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(マネジメント⑤)新しいマネジメント ~経営管理イノベーションとY理論

マネジメント2.0を考えていく上で、参考になった新しいマネジメント論をいくつか紹介していきたい。共通するキーワードが数多くあり、それらを最後にピックアップし、マネジメント2.0のカタチを整えていくことにしたい。

経営管理イノベーション

ゲイリー・ハメルは『経営の未来』の中で、“経営管理イノベーション” を提唱している。経営管理イノベーションの定義と必要性は、次の通り。私は近代経営管理を、「経営を科学して管理すること」と考える。この “科学して” が、マネジメントでは重要な鍵になってくる。

経営管理イノベーションとは、経営管理の仕事を遂行する手法や従来の組織の形を大幅に変え、なおかつ、そうすることによって組織の目的を推進するあらゆるものをいう。
( P21より )
近代経営管理の仕組みは、気ままで独断的で、自由な精神を持つ人間を標準やルールに従わせはするが、それによって莫大な量の想像力と自主性を無駄にする。
( P9より )


「近代経営管理を追い求めた結果、どのようになったのか。」

今の私たちの世界を見渡せば、結果は十分にわかる。会社だけでなく社会全体が息苦しくなり、息が詰まるような閉塞感で覆われるようになった。科学を求め過ぎた結果、非科学にあたる領域が希薄になり、息苦しく息が詰まるようになった。息を吐くばかりで、息を吸うことができなくなった。

もう、科学だけのマネジメントは限界にきた。科学にプラスαとなる “何かが”、マネジメントに必要となった

ハメルは、相手を管理して従わせることで、想像力と自主性を抑え込むことを問題視している。管理統制するメリットは従わせる組織側にだけあって、組織に従って働く人側にはデメリットしかない。
このことが意味する大きな問題は、「組織や経営を管理することができても、人を管理することはできない」ということ。

元々は組織や経営を管理統制していたのが、いつからか人までも管理統制するようになった。人をヒトとしてではなくモノ(機械)のように扱うようになり、会社は働く人から人間性を奪い取っていった。結果、会社も社会もおかしくなった。

マネジメント1.0は組織中心のマネジメントを目指したが、マネジメント2.0は人中心のマネジメントを目指していく

本ではハメルが提唱するマネジメント2.0という考えも提唱していて、プラスαの “何か” を考えていく上で参考になった。ハメルは変革の脅威として、「現実否認」「新しい戦略案の欠如」「配分の硬直性」を挙げている。
これらが脅威なら解決策は反対の、「現実肯定」「今までの延長線でない戦略(イノベーション)」「循環型の配分」などを、私は考える。

特に、今までの延長線でない戦略を思索していた時に思い出した言葉があった。それは、「戦略は組織に従う」。一般的にはアルフレッド・チャンドラーの「組織は戦略に従う」であるが、ジョン・ロバーツがチャンドラー命題を逆転させて提唱した言葉である(『現代企業の組織デザイン』より)。

組織をデザインし直すことで、新しい戦略が生まれてくると感じた。ロバーツ同様に従来の組織の代表的な要素を逆転させると、次のようになる。

階層がある     ⇒ 階層をなくす
組織を大きくする  ⇒ 組織を細分化する

Y理論

経営管理を考えていくと、多くの人が参考にする経営理論がある。それが、“Y理論”。Y理論は、今から50年以上も前にダグラス・マグレガーが提唱した経営理論である。詳しくは、『企業の人間的側面 ~統合と自己統制による経営』に書かれている。
Y理論に対して、古い理論(前の世代の理論)をX理論と呼んでいる。この違いをわかりやすくいえば、マネジメント1.0と2.0の違いともいえる。Y理論とは、次のような考え方になる。

人間を、仕事に意味を見いだし、自ら進んで問題解決に取り組むものとみなす「Y理論」が、未来の好ましい経営手法になる。
( P105より )

この文章は、経営管理イノベーションでふれた “人中心のマネジメント” を表している。Y理論は未来にとって望ましい経営手法でもあり、現代の経営理論に大きな影響を与えた。マネジメント2.0を考えていく上で、Y理論が提唱している意識の向け方が特に参考になった。
上からの命令・統制のやり方に意識を向けるのが、X理論。対してY理論は、個人が自己統制する機会をできるような環境づくりに意識を向ける。中でもこの二つの理論の大きな違いは、信頼への考え方にある。

X理論は相手を信頼できないから管理統制をして従わせるが、Y理論は相手を信頼して自主管理に任せる。

人を不安にさせるのがX理論、人が安心できるのがY理論。

実は組織づくりを考えていく上で、この安心できるかどうかは大切になってくる。このことについては、今組織開発などでも大きなテーマとなっている。

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