見出し画像

テイクアウトパフェの可能性

コロナ禍において、多くの飲食店がテイクアウト商品に力を入れた。
パフェを扱う店も例に漏れず、この世に幾多のテイクアウトパフェが生まれ、そして店内飲食の制限が緩和されると当たり前かのように消えていった。

パフェの構成要素には必ずと言っていいほどアイスが入っているため、要素ごとに適温が異なり、作り置き・持ち帰りに向かない。
また、パフェはパフェグラスまで含めて1つの作品であり、テイクアウト用のカップに入れるだけでは、パフェ特有のリッチ感や見た目の洗練が削がれてしまう。
そんなことはもちろん作る側も食べる側も痛いほど理解していたが、コロナという強い外的要因により、永らくほぼ未開発域であったテイクアウトパフェに目が向けられることとなった。
店内飲食再開と同時にテイクアウトパフェが姿を消したのは、現段階ではテイクアウトパフェがイートインパフェの臨時代替品だったからである。
チャンスとも取れるコロナ禍においても、テイクアウトパフェの進化の兆しは生まれなかったものの、今後もテイクアウトパフェは、店で食べるパフェの完全なる劣化版にすぎないのだろうか。


そもそも既存の店内用グルメをテイクアウトに転用して、さらにそれが別の文化にまで昇華された例は食の歴史でも数少なく、ハンバーガーとアイスクリームくらいのものである。
ハンバーガーはパンにはさむことで、アイスクリームはコーンに乗せることで、手持ちを可能にしている。
つまり、テイクアウトを目的として安直にカップに入れたとしても、独自の文化にまで昇華することは極めて難しい。

テイクアウトパフェに価値付けをするにあたり、パフェの特性を洗い出した上で容器部分を何で補うかを考えてみると、クレープが自然と浮かんでくる。
注文が入ってから作られ、アイスやフルーツやクリームで構成される。そしてクレープ生地とも食べ合わせが良い。パフェの特性ともよく合致してる。
つまり、残念なことにテイクアウトパフェ、少なくとも食べ歩きパフェの可能性の大きな部分は、すでにクレープに埋められている。
パフェとクレープの相違点である高級感もまた、パフェと同時期に流行した高級クレープに使われてしまった。
パフェは総合的なスイーツであるからこそ、近所の文化圏に多様で多数のスイーツが存在してる。パフェをいじって変容させようとしても、そこには別の文化が先客として座っている。

また立ち戻って考え直す。
パフェは、温度帯の違うパーツによって構成されているため、テイクアウトなら注文後に作って食べ歩くしかない。そう決め込んでいたのだが、考えてみると他にも道があった。
パフェを出す店でパフェのパーツを買ってきて、自らが家でパフェを組み上げるという方法である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?