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超要訳 Wells タイムマシン

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 「タイムマシン」は1895年に発表された天才発明家タイム・トラヴェラーの時間旅行を記したSF小説です。作者のハーバート・ジョージ・ウェルズは「透明人間」や「宇宙戦争」などの有名なSF小説も書いています。タイムトラベラーと聞けば、映画や小説でお馴染みの時間を旅する未来人を誰しも思い浮かべますが、「タイムマシン」の主人公のタイム・トラヴェラーは、今の私たちが思い浮かべるタイムトラベラーのパイオニアです。彼は自ら発明したタイムマシンに乗って未来に旅たち、その後に一度姿を見せたきり、時間旅行の最中に姿を晦ませてしまいました。
 タイム・トラヴェラーが最初に訪れた未来は、美しい地上人と醜い地底人が生きる時代でした。世界が今よりも進歩した未来で、なぜ人類は地上人と地底人に分かれたのか、タイム・トラヴェラーは自分なりに考えをまとめますが、それらは憶測の粋を出ません。自分の考えが真実か確かめたくなるほど、タイム・トラヴェラーにとって未来の世界は興味深くなかったのです。それで地底人から盗まれたタイムマシンを取り戻すと、未来の人類社会を飛び出して時間の旅を再開させてしまいます。
 人類の行く着く先を見たタイム・トラヴェラーは、今度は地球の行く末を見ようと、人類が滅んだ後の更なる未来を旅します。数千年先の未来の景色を一望すると、更に数千年先の未来に旅立つ時間旅行を繰り返して、星の寿命に伴う地球の環境の悪化に耐えきれなくなるまで旅を続けます。しかし遂に命の危機を察すると、来た道を戻る様に一気に時間を遡って時間旅行を始めた時でタイムマシンを止めました。旅は一時中断です。
 現代に戻ったタイム・トラヴェラーは、予め夕食の約束をしていた友人たちに時間旅行の詳細を聞かせて、皆の反応を伺います。誰にも信じられない作り話と思われても、この時代には生息しない花が、タイム・トラヴェラーが自分でも夢かと疑う時間旅行が現実に起こった証拠でした。それは最初に訪れた未来で、タイム・トラヴェラーが懐かれた地上人に貰った花でした。
 時間旅行から戻った翌日、タイム・トラヴェラーはカメラと諸々の探検グッズを携えて、時間旅行の成功を決定付ける証拠を集めに出掛ける言って、タイムマシンと共に姿を消してしまいました。戻ると約束した時間になっても戻って来ないタイム・トラヴェラーに、旅先でなにかあったのかもしれません。或いは旅立った前日の夜の夕食会のように、約束よりも遅れて表れて生存を報告してくれるかもしれません。時間旅行に出掛けたきり戻らないタイム・トラヴェラーが、なぜ帰らぬ人になってしまったのかは分かりません。ですが、タイムマシンと消えたタイム・トラヴェラーが、今を生きる私たちの時代にも立ち寄っているのかもしれないと思うと、楽しくなれるお話です。

「超要訳 Wells タイムマシン」完

©2023陣野薫

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