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嗚呼

電車のつり革にしがみつく、同じような格好をしている人に流されぬよう。
踏ん張ってもう3駅は通過した、一向に終わりが見えない。
ふと、目の前の窓から景色を見た。面白みのないただのビル群言わば鉄の塊だ。
俺の古巣は景色を思い出した。
春になれば辺りにたんぽぽが黄色く優しい色で癒しをくれた。
夏になれば、風鈴が優しく透き通った音色で夏を知らせてくれる。
それに、蝉の声が地平線まで響いた。
秋には稲が黄金色になりライオンのたてがみのように風になびかれていた。
冬になれば、一面銀世界になり子供が笑顔で雪を投げ合っている。
俺はあんなにいい所にいたことに気づけなかったんだな。
なんて思っていると降りるはずの駅でおりれず遅刻すれすれで出社。
超えられないノルマという、足枷を引きずりながら東京中を駆け巡る。
さっき朝だと思ったら気づいたら昼だ、引くほど安い牛丼を急いでかきこむ。
シャツの下に腕に付いている時計がせかすように、時刻を示す。
「わかってる、わかってるよ」と独り言を言いながら俺は走っていた。
夕方になり、会社に帰るが気味の悪い上司のくだらないはなしを笑顔で聞き流す。
いざ、帰宅。「ただいま」と今出せる最も明るい声で言うが、返答は無い。
ご飯をコンビニの添加物が9割を占めている弁当を食べ、風呂に漬かり俺は何を目指しているのか。
答えのない難題をただひたすらに考えた。結局はわからずじまい。風呂を出て体を雑に拭いてベットに倒れこむ。ベット脇のテーブルに目をやると古巣に帰った時の親戚の写真が飾ってある。嗚呼みんなの楽しい会話がきこえてくる。
目覚まし時計がやかましく、朝を告げる。もっと良い朝を迎えてみたいものだ。
着替えて、食パンを食べ、電車に乗る、出社し、駆けずり回る、くだらない話を聞く、帰る
、飯食べる、寝る。
こんなに何の事件も出来事もないつまらない日常だ。
これが平和だと言われたら確かに、平和だ。
内紛真っ只中の場所に行きたいわけでもない。
ただ自分の行く末が分からない。
例えれば、俺は蜘蛛の巣に捕まった蝶だ。
蜘蛛という名の死がいつ自分に食いついてくるのかを、びくつきながら待っているだけだ。
こんな人生いやこんな人間になりたかったのか?問いただしても答えは曇って見えない。
さて、明日も仕事寝ないと。電気を消した。
次に、目を覚ますと、そこは古巣だった。
季節は夏、周りには小麦畑、山、俺の実家、ご近所さんの家が見える。
どこか楽しくなって自分の実家に駆け寄った。インターフォンを鳴らすと、オヤジが出てきた。「久しぶり6年ぶりだね」と声をかける。
オヤジは不思議な顔して「は?何言ってんだ。生まれたから今日までのどこのもいってないだろ。ほら、昼ご飯食べるぞ」俺には、訳が分からなかった。
とりあえず、言われるがまま、懐かしの実家に上り昼ご飯の冷やし中華を食べた。オヤジと甲子園を白熱しながら見ていた。その後ろから母は苦手しながら皿を洗っていた。そうか、久しぶりにご飯の時に人と話してる。「楽しいな」ポロっと口から出た。
またもやオヤジは不思議な顔をして「分かった。お前は熱中症になったんだ。部屋で寝てこい。夕飯に起こすから。」そうじゃないんだけどまぁたまにはいいだろう。
俺は二階に上がって一番端の扉を開けた、昔と変わらずタイガーマスクのポスターが色あせながらも存在感を出していた。
俺は黒い布団足から入り、枕に頭を預けると瞼が閉じた。
段々遠くからうるさい音が近づいてくる。
「うるせぇ!」と言い放ち目を開けると、東京の部屋にいた。あれは、夢か。
でも、いい夢だったな。なんて考えていると、本来家を出ている時間だ。
まずい、いそげ、メロスよりも急ぐんだ。
何とか電車に間に合ったが、夏なのもあって全身から蛇口を捻ったくらいの汗が流れる。
すし詰めの車内で知らないおっさんの汗の匂いが漂う。鼻をつまみたいが、つり革を話すわけにはいかない。
やっと降りる駅だ。またいつもどおりだ。
辺りは、青い空から黒く微かに星を写す黒い空になっていた。俺もやっと帰路についていたころ、普段は明日も仕事なのを恨んでいるころだ。しかし、今日は違った。また、あの夢みたいな。むしろ見しいて欲しいくらいだ。
家に帰り、ご飯などを済ませ、心弾ませながらベットに入った。瞼を閉じた。
またうるさい音が近づく。「うるせぇ」と言い放ち起きた。
あれ何故だ。何故あの夢が見えれないのか。どこか悲しさと悔しさがあった。
俺は夢すら自分で選べないのか。時計を見ると、また家を出ている時刻を示している。
遅刻だ。また、いつもの日常だ。帰って来て。俺は、久しぶりに調べ物をした。
夢が何を表しているのか。残念なことにいい答えはなかった。「なんだよ」思わず愚痴をこぼす。
ベットに入る時に何かをメモして眠りについた。また、うるさい音が近づいてくる。
ここからは、いつもどうりだ。帰って来て、昨日の夜寝る前のメモを見ると、ただ1文だけ。
{お前は何を目指してんだ?}と殴り書きしてあった。
確かに、俺はこの東京には大学のために出てきた。親から正反対された。「お前は長男だ!そんなの認めない」なんてオヤジに怒られた。俺は「ここには俺の求めるものはねぇ」なんて捨て台詞を吐いていなくなった。だが、新世界の東京は、楽しいのは最初の1年だけ。
残りは無だ。
何も感じなくなった。俺は何を目指そう考えながら寝ようとすると何かを思いつくまた、メモした。そして、幾度目のうるさい音が近づいてくる。日常だ。
帰って来てメモを見返す。そこには、{自由だ。誰からも何も言われない。ただの自由だ。}
このメモ見たときに俺の中の何かが切れた。
ベットに入り眠った。珍しく、うるさい音が近づく前に起きた。
そそくさと私服に着替える。車の鍵を持って駐車場に向かった。
最近の乗れていなかった、軽自動車に乗り込み好きな曲を流した。
高速道路でビル群を嘲笑いながら車を走らせた。
携帯が鳴り止まない、知ったことか。
俺は{自由なんだ。}こんな誰のために働いてるかわからない、仕事なんかしないさ。
数時間車を走らせた。だが、久しぶりに時間が一瞬に感じた。
ついたところは古巣だ。周りは山と畑と実家。嗚呼なんていい場所だ。
今まで、空が心みたいに曇っていたのに、今となっては絵の具を空に塗ったくらい鮮やかな青空だ。俺はこれを求めていたんだ。これなんだ。一体何年間違えてた道を歩んでいたんだ。
まぁいい今日から全てやり直して見せるさ。なんの根拠のない自信を持って、インターフォンを押した。扉が開くと夢で見た時のオヤジが出てきた。俺は「久しぶり6年ぶりだね」
と言うと、オヤジは「そうだな。昼ご飯できたぞ。早く中には入れて。野球の試合が始まる」
とだけ言って中に入っていった。恐る恐る中に入ると母が「ほら、早く座って。冷やし中華食べるわよ」ご飯を終えて、質問した。「なんで、驚かないんだよ」オヤジがそっと一言だけ「俺は前にも言ったけどな{自分が何をしたいか分からなければ、昔を思い出せ}ってな」
別に凄い助言でも、感動的な台詞でもないのに俺の目からは雨粒位の涙がほほを伝った。
俺は「迷惑かけたな。自分のしたい事見つけた。まず、田植えから教えてもらおうかな。」
そう言って俺は二階に上がった。部屋の窓から屋根に上り空を見上げると、夕焼けが哀愁と希望を混ぜ合わせたオレンジ色になっていた。
山の間に消えていく太陽に何故か頭を下げた。
思い出したかのように、着信音が鳴り続ける携帯を折って中の機械がむき出しになった。
「良いんだ。これで。これを求めていたんだ。」俺はこの時、蜘蛛の巣に囚われていた蝶だったが、蜘蛛の巣を振りほどいて天に輝く太陽目指して飛び立った。
もう誰も俺を縛れない、誰も。

                               甲骨仁

今回は誰にでも当てはまるような気持の変化を書きました。何か落ち込んでいる時にこの小説がその人の励みになってくれればなと思います。よろしければ感想をお聞かせください。

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