見出し画像

浮草が盗まれた

うちの浮草は個体識別をしている。
冬には死滅してしまうので、屋内で26度前後に加温して一定時間タイマーでLEDライトをあてて、エビ水槽で育てている。
気温が落ちる秋位から取り込んで、ずっと冬を越し、3月くらいから郵送に耐えられる気温になったら出荷する。

どの子も可愛い浮草だ。
わたしは他より少し高めに販売する。
手間、時間、設備をかけ、剪定し、さらに
たくさんいる子のなかから特に綺麗な子だけを出している。
残りの子はうちでのんびり浮いていてもらう。
形が悪かったり、徒長していたりするだけであって、アンモニアなどの有毒なものを栄養として育ち水質を浄化するという機能は同じだ。
販売する個体は上下左右あらゆる角度から写真を撮る。
そして、買い手に選んでもらう。
みんな小さなビオトープを楽しんでいる一般の人たちだ。
良い水草が無い時はずっと出さない。
非常にマイペースだけど、わたしはペット業界の人やメダカ業者の人はあまり好きではない人が多いから、エンドユーザーへの、こういう細々した、目の届く販売が性にあっている。

この子がいい!あっちの子と一緒に2個買っていいですか?
そういう選んでもらうやり取りも楽しい。

説明や撮影はめんどくさいが、こういうやり方はやっている人は多くないから、
そこに希少価値があると思っている。スネールは絶対に居ない。わたしは商売はへただから、少ない数で、品質を上げて、手間暇かけて採寸して、納得して安心して買ってもらうことにしている。

------------

暑くなってきたので一部屋外に移動した。その水草が数個いなくなった。
出品しているものなので困る。
Uさんのポリバケツから発見された。

泥棒だ、と思った。

言葉はキツい。本人も泥棒したつもりはないだろう。

しかし、他にない特徴的な品種なので、どう考えても私の水槽から盗ったのだろう。
この品種は一般の小売では売っていないし、この個体の形に見覚えがある。うちの子だ、という親しいオーラみたいなものだ。

わたしはこの水草をいくらで売っている、こうやって剪定をして、選定もして、とよく話している。
ひとつひとつ丁寧に撮影している様子もUさんは見ている。

ああ、と思った。

そうか、たくさんあるから、数個盗ってもわからないだろうと思ったんだよね。どれも同じに見えるんだろうね。

でも、その子たちは商品として出しているんだよ。
識別ナンバーあるんだ。
送る前に3日くらい別容器でメンテナンスしてプラナリアなどの混入が無いか最終チェックするまでは卵がついている浮草もいる。

ケチってるわけじゃない。
欲しければ欲しいと言ってほしい。そうすれば出す前の子や選別漏れの子を
もっとたくさん差し上げてもいい。

黙って取っていくのは困る。ついている卵も日付ごとに管理している。

-------------
わたしはとても悲しかった。
11月から5月末の今日まで育て上げた子、
あっさり盗まれた。わたしのしていることを軽く扱われ、
踏みにじられた気がした。

全ての人があなたと同じ程度の気持ちで飼育しているとは限らない。
でもそれはUさんには理解できないんだろう。
他人と過去は変えられない。いままで5年以上会話してきて、多少は理解してくれているかと思ったら全く分かっていなかった。いや、わかっていないのはわかっていたけど、軽んじられるのは悲しい。
水槽にはすべてワイヤーの蓋をかけることにした。

盗まれたことにわたしが気づいたことを、Uさんに気づかれると気まずいが、
でも勝手に盗らないでほしいと言う意思表示はしたい。
誰かに盗まれて迷惑しているのでフタを張った、と遠回しに言おう。

------------
盗まれた個体はスネールが付いてしまっていた。もしかしたら卵が混入する危険性がある。スネールが一度入り込んだら、現実的に確実な駆逐は困難だ。
売り物に戻すためにはメンテナンスを入れる必要がある。
スネールはうちの水槽には一切入れたくない。スネール完全に無し!がうちのとりえのひとつだ。

盗まれた個体に似たものをいくつか入れておいた。選外のものだが、Uさんにはまず見分けはつかない。
浮草はあったほうがメダカたちの環境には良い。
根には良いプランクトンが生息する。浄化作用も強いので、あの腐ったエサや大量発生しているスネールのフンの猛毒を多少なりとも吸い取るだろう。

これを入れておかないと、Uさんは前と同じく大量のホテイアオイを買ってくるだろう。
そして、あの大きなホテイアオイの長い根にからまって、メダカが死ぬだろう。あの繰り返しは見たくない。だから、わたしの浮草を寄付するのはやぶさかではない。お金じゃないんだよ。無断で盗るなというだけなんだよ。
きっとわかってもらえない。だから、こうやって、そっと寄付しておく。


わたしのやってることは自己満足だ。
わたしのエゴだ。
ただ、悲しい。

私には隣のメダカさんたちは救えない。
いっそ夜中に網で捕獲してくるかと思ったこともあるが、それは泥棒だ。
他所の家の子たちを、いくら虐待されていようと、私のエゴで盗んではいけない。それにうちで保護したところで、また買ってくる。次の犠牲者が出るだけだ。

悲しい、悲しい。
もう見たくない、隣を見たくない。

折れてしまったビオラ、
小さな花瓶に挿しておいたら背後に隠れていた小さな蕾から
もう一つ小さな花が咲きました。
可愛いです。
どの子もみんな可愛いです。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?