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のび太は時計を持っている

つまりのび太は

野比のび太は、不器用な人だ。だから、勉強も運動も、遊びも、またそれらを上手くやろうとするための努力も上手くいかない。「よーい、ドン」でみんなと一斉に何かを始めても、後れを取ったり途中で立ち止まったりする。そして、何に対しても諦めない。ドラえもんの道具を借りながらでも何とかやってやろうとする姿勢を持っているが、実はそれが後れを生んでいるとも言える。


周りよりも遅いスピードで一つ一つのことに取り組むのび太は、マイペースだ。
つまり、のび太は彼のペースを持っているのだ。それは一般的なスケジュールでも効率的な配分でもないが、のび太が生きるためのペース、つまり時間を刻んでいる。


多分、のび太の生活に1から12の数字と3つの針を持つ時計は必要ない。と言うよりも、淡々と時を刻む時計がのび太の生活に合わないのだ。一般的に寝坊助と言われてしまう時間に目が覚めたとしても、のび太は起きたその時間から1日を刻み始め、ご飯を食べたり今日は何をしようかと考え始める。


そんなの誰だってそうじゃないかと思う一方、私たちはかなり時計が示す時間に執着している。ああ休日の朝を無駄にしてしまった、多くの人が働いている時間に私は何をしているんだろう、そんな風に、共通の時間を軸に生きようとしていないだろうか。


では、のび太はどんな時間を刻んでいるのだろうか。
私は、のび太が彼だけの時計を持っているように思う。のび太だけではない、一人一人が持つことのできる時計だ。もちろんそれは腹時計ではないが、もしかしたらそれも私が感じた時計なのかもしれない。

時計とは

掛け時計や腕時計は共通の時間を刻むことが求められるが、人がそれぞれ持つ時計は、時を刻み始めるタイミングを自由に設定することができる。
それは起きたときが始まりかもしれないし、家を出て活動し始めたときかもしれない。日によっても異なるだろう。

え、そんな時計ありましたっけ。ありません。私が勝手に作り上げた時計だ。センター試験前の勉強中にふと思いついて描いてみた、それは理想の暮らし方を表現していた。

文字盤は2つ。一つはお馴染みの、1から12が並ぶあれ。
その上に、クリア素材のもう一つを重ねる。文字盤にある数字は0、6、12。
2つの文字盤には短い棒のようなものが付いてあって、歯車、ではなく歯の丁度いいところに引っ掛ける。8時と0を重ねていってきます、とか。そんな風に使います。

8時に家を出てスタートを切ったその人は、仕事中に時計をのぞき込む。15時、7。家を出て7時間頑張っているのかと知る。
それはあなただけの時間だ。

時計を持つ生き方

○時を示す時間についてはふーんという程度に気にしておき、自分だけの○時間を軸に暮らすことができたら。細かいところは置いておいて、何だかいいなと思う。
私だったら、休日の昼間に時計を合わせて、読書の時間を見えるようにしたり。この1、2年で聞くようになった「自分軸の生き方」のようなものが実現するのではないかと思っている。

勉強をする時間、だらだらと過ごす時間、友だちと一緒にいる時間、それを時計に委ねるのではなく、あなたの時間で時計を作る。
想像するとワクワクしませんか。

0、6、12の時計だけで暮らせる社会になるのは、どうだろう。さすがに休日限定かもしれない。

のび太の時計

では、のび太の時計は。残念ながら、のび太は時計を合わせてさあ始めよう、とは中々ならない。
悔しさや羨ましさから突然始まる行動や、時間をかけてやっと終える宿題は、気が付いたら始めているのだ。
のび太は、何時だからする、家族が帰るまでにするというような行動は起こさない。やりたいときに、やるのだ。

宿題以外は、それはのび太にいいように作用している。
のび太が無為に過ごしているところを見たことがあるだろうか。
一生懸命に何かを作ったり、遊んだり、走ったり。何だかとても楽しそうだ。

時計を上手く使うことができなくても、やはりのび太は自分だけの時間を刻んでいるようだ。

ひとまず、キッチンタイマーのスタートボタンを押してから過ごしてみようと思う。

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#読書の秋2021 #のび太という生きかた

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