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エッセイ:大ちゃんは○○である⑥

7人で始まった宴は、それはそれはひどいものだった。
乾杯からスタートし、とにかく皆飲むペースが早い。
ビールから始まり、ウイスキーの一気飲み。
挙げ句のはてにはウイスキーにポカリスエットの粉を入れて、じゃんけんの罰ゲームでそれを飲まされるといったことが繰り返された。
僕はお酒が弱いし、当時はまだ未成年。(公に言うことではないのだが)
「もう、飲めないですよ。」と言うと
「いいか、酒っていうのはな、飲んで飲んで、吐けば吐くほど強くなっていくもんなんだよ。そんなこと言ってたら社会に出てからやっていけねーぞ。先輩に注がれた酒は四の五の言わず黙って飲め。」と根性論を説かれた。
酔いが回ってくると、先輩達の武勇伝披露が次々に始まる。
『俺は深夜にスーパーの駐車場にたむろしていた20人ぐらいの暴走族がうるさかったから、フルフェイスのヘルメット1つ持って、全員をボコボコにしにいった』だの
『高校時代は喧嘩敵なしで、周りの人間からは白虎と呼ばれていた』だの
『昔、クラスの女子全員のスカートをめくったことがある』だの(なんじゃ、その武勇伝。。)
出るわ出るわ。
初対面で先輩で、そこそこガラが悪い人達の武勇伝にどうリアクションするのが正解なのかも分からず
「へぇ~!本当ですか!?」とか「すごいですねー。」のような相槌と愛想笑いで応えるのが精一杯だった。
気だるさと気持ち悪さのダブルパンチで何回トイレに走ったことか。
何より最悪だったのは、買ったばかりの布団の上で、限度を超えた田崎という男にゲロをぶちまけられたことだ。
ふかふかもふもふの布団は一瞬にして、柿ピー・枝豆・アルコールのブレンド吐瀉物にまみれた。
呂律の回らない口調で田崎は
「悪ぃ、、やっちまった。」と謝罪じみた言葉を口にしたが
僕はさすがに頭に来て
「ふざけんなよ。どーすんだよ、これ!こんなにしちゃって、もう使えないじゃんかよ!弁償しろよ!大体さ、自分の限度超えた量の酒なんか飲むんじゃねーよ。あんたバカじゃないの!」
というのを少しだけマイルドな言い方にして
「大丈夫ですか?田崎さん。今日はもう飲まない方がいいですよ。とりあえず今水持ってきますね。」とバシーーっと言ってやった。

3時間程の時間が過ぎただろうか?
時計の針は深夜1時半を回っていたと思う。
皆がひとしきり酒に酔い、宴もたけなわかと思ったその時
「よし、じゃあ一次会はこれぐらいにして、二次会は駅前のカラオケにでも行くか。」
と赤ら顔の岡本が言った。

つづく

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