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亡くなった人と体が入れ替われるなら

半年前、祖母が亡くなった。
もう10年以上も寝たきりだった祖母だ。
私も覚悟はできていた。

全く悲しくなかったかと言えば嘘になるが、「やっとお迎えがきて良かったね」「これでやっと楽になれるね」と素直に思えた。

葬式ならではの独特な雰囲気。
その雰囲気に完全に飲み込まれた。
葬式に参加した後の1ヶ月、私はかなり死の世界に引っ張られた。

葬式や火葬場に行ったことで、「私も早くそちらの世界に行きたい」という願いがさらに強くなってしまった。

祖母にまた会いたいという気持ちからではなく、私が元々もっていた長年の願いが強固された感じだ。(祖母が元気に生きていた頃から、私は死にたかった)

私は「私が死んだときは葬式はいらないから、直接火葬して海に葬って欲しい」と夫と妹にそれぞれお願いした。

それぞれにお願いしたのは、私が夫とともに亡くなる可能性もあるし、妹とともに亡くなる可能性もあるので、この二人のうちどちらかが私の願いを叶えてくれたら、と思ったからだ。

なぜ、今日こんな話をしているかというと、祖母がことある事に私の夢に出てくるからである。

今日の夢は私が亡くなった祖母のお墓に行き「どうか、助けてほしい。この苦しさから救い出してほしい」と、もうこの世にいない祖母に大泣きしながら懇願している夢だった。

その時、祖母の姿がうっすら見えた。
祖母はすごく怒って私をにらみつけていた。
それもそうだろう。
祖母が寝たきりになった直接の原因をつくったのは私なのだから。


私が高校生の時、車で高校まで送ってくれていたのは、他でもない祖母だった。

私を送り届けた帰りの道で、祖母は脳梗塞から交通事故を起こした。
(幸い、祖母以外にはけが人いなかった)

祖母はそこからリハビリをするも、すぐに脳梗塞が再発し、始めの事故からわずか1年で完全に寝たきりになった。

私は今でも申し訳ないと思っている。
祖母に送迎を頼まず、自分で自転車で行っていたら、もっと健康に長生きしてくれたのだろうか。

その後悔を母に相談したら「誰もいない家で脳梗塞になってたら、きっともっと早くに亡くなっていた。だから、自分を責めないで」と言われた。

でも、長い間、ベットで寝たきりでいるよりも、健康のまま早くに亡くなりたかっただろう。私は今でもものすごく後悔している。


夢の話に戻ろう。

私が「もう苦しい。助けてほしい」と亡くなった祖母に懇願していたら、「祖母と体を入れ替えることができる。でも、入れ替わった後はもう元には戻れない」という話になった。

「なんだ、そのアニメみたいな設定は?」と読者の皆さんは思うだろう。

でも、夢の中の私は素直にその設定を信じていた。

亡くなった祖母と入れ替わるということは、私は死の世界に。
祖母は私の体をかりて、これから私として人生を送っていくことになる。

私はそれを承諾した上で、祖母と入れ替わることにした。

祖母への償いの気持ちからというよりは、私が楽に死にたかったからである。祖母なら、私のこのハードモードな人生も、明るく乗り越えてくれるだろう。

この世に思い残すことは何もない。
そんな気持ちから入れ替わってみたら、急に目の前が真っ暗に。

「あー死んだら真っ暗の世界なのか。これからは随分と退屈そうだな。」と思った。

「でも苦しさも感じなくて良いなら、こっちの方がいいや」とも思った。

すると、急に文字の羅列が一面に見えた。

「これを読んでいたら退屈しなくて済むな」とか、のんきなことを考えた。

不思議と「生きていた世界」のことは思い出さなかった。
夫に会えなくて悲しいとか、母に会えなくて寂しいとか全くなかった。
祖母が上手くやってくれるだろうから。

安堵感に包まれていたら、私は夢から覚めた。

「まだ生きてる・・・(絶望感)」

いつも私はこの繰り返しだ。

おそらく、亡くなった人は、この世の人のために何かしてあげることはできないんだろう。もう魂だけになっていて、既に生きていた頃の記憶は忘れているから。

亡くなった祖母は、もう私の存在を忘れて次のステージに進んでいる。

だから、私がどれだけ苦しもうが、もう助けてはくれないし、そもそも他の誰かに頼ることすら間違っているのだと思う。

私の地獄は私が抱えるしかないのだ。









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