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リラックマとカオルさん

我が家にNetflixが導入されてから、いつもおすすめに挙がってきていた『リラックマとカオルさん』。

なんとなく「子ども向けの作品なのかな」と見向きもせず、放置していたそのアニメをある日、夫が何気なく再生した。

それが素晴らしくて、もう大好きになった。

意外にも、内容は大人の女性向けの作品。
アラサーOLのカオルさんがリラックマたちと生活する日常もの。

可愛らしい雰囲気とはウラハラに、アラサーの独身OLが抱える「私、このままでいいのかな?」という漠然とした不安がリアルに描かれている。

カオルさんは上京して12年、東京で働く独身OL。性格は真面目で、仕事はできるほう。

それゆえ、上司には面倒な仕事をしれっと押し付けられ、同僚には「真面目すぎるのよね」と言われて合コンに呼んでもらえない。

このように、大きな事件はないけれど、どこかパッとしない毎日を送っている。

なんだかモヤモヤする日々を、リラックマたちに癒されながら暮らしていくカオルさん。彼女が、だんだん見ているうちに独身のころの自分に重なってくる。見終わったあと、不思議な気持ちになった。

そもそも、リラックマがいる時点でかなりファンタジーなのに、とてつもなくリアルで、カオルさんを身近に感じるのだ。

クマたちは本当に可愛いんだけど、私はカオルさんが大好きになってしまって大変(?)だった。もう愛おしくて。

カオルさんは自分の好きなものを、とにかく丁寧に、大切にする。

「味がある」ので気に入って選んだ古いアパートに住み、お気に入りのヴィンテージ家具を飾って、服や靴もお気に入りを長く大切に使っている(何話か見ていると、コーディネートを工夫して着まわしているのが分かる)。家庭的で、裁縫も料理もできる。

たぶんこの「好きなもの」に、クマたちも含まれているんだろうな、と思うくらいクマたちに愛を持っている。

真面目すぎるゆえに、極端な行動に走ってしまうところも可愛い。自分を変えようとして部屋に生えた怪しいキノコを食べようとしたり、不運な自分を変えようと怪しげなスピリチュアルにハマりかけたり。

恋に奥手なのか変な方向に走り、タイプの宅配のお兄さんに会いたくて小まめにネットでポチポチ。あとで請求が大変なことになって反省したり(68万という変にリアルな金額。中身はダイエット用品)。

カオルさんが前向きになる手助けを、なんともゆるいクマたちがさりげなくアシストしていく。

将来が不安で、自分を変えようと不器用に頑張りながら、でも結局はそんな自分を受け入れて暮らしていくカオルさんが、とても好きになった。

ストップモーションアニメ(コマ撮りの、粘土とかで作るやつ)だから、あたたかみがあって懐かしい雰囲気。部屋から、オフィスから、食べ物に至るまで可愛いので、技術に感動すること必須。

音楽は『くるり』の岸田繋さん。だからBGMが全体的に「ホッとする」雰囲気なんだな。私は「リラックマとカオルさんのテーマ」が、前向きな気持ちになれるので好き。

脚本は『かもめ食堂』の荻上直子さん。ファンタジーとリアルが絶妙にバランス取れてるの納得。

そしてカオルさんの声は、女優の多部未華子さん。出演欄を見る前に声で直感した。

物語を見ながら自分の人生を重ねてみて、やっぱり人生って『変われない自分をいかに愛おしく思うか、そしておもしろく暮らしていけるか』にかかっているなと実感した。

終盤、生活を変えざるを得なくなったカオルさん。「同じままではいられないんだよ」と受け入れつつ、寂しさを感じながらも最後は晴れ晴れした表情をしていた。

カオルさん、もうほんと大好き!(誰)

最後に、この作品を見るとお団子とホットケーキが無性に食べたくなる。お団子とホットケーキミックスを用意した上で楽しんでほしい。

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