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(デザイン⑤)意味づくりとしてのデザイン ~意味とは何か

「意味とは何ですか」と聞かれると、答えるのが難しい。日常的に当たり前のように使う言葉だから、改めて聞かれると答えに悩んでしまう。人に尋ねても、本を読んでも、ネットで調べても、たった一つの答えはない。答えは、自分の中にある、それでいいと思う。

しかし、いざ自分の言葉で伝えようとすると、言葉選びに悩む。私もその一人で、この “デザイン×マネジメント×アカウンティング” を探究している時に読み直した本にあった、わかりやすい言葉を紹介したい。
その本は『グレートカンパニー』(リッチー・カールガード著)で、デザインや意味について書かれたことを纏めると、次のようになる。

・ 優れたデザインには、機能、形、そして意味が必要である
・ デザインには意味が求められる
・ 意味とは、顧客との特別なつながりをもたらすもの
・ 意味には、つながりを創る役割がある

これらの文章から、「デザインが意味をつくりだし、その意味がつながり(関係性)をもたらす」ことがわかる。デザインの鍵は、つながりという関係性を築けるかどうかにある。

『グレートカンパニー』以外の本でも、“デザインと意味” について似たようなエッセンスがいろいろ書かれている。エッセンスから、現代社会の大きな問題を解決するキーワードがそこに在る気がしてならない。中には、驚きとともに強く共鳴する文章もあった。日本を代表する臨床心理学者の河合隼雄の『中空構造日本の深層』に、次のような文章があった。

彼(ユング)はむしろ、今まで明らかにしてきたような種々の対極性を認め、それらの間の均衡をこそ大切になるのである。一見対立するかのように見える二つのものが、むしろ相補的にはたらいて均衡を保ち、そこにひとつの全体性が存在することをよしとしたのである。
( P24より )

この文章を読んで、「対立軸でみるのをやめて、対立している相手の存在を認め、お互いの均衡(調和)をはかる何かの存在に気づく(感じる)こと」の大切さを強く感じた。私が感じた “何かの存在” こそが、意味。

「対立する二つをつなげて(つなげ直して)、もっと大きな全体性にする」ことが、意味の役割

ただつなげるのではなく、つなげた先(向こう側)までをデザインすることが求められる。

現代社会の一番大きな問題は何かと聞かれれば、社会が分断されていること、分断が拡がっていること。あらゆるところで、分断が起こっている。それも、ただ分断されているだけではない。お互いが相手を攻撃し合い、分断が憎しみそして暴力へと変わっていく。それが個人の間だけでなく、国の間でも起こっている。この問題を解決する方法が、河合のこの文章にある気がしてならない。

私が考える “意味” を、分断されて対立している間に置くことで、もう一度つながりあうのではないだろうか。いや今までにはなかった新しいつながりさえ築けると信じている。
方法はシンプルだが、実際にするとなると難しいことはわかっている。ただし、難しいとできないは同じではない。

私が考える二つのプロセス( つながりを生み出す意味をつくる ⇒ つながることで大きな全体性にする )をあわせて、“意味づくり” と私は呼ぶ。
この意味づくりは社会だけでなく、組織やマネジメントにも当てはまり、大きく影響を与えていくだろう。この意味づくりを、いろいろな言葉や文章から多面的に考えて、形に顕していきたい。カタチないものを形あるものにしていく。

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