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ショートショートnote 2024/02/01

出たカードを題材に、5分でショートショートをつくってみる。


① スベリ 涙

究極の革を求めて、各地を渡り歩く。
どうしても必要なのだ。普通の革ではいけない。彼は焦っていた。究極の革はいつになっても見つからないのであった。
彼は靴職人であった。どうしても最高の靴を作らなければならない。なぜなら彼の人生がかかっている。
彼は、人生の転換点である大舞台で、すべってしまった。大ゴケにコケてしまった。彼は自分の靴の滑らかさを求めるがあまり、スベッスベの靴を作ってしまったのだ。
結果、彼は業界の笑いものとなった。こだわりの手触りを捨てた、ゴッツゴツの靴を打ちながら、涙を零した。




② 実家 バトル


氷属性の加藤くんが、今日給食の残りを持ち帰ってるのを見てしまった。
加藤くんとは幼なじみと言っていい間柄だけど、背が伸びるにつれていつのまにか全然喋らなくなってしまった。
「ねえ、どうしていつも給食持ち帰っているの」
直接聞けるはずもなく、頭のなかで加藤くんに念を送る。このとき、自分に思念属性の力があったらよかったのに、と思ったが、やっぱりよくないか。
すると、振り返るはずのない加藤くんが振り返る。
「俺んち、兄弟多いからさ、あんまりおれがとったら弟と妹がご飯食えなくなっちまうんだよ」
加藤くんの実家はみんな氷属性だけど、けんかになるとあたり一帯凍っちゃうんだって。
なんで伝わったんだろう。




③ 充電 パーティー

パーティーの会場、動き回るウェイトレスは1人の客の足元にコードがあるのを見つけてしまった。
なんであんなところに。コードは延長というには不自然に透明で、なんだかほかのだれも気にしていないように見えた。もしかしたら自分にしか見えていないのかもと思っていると、その客に注文で呼ばれる。
メニューをきいていても、やっぱりおかしい。よく見ると、そのコードがどうやら会場のどこかではなく客のくるぶしから別の客のくるぶしに、足枷のように生えている。それらがみんなの足を繋げているようにも見えた。
ウェイトレスはぞっとしたが、仕事の手前笑顔を絶やさず、客が去ってから注意深くほかの客も観察してみる。やはりくるぶしには同じようにコードがはえ、さらにその透明なコードのなかをなにかが脈打つように行き来しているのだ。
パーティーが終わると、全員のくるぶしから生えたコードはなくなっていた。ウェイトレスは気分が悪くなって、バイトをやめた。


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