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旅をするように。

少し前に、今年初めて観た映画の話を書いた。
映画は年に、多くて片手、ほぼ一本もしくは二本しか観ない。
なのに、一月始めに一本観て、一月終わりに、もう一本観た。

ペース的には、今年ラストの映画。
ただ、この映画のことを知ってから、観たくてしょうがなく、
  指折り数えて待っていた映画。

その映画は、『風の電話』

もう、先週からすでに上映されている。

東日本大震災で家族を失ったある高校生の話。

震災後、故郷(大槌町)を遠く離れた広島(呉市)に移り住んだ彼女が、
  とある出来事をきっかけに、故郷までを旅をする話。

旅をする間に出会う人たちとの交流を通して、
  「生きる」ことを亡くなった家族に誓う話。

詳しくは、映画サイトや記事もあるので、そちらを読んでほしい。
紹介してと言われそうだけど、自分で調べて発見した方が楽しいので。

なぜ、観たかったのかというと、主役がモトーラ世理奈さんだったから。

去年のNHKのドラマ「透明なゆりかご」にゲスト出演し、
  なぜか気になった女優さん。
そういえば、主演の清原果耶さん、ゲスト出演した蒔田彩珠さんと、
  若い俳優さんが多く出ていたなと。

気になった理由は、よくわからない。

佇まいが独特で不思議で、
  言葉を発しなくても、言葉が聞こえてくる不思議さがあって
    どんな言葉を発するかが、気になっていた。

稀有な存在。

そんな風に感じた。

このことについては、今回映画に共演している俳優さんたちも語っている。
主役の彼女を支える共演者もすごく、
  西田敏行さん、三浦友和さん、西島秀俊さんなどなど。
登場人物は限られていて、じっくり映画を観ることができる。

そういえば昔、私は「奇特な人」といわれたことがある。
褒め言葉だが、言われた時は「奇妙で特別な人」と思い込んでいた。
稀有は思い込みなく、素晴らしいことを指すのが、漢字を見てわかる。

映画を見終えた感想は、ドキュメンタリー風の映画だと。
そう感じた理由が、後で映画情報をキャッチアップしてわかった。

台詞が特に用意されていたわけではないらしい。
俳優さん同士がその場で想ったこと、感じたことを、演じている。

いや、演じているというより、セッションしているようだ。
確か、俳優さんのコメントでも同じことを語っていた。

言葉が音となって、心に鳴り響く。
時には痛く、時には悲しく、時には力強く。

俳優さんの感性や姿勢そして態度などが、これでもかと試される映画。
そしてそれを、鑑賞者の私たちが受け止められるかも問われる映画。

主人公(主体)と共演者(客体)が一対一で向き合うシーンが多く、
  その場であの言葉たちが紡がれていったのは、正直驚いた。
その瞬間に、主体と客体を分けていた境界がなくなる。
まるで、東洋思想の禅のような、不思議な感覚があった。

ベテランならまだしも、モトーラ世理奈さんはまだまだ新人さん。
何よりも、ラストシーンの一人芝居は圧巻だった。
芝居というのは、間違っている気がするが。

ふと、演じるとは何かと思った。
よく演じるというが、本当に演じているのだろうか。
ただ、なぞっているだけではないだろうか。
本当に演じることで、自分の言葉が顕れてくる。

この映画は、旅を通して主人公の変化を表現していたが、
  同じ旅なら、計画をなぞる旅行よりも、ただ旅行する方がいい。
そう、旅をするように、人生を演じたい。


最近流行りの推察?考察?のように、頭を使うことなく、
  ただただ、今の自分の心で、言葉を受け止める映画。

もうじき、映画の背景の「3.11」が今年もやってくる。
その日を迎える前に、ぜひ観てほしい映画。

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