議な感じがする人だ。
つい3冊も本を買ってしまった。好きな作家さんの新刊が目に入れば仕方がないでしょう。蓮さんが手に取る本はどれも深い内容のものだった。

11月7日 曇り
咲希ちゃんが彼氏と別れたらしい。年下でピュアな感じがいいと言って付き合い始めて、何も知らない子どもだと言って別れてしまうのか。ねえと同意を求められても困る。分かってる、話を聞いてほしいだけで、ただ頷いてたらいいんだよね。
気付いてほしいとか知ってほしいとかじゃなくて、同じ人がいたら見逃したくないと思って付けてる。まだこのまちでは出会ったことがない。毎日付けてたから日焼けの跡がずっと残ってる。

11月7日(金)
気温が下がって、一気に秋色が目立ち始めたように思う。まずは洋服から、遅れて徐々に木々が深い暖色に染まる。目がこうなってからは紅葉がますます好きになった。色が変わらないままとても鮮やかに見える。
和菓子屋さんのモンブランがおいしい。かぼちゃやさつまいもの洋菓子もあったから、また行ってみよう。そのときは蓮さんに声をかけようかな。

11月12日 晴れ
水ちゃんと水曜日にカフェへ。って悪くない、最高です。
カフェに行こうって言ってたのに和菓子のお店で、でもパイとかモンブランとかのスイーツがあった。水ちゃんと水曜日にスイーツを。落ち着いたカフェと水ちゃんの相性が良くてほのぼのした。かぼちゃかさつまいもか、そりゃかぼちゃでしょ。誘ってくれてありがとう。

11月12日(水)
授業の後に蓮さんをお茶に誘ってみた。わざわざ会うのは初めてかもしれない。想像通り、とても楽しかった。本の話だけではなくて学びのことや目の前のスイーツのことなど、蓮さんと話す時間は穏やかで深い。周りの女の子たちの目まぐるしく変化していく会話とはだいぶ毛色が違うもので、たくさん考えるのにあれこれ考えなくていいのが心地いいみたい。私はさつまいも派だな。

11月18日 晴れ
咲希ちゃんとランチ、久しぶり。咲希ちゃんが彼氏と別れたから久々なわけで、そんな状態だからやめとけばよかったんだ。言った。彼氏だったらな、とか言うから。だからつい言ってしまった。正直、受け止めてくれると思った。二度と言わない。

11月18日(火)
2限目のジェンダー論で、アセクシュアルというものを知った。聞いていると意味は分かるけど、何だかイメージしづらくて、そうやってその人の視点でしか考えられないから先入観や偏見が生まれるのだと思った。それよりも、シンボルが気になった。黒や紫の旗の他に、黒色の指輪。右手の中指につけているらしい。確か、本をめくる側の手だったと思う。

11月20日 晴れ
気まずいと大学もつまらない。さっさと教室を出て、近くのいちょう並木をゆるゆる歩いてたら、そうだと歩道橋を渡ってみた。同じ高さにいちょうの葉っぱがあってずーっと続いてて、めっちゃ綺麗。何かに勝ったーって感じになった。ら、急に気持ちが落ちて、黄色の中に飛び込みたくなった。ふかふかで秋の匂いがして気持ちいいんだろうなーって。手すりにもたれて並木を目で追ってたら、くらっとしてほんとに落ちそうになって、まあいいかと思ってたら水ちゃんが見えた。だめだ。
こうやって思い出しながら今さら怖くなってきた。あのとき下で水ちゃんが歩いていなかったら、もし手すりをつかめても落ちずにいられた?
だめだ、もう本読む。

11月20日(木)
銀杏並木が見頃になりました。ただ歩くだけで満たされた幸せな気持ちになる。黄色はもともと目立つ色だけど、あれ以来は発行するように光って見える。だから銀杏がイルミネーションのようにも見えた。こうやって、前よりも綺麗に見えるようになった色もある。
歩道橋に蓮さんが立っていた。銀杏を眺めていたのだろうか、黄色い光の中で、見上げる位置に佇む姿はとても美しくて絵のようだった。見とれてしまって、でも邪魔をしたくないから歩きながら蓮さんがいる歩道橋を見上げていた。もっと幸せになった。

11月26日 雨
今日の雨はめちゃめちゃ気持ちよかった。寒くてひんやり、気持ちがすっきりする感じ。そのおかげか咲希ちゃんともいい感じに話せた。そうなんだよな、咲希ちゃんはいい子だもんな。だからずっと一緒にいたんじゃん。カミングアウトはあんまり気にしてない感じ?気を遣ってくれてたのかもなー。
傘を忘れて咲希ちゃんのに入れてもらった。パステルカラーのかわいいやつ。落ち着かないけど嬉しかった。傘の中は淡い色と甘い香りで、こんな子が嫌いなわけじゃないことに気が付いた。自分がそうなれないだけでね。
話しながら1時間近く歩いたかも。

11月26日(水)
どういうこと、私の聞き間違えだろうか。蓮さんとすれ違ったとき、一緒に傘をさしていた女の子が「まりな」って呼んでいた。誰かの話題じゃない、あれは蓮さんを呼んだ。雨だったから、聞き間違いかもしれない。

11月28日 曇り
ばれた。まあそろそろ限界だし。ずっと嘘も嫌だし。ごめんね水ちゃん。
一気にいろいろとばれて、もうやばいかなー。男の子っぽい蓮じゃなくて、同性の茉莉菜でもまた会ってくれるかな。水ちゃん優しいから、さっきも笑ってくれてた。めっちゃ安心する笑顔で聞いてくれた。

11月28日(金)
蓮さんは茉莉菜さんだった。それと、アセクシュアルであること、女性だけどそうは思っていなくて、でも男性だとも思わないこと。何となくそうかもしれないと思っていたから、驚きはしなかったけれど、名前はさすがにびっくりした。どっちも綺麗な名前。草冠が3つ連なるから蓮なのかな。そんな話をしたことがあったかもしれない。
今更だけど、聞いてよかったのだろうか。聞かれたら言うしかないから、私はひどいことをしたのかもしれない。それに、私も言えばよかったのかもしれない。また本屋さんで会いたいから、ちゃんと考えないと。
文章がつい乱れてしまった。

12月1日 雨→晴れ
午後から本屋へ。探していた本をラッピングしてもらっていたら水ちゃんが入ってきて、めっちゃ緊張した。あの本を読んでほしいけどそれよりも話したくて、本屋のカフェは静かだから散歩しながら。そのときは雨止んでた。
何話したっけ。自分のことを打ち明けながら、本の話もしたり。
水ちゃんも本をプレゼントしてくれた。知らない人の小説だった。今から読むね。
よかった。よかった。

12月1日(月)
昨日買った茉莉菜さんへの本を、もう渡すことができた。色覚異常の人が出てくる話だけど、伝わるかな。伝わらなくてもいい。会ってすぐに茉莉菜さんも本をくれた。お互いに、読んでほしい本があったみたい。
本屋さんを出ると、雨が降っていたのに太陽が出ていた。寒かったけれど、寒いときの水や日光はとても綺麗。金色の水溜まりも、うっすら見えた虹も、2人で見られたことが何より嬉しい。
本は、アセクシュアルについて書かれたものと、私が好きな作家さんの小説。この気遣いが嬉しい。さっそく読みます。
茉莉菜さんへの好きは、不思議な感情。男の子みたいでも女の子だと思っていたし、どちらかというと性別を意識しなかった。恋愛感情ではないし、波長が合う友だちよりももっと好き。

12月6日 晴れ
約束をしてないけど、お互いが当たり前のような感じで本屋に行った。いないわけがないでしょ。
もらった本の感想と、渡した本の感想と、ここ数日どきどきしてた。
いつもみたいに本を一通り見て、カフェに入ったら何かを確認することなく話した。「違う」に敏感だから、色の見え方が多くの人と違うことで生まれる感情がよく分かる。って言ったら、もう天使みたいな柔らかい笑顔。選んだ本、喜んでくれたっぽいね。

12月6日(土)
会えるかと期待して、本屋さんに行ったら茉莉菜さんと一緒に過ごせた。茉莉菜さんが選んでくれた本は2冊とも興味深くて、宝物になりました。それと、とても嬉しいことを言ってくれた。
街がクリスマスカラーになって、歩くだけで楽しいこの頃。本当は赤と緑が分からなくて寂しいときもあるけれど、やっぱりイルミネーションやツリーは綺麗。

12月10日 晴れ
きた、クリスマスフェア。ロミジュリ2冊目買っちゃった。毎年限定のカバーはずるい。それと水ちゃんにももう一冊。
何冊か選んでクリスマスにプレゼント、ってやばいかな。どうかなー。

12月10日(木)
ここ最近のもやもやが解決して、穏やかな気持ちで授業を受けられた。冬の授業は教室が恋しくなるし、外はひんやりして楽しいし、結構好き。今日は5人でキャンパス内のパン屋さんでホットサンドを食べた。外のベンチは寒くても気持ちいい。
クリスマスの話をして、みんなはテーマパークやイルミネーションが綺麗なところに行くと知った。人ごみは苦手でも、イルミネーションはいいかもしれない。私は冬とかクリスマスっぽい本を読んで過ごしていた。

12月19日 雨
寒い。キンキンな冷たさ、冬だ。部屋が暗いから電気代がやばいな。
丁度来週クリスマスだ。24日の方が盛り上がるのに水曜日までは授業って。
咲希ちゃんに新しいマフラーほめられた。かっこいいって。
嬉しいな、この頃楽しい。

12月19日(金)
生姜の季節です。いろんなお茶やスープに入れる生姜の味が幸せ。
それにしても今日は寒い。数年前まではこんな寒さのときにはしもやけができていたのに、いつのまにかできなくなった。
冬は花が少ないから、あまり散歩をしながら色を探せない。たまに鮮やかなニットやコートを着ている人を見つけると、何の色か考えてしまう。

12月24日 曇り
大学で水ちゃんに明日どう?って誘ってみた。デートのつもりはないけど、本とかお茶とか、一緒にいられたらなって。
友だちの前でまずかったかなー。あの子たちと過ごすつもりだったかな。
明日はあれ着ていこ。自由でいられる気がする!

12月24日(水)
明日、茉莉菜さんと出掛ける。誘ってくれて、すごく嬉しかった。友だちには男の子に誘われたって勘違いされた気がする。黒のマフラーがきりっとして素敵だった。
先週から雨や曇りが多くて、ひんやりして景色がくっきりして見えるけど空は暗いのが残念。明日は明るい空であってほしい。
ちゃんとクリスマスに予定があるのはいつぶりだろうか。

12月25日 晴れ
水ちゃんがただただかわいかった。幸せ、めっちゃ穏やかに過ごせた。
コーヒーセットをくれるなんてさすが水ちゃん。本のお供って、嬉しすぎる。渡してくれるときに照れてたのかわいかった。
イルミネーションも楽しかった。カップルがとにかく多い中を真っ赤なコートで堂々歩いてやった。それを横で見守る水ちゃんは天使でした。こう、髪がマフラーでたぷんってなるやつが好き。
年末年始は本とコーヒーだ。そろそろもう一つ本棚がほしくなる。

12月25日(木)
こんなクリスマスははじめて。
クリスマスだけじゃない、こんな日は今までなかった。
茉莉菜さん、ずるいくらいかっこいい。赤いロングコートでイルミネーションの中を楽しそうに歩くから、本当に素敵。本当に、かっこいい。
それに、本をプレゼントしてもらった。私が持っているのとは違うロミジュリで、限定のカバーがまた嬉しい。人から本を3冊も選んでもらうなんてはじめてで、一冊一冊が愛おしい。
そういえば今日はしっかり晴れてくれたね。
本屋さんでゆるりと過ごして、カフェでお話して、イルミネーションを見て、何も気にならなかった。イルミネーションは何色でも綺麗だった。水中の照明が睡蓮に見えて嬉しかった。
もっと身軽に生きてみたいなんて、明るい夢ができた。
このままだと興奮して眠れそうにない。
明日は大掃除の日にしよう。

12月31日 晴れ
ぎりぎりの大掃除はほぼ本の断捨離。本棚を買う余裕があれば。
手放す本を最後に読んで、もらったコーヒーを飲みながら、ってしてたらやっとさっき終わった。もう少し計画的にいきたいよ来年は。
新しく素敵な大事な友だちができた。2025年、ちょっと変われた。

12月31日(水)
今日はだいぶのんびり過ごした。お正月までのんびりしたら大変なことになりそう。でも読みたい本がたくさんあるから、やっぱり家で過ごすはず。
この数か月で、私は少し明るくなれた気がする。今年の夏までよりも楽しいと思えることが増えた。
今年最後の本にと花図鑑を読んだら、何で睡蓮が好きだったかを改めて確認できて嬉しい。葉が、水を弾くのだ。水と葉、それぞれがお互いを引き立て合って美しい。もちろん花も綺麗だけど、水面に浮かぶ葉の上の粒に惹かれたのだった。かっこいいと思ったのだ。
いい気持ちで年を越せそうです。

#創作大賞2022

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