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「連絡帳」を「計画帳」に変えるだけで、子どもの学び方と働き方が変わった。

僕は小学校の教員をしている。

休み時間は子どもと遊ぶし、
給食はゆっくり味わって食べてる。
提出物を家に持ち帰って見ることもないし、
コメントを書くこともしない。

同僚からは、
「いつ仕事してるの?」と驚かれる。

もし、こんな教員が身近にいたら、サボってると思うかもしれない。

でも、今年の保護者からは

「先生のおかげで学び方が変わりました」
「うちの子、自分から学ぶようになりました」

と感謝の言葉をたくさん頂いた。

たしかに子どもは変わったし、学力も上がった。
その秘密は、ただあることを変えただけ。

それが連絡帳。

「連絡帳」を「計画帳」に変えただけ。

もし、これを読んでくれている方の中に
提出物のチェックに追われたり、
休み時間や、給食中も休めない先生がいたら
少しでも楽になるきっかけになればうれしい。


本題に入る前に、1つ考えてみてほしい。

そもそも連絡帳とは何のために書くのか?

・明日の予定や持ち物、宿題を伝えるため
・持ち物や宿題を家庭で確認するため
・保護者と連絡を取り合うための手段

という意見が一般的だろう。

つまり連絡帳には、「情報の伝達」「情報の確認」の2つの役割がある。

しかし、最近はデジタル化が進み、
保護者や子どもと情報を簡単にシェアできるようになった。

先生が作った予定を
Googleクラスルームなどでシェアすれば
わざわざ書き写す手間はいらなくなり、
「連絡帳はもういらないよね」と、
疑問を感じている先生も多い。

つまり、連絡帳としての役割は、デジタル社会が進むほど、ますます必要性がなくなってくる。

ただ、「じゃあ連絡帳はデジタル化しましょう」
という考え方は、実はもったいない。

連絡帳には、もう1つの使い道があるからだ。

それが「自分で計画を立てる」こと。

この使い道の場合は、紙に書く方が使いやすい。
だから、「連絡帳をなくす」という判断をする前に、連絡帳を計画帳に変えるという選択肢を検討してほしい。


前置きが長くなってしまったが、ここからは方法を紹介する。

計画帳の目的

計画帳を書かせる目的は伝えることではないし、
丁寧に書き写すことでもない。

連絡帳を『自分の学習の計画を立てる』
という目的で使っている。

だから時間割や持ち物以外は自分で考えて書く。
家庭学習の計画を自分で立てるためだ

連絡帳に学習計画を書くから
連絡帳ではなく『計画帳』と呼んでいる

「計画帳書くよー」と声をかけると、
子どもたちは自分で今日の学習計画を書く
そして書き終わったら先生に提出。

ここで僕がチェックしてることが2つある

それが、時間とチェックボックス
時間については、合計時間を確認してる

例えば、
□漢字14のまちがえたところを覚える(10分)
□計ド12で今日の学びをたしかめる(15分)
□暗唱(5分)
□自学「冬の俳句を作る」(10分)

こんな形でチェックボックスと時間を確認する
チェックボックスは、やったかどうかをチェックするため。
連絡帳は書いても見ない子がいる
だから、ちゃんと家で確認するためのしかけだ。

時間は合計が40分以上あるかどうかを見る。
ただ、これは学年によって変わる。

学年×10分の勉強時間
6年生なら60分、4年生なら40分という具合
これは子どもの学習習慣をつくるため。

また、この時間は多すぎてもダメ。
アメリカの研究では、1日1時間勉強する子と1日に2時間勉強する子の学力に大差がなかったという結果がある。

子どもの時間も有限だ
決められた時間でどう効率的に学ぶのか
そこも学んでほしい。

だから、この計画段階で40分以上かかりそうな場合には、ダメ出しをする

「勉強をやりすぎるな」
なんて先生は僕だけかもしれない、、
もしかしたら保護者から怒られるかもしれない。
でも、がんばりすぎちゃう子もいる
だから減らす内容や、やり方のアドバイスもする

また時間は、変動可能にしている
例えば、習い事が多くて忙しいという子もいる。
そんな子には、今日は20分で、明日60分というように、勉強時間をスライド可能にしている

中には、習い事を週に3つ、4つやってる子も多い。寝る間を削ったり、朝早く宿題をして疲れてる子もいる。そういう子にはスケジュール作りも学んでほしい

学習内容

家庭学習の内容は自分で決めさせている。

ただ、全部決めるのは子どもも大変。
そこで、漢字、計算、音読、自学というカテゴリーだけ与え、内容は子どもに任せてる。

漢字は、漢字の小テストに向けての計画
計算は、新しく習った算数の復習
こういうケースが多い。

音読だけは、必須課題としている。
音読だけで国語力があがるという研究がある。
つまり、脳トレとしてさせている。

そして残った時間で自学をする。

自学のテーマも自由
・身の回りの疑問
・授業で見つけた問い
・自分の苦手や間違えたところ
・夢につながる勉強
・趣味や興味の調べ学習
などなど、学びたいことにチャレンジしてる。

あとは、『読書』も計画に書く。
ただし、これは学習時間には入れない。
時間を気にせず読んでほしいから。

また「勉強だけする子」と「読書だけをする」子を比べた結果、「読書だけする子」の方が学力が高いという研究結果もある。
だから読書は習慣にさせてあげたい。

実際の計画帳は、このような形。

こんな内容で子どもたちは計画を立てている。

選択肢が学び方を変える

僕が計画帳で、大事にしてるのは選択肢
時間内に何をやるかは、自分で決める

そして、自分で決めるから、
そこに決意と責任が生まれる
そうすることで、勉強が自分ごとに変わる。

宿題として与えられると、
どうしてもやらされ感が出る。
やれば終わり。
答え合わせもせず、
間違いも直さない
そんな子をたくさん見てきた。

でも自分で計画を立てると、
「何のために学ぶのか」に気づく
学ぶ目的が生まれるからだ。

だから、「宿題」とは絶対に言わない。
細かい話だけど、「宿題」と「家庭学習」の違いは子どもにも伝えてる。

それに「選べる」だけで子どもは喜ぶ。
まるで駄菓子屋さんでお菓子を選ぶみたいに、
勉強もどれをやろうかと楽しんでる。

自由に選ばせて大丈夫?
勉強についていけるの?
と不安に思う方もいるかもしれない。

でも、学び方はみんなが違う方がいい。
なぜなら一人一人脳みそは違うのだから

少し難しい話になるけれど、
脳科学では、人間がものを記憶する方法は、
「手続き記憶」「意味記憶」「エピソード記憶」「プライミング」という4つに分けられるという

例えば漢字だと、
何回も書いて手で覚えるのが、手続き記憶
意味を理解して覚えるのが、意味記憶
文を作ってイメージするのが、エピソード記憶

4つ目のプライミングは、無意識の記憶なので
覚え方としては、この3つ。

つまり記憶の仕方だって、いろいろある。
その3つの方法を具体的に紹介しながら、
「どうやったら覚えられるのか」
「どの方法が自分には合っているのか」
勉強を通して、それを見つけてほしい。

学ぶことよりも、自分に合った最適な学び方を見つける。それが何より大事だと思うから。

ただもちろん、自由にするとサボる子もいる
嘘をついたり、ごまかしたりする子もいる

人間って、計画を立てたからと言って、
必ず行動できるわけではない。

ましてや、子どもは
忘れる天才だし、すぐ誘惑に流される
自分に甘いのも、子どもだったら当然のこと

だから、「甘えるな!」なんて
責めるよりも、仕組みを変えてあげた方がいい

そこで、計画帳は毎朝、提出させる
学校に来た子から、計画とノートをセットにして提出する。

出し方にも工夫があるり
計画帳を一番上に、ノートは下に開いて重ねる

そうすることで、その子がどんな計画で
どれくらい勉強して、どんな学習をしてきたか
それが全部分かる。

僕は、内容を確認して計画帳に○をつける
そして、一人一人の学び方について
フィードバックの声かけを行う。例えば

「いい学び方だね」
「いつも丁寧に取り組んでるね」
「おっ、間違えた問題の分析までしてる」
「覚えれるまで練習してきたね」
「やり方を工夫していてすごいな」
「みんなにも紹介していい?」

などなど、学び方について評価を言葉で伝えてる

もちろん、プラスの評価だけでなく
「丸つけをしてからが、学習じゃないの?」
「間違えた問題は理解できたの?」
「本当に覚えられた?」
「じゃあテストしてみるよ」
「これ、10分もかかったかな?」
「計画通りにできた?」
とサボってる子には、とにかく聞く

怒ったり、叱ったりすることはしない
ただとにかく聞く。
どうしたら良かったかを自分で考えてほしいから

やり方が分からない子にはアドバイスしたり、
他の子のやり方を参考にさせたりする。

他にもルーブリックを渡して、自分でも学び方がどの段階かを確かめられるようにしている。

これは、葛原先生の「けテぶれルーブリック」を参考に作成。


ルーブリックの詳しい使い方は、こちらの本をぜひ手に取ってほしい。

そして、このようなルーブリックも使いながら、学力という結果にコミットできるように、各々の課題や計画に合わせてアドバイスをする。


このやり方を、僕は『ライザップ式学級経営』
と読んでいる。

「これをやりなさい」って決めるんじゃなくて、
トレーナーやメンターに近いかもしれない。
家庭学習のメンターとして、できるだけ個別対応を心がけてる。

ただし、朝の忙しい時間に全員を見るのは難しい
そこで、計画帳には○しかつけないし、
ノートにはokとしか書かないと決めている。

コメントを書くと、時間がかかるからだ。
その分、目の前にいる子どもに口で伝える。
表情や目でも伝えるし、きっとその方が届く。

この方法には他にもメリットがある
それは、毎朝全員と会話できること。

今日の調子はどうかな。
いつもと違うことはないかな
と体調を確認したり、
提出物をチェックしながら、
昨日家であったことなどを雑談をしてる

毎日全員と会話することで、信頼関係も生まれる。

また、チェックや返却の手間も減る。

宿題などの提出物は、漢字ノート、計算ノートに分けてドサっと集めることが多いと思う。
ただこれだと後で返却する必要があるし、休み時間にも見なくちゃいけなくなる。

でも朝、自分がやってきたものをドカっとまとめて出し、その場ですぐにチェックをして返却すれば、配る手間はなくなる。

配達当番が配り忘れたり、間違えて違う子のノートが配られたりミスもなくなる。

さらに、先生の手間も減る。
休み時間に提出物をチェックする必要はないし、
出してない子を探したり数えたりする必要もない

おかげで、僕は朝こそ超忙しい(30人近くを来た子から順にチェックするので)が、休み時間や給食中は子どもと遊んだり、ゆっくりできている。

それに、休み時間は、宿題のチェックをするよりも雑談をしたり、外で一緒に遊んだ方がいい。

その方が子どもとの関係はよくなるし、
子ども同士の関係も見える。
それに、自分自身の健康にもなる。

このように連絡帳を、計画帳とて使うメリットはたくさんある。

ある日、子どもに
「これまでの宿題のやり方とどっちがいい?」
と聞くと
「こっちの方がいい!」
「だって自分のペースで勉強できるもん」
と多くの子が答えてくれた

そして学力も上がってる。
1学期に漢字テストが50点しか取れなかった子が、2学期では毎回100点が取れるようになった
算数が苦手だった子は、授業中に生き生きと発表してる。

連絡帳を計画帳として使うことで、
子どもたちの学び方が変わった結果だ。

連絡帳を計画帳として使うことで、結果にコミットすることができた。

終わり

連絡帳に目的を持たせ、計画帳として使うことで、一人一人の学びを保証した「学び方改革」になる。そしてそれは結果として、先生の負担を減らす「働き方改革」にもつながる。

ぜひ、連絡帳を計画帳として、活用してみてほしい。きっと、新しい発見に出会えると思う。

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