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エッセイ:大ちゃんは○○である⑨

大学生当時、アルバイトにも精を出した。
何せ、生活費やらサークルでの活動費やら交際費やらで、節約しても節約しても何かと出費はかさむものだ。
教科書が異常に高かった記憶もある。
『この講義を受けるのに、教授が書いたこの教科書を買って下さい。教科書に沿って講義は進んでいきますので。』なんて言われると買わないわけにはいかない。
それでまたその教科書というのが、大きな声では言えないがべらぼうに高いのだ。共感していただける方もいるかもしれないが、それこそ貧乏学生には目ん玉が飛び出ちゃうくらい高かった。
それらを捻出する為には当然アルバイトも頑張らなければいけない。
アルバイトを選ぶ基準としては、賄いがついているのかついていないのかというのは非常に大きなポイントで
働きながら、そこで一食食べさせてもらえるというのは貧乏学生の身としては神の恵みに近い感覚だった。
賄いと言えど、ちゃんとしたご飯を食べられる幸せ。なんて言ったら大袈裟だろうか。でも、本当にそんな感覚だったし、感謝しかなかった。
だから、毎日大量に食べ物が廃棄されてるなんて現状を耳にすると本当に嘆かわしいし、悲しくなる。食べ物は大切に!
とのことで、とにかく僕は飲食店をメインにアルバイト先を探していたわけだが
最初に働かせてもらったのは焼き肉店だった。
大学時代の最初のアルバイト先にして、一番長く続いたお店。
『どんと』という名前のお店だった。
残念ながら、現在は閉店してしまったようだ。店名の由来は、確かどんなにお客様が沢山来られて、目が回る忙しさになったとしても、どんと来い!という気持ちでやっていこうというような意味だったと思う。
勤務時間は夕方の17時~深夜2時まで。
僕は厨房の中でユッケを作り、ライスを盛り、石焼ビビンバを火にかけ、皿を洗い、サラダを盛り付け、あれをやり、これをやり、あんなこともやった。
人がいない時などはホールに出て、ウェイターもやっていたから、本当に様々な人間観察ができた。
この店でアルバイトをしていた時期、ここでも忘れられない印象的な出来事が2つばかりあったので記しておこう。
1つ目は異性関係。
僕は高校を卒業するまで異性と交際したことがなかった。告白はするが、全て撃沈。
バレンタインのチョコレートだって、朝教室に入るなり「大門、はいよ!」と女の子にチロルチョコ1個を投げられた思い出と、
大好きだった女の子に放課後下駄箱に呼び出され、チョコレートを渡されて舞い上がりそうになった所で「松本くんに渡してほしいんだけど。」という
何とも無慈悲なお言葉をちょうだいし、義理チョコすらもらえなかったという悲しい思い出しかない。
結局、中高の6年間でもらったチョコレートはチロルチョコ1個という結果に終わり
見事なまでのモテなさっぷりを発揮していたのだが、
どういうわけか、大学に入った途端風向きが変わった。
巷でよく聞く『モテ期』なるものが到来したのだ。

つづく

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