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中国全国で展開する爱回收とは?実際にシャオミのスマホを鑑定した際の体験レポ

中国人は爆買で新品ばっかり購入しているから中古品は買わない

よく日本人が口にすることですが、実は中古市場自体中国では盛り上がってきています。

アフターデジタルの本にも中古車の企業が登場してきますが、あの企業は氷山の一角。
中国国内では、自動車に限らず、不動産、服の中古マーケットには複数のプレイヤーがひしめきあっています。
消費者向け電子製品、特にスマートフォンの中古マーケットも目を外すことができません。
その中でも私が注目しているのが「爱回收」というスマホの回収プラットフォーム。
日本では見たことがないビジネスモデルなので、興味のある方は下にスクロールをしてみてください。

爱回收とは?

次の通り、「回収することを愛する」サービスです。回収というと語弊があるので買取というべきです。
2011年に上海で創業したコンシューマー向けの電子製品の買取のプラットフォームです。
上海には90箇所オフラインの買取店が設置されており、オフラインでの買取は北京、上海、広州、深センの1級都市のみならず、2級都市までをターゲットとしており、オンラインでは中国全土が対象です。さすがにチベットやウイグルでオフラインの回収はやっていないです。

現在は主にスマホ、タブレット、ノートパソコンを回収しており、オンラインとオフライン両方で回収を行っているのでO2Oと呼ばれていますが、広義の意味のOMOとも言えるかもしれません。

爱回收の歴史

また創業の初期の段階からVCからの出資を受けており、2019年6月3日にはJDの傘下に入りました。
爱回收の創業から今までの歴史を振り返ってみます。

2011年5月 爱回收開始
2012年 晨兴キャピタルから200万ドルのシリーズAの出資獲得 
2014年7月 世界銀行グループの投資機構IFCと晨兴キャピタルMorningsideから1000万ドルシリーズBの出資獲得 
2014年9月 京東のオンラインストアで戦略的協業開始
2015年8月 完成6000万美ドルのシリーズCの出資獲得。
投資企業の構成は、天図キャピタル,京東グループ、景林キャピタル,晨兴キャピタル及びIFC 
2016年12月 4億人民元のシリーズDの出資獲得。
投資企業の構成は、凯辉基金、达晨ベンチャーキャピタル、天図キャピタル、京東グループ、晨兴キャピタル、景林キャピタル、前海母基金
2018年7月 1.5億ドルの出資獲得。
投資企業の構成は老虎グローバル基金、京東グループ。
爱回收の企業価値が15億ドルに達する
2018年12月 爱回收傘下の中古スマホブランドの小爱优品と迪信通傘下の闯易贷が協業。オフライン事業強化。
2019年6月 京東傘下の旗下中古買取り取引プラットフォームの“拍拍”と“爱回收”が戦略的合併。
京東グループから5億ドルの出資し、爱回收の大株主になる

めちゃ順調に見えます。

試しにシャオミを鑑定しながらプロセスや施策を理解


さて、実際オフラインの現場はどうなっているのかを、今回私の前使っていたシャオミのMi 8で試しに鑑定してみて、ワンチャン良い値段やったら売ってやろうとおもって参りました。
場所は私がよくいく南山区の海岸城。
土曜日の夕方前のため多数の現地人が爱回收に集まっています。

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高さは約2メートルくらいで、横幅も2メートルくらい、奥行き1メートルといったサイズ感です。
スタッフは2名で、スマホ買取であるためか比較的緩めの服装。
スペースには鑑定用ディスプレイ、広告用のデジタルサイネージ、そしてスマホ周辺機器の販売や主にHuaweiのスマホの見本が展示。

店頭での買取は2パターンあり、
①フラッと通りがかった人が立ち寄るパターン
②オンラインで時間予約をした人が来るパターン

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先に他のお客さんディスプレイを使っていたので覗き見してみたのですが、2650元で4万円くらいの買取金額が表示されていて驚きです!

どのように鑑定されているのか?

鑑定方法は下記のような虫眼鏡やピンセットを使って細部までじっくり丁寧に精査します。

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というのは全くの冗談です。
鑑定方法は至ってシンプルで正直自分のスマホであれば誰でも鑑定できると言っても過言では有りません。

というのも、「自助估价」と書いているディスプレイで自分で操作することができるからです。
昨年7月に初めて爱回收と出会ったときのTweetがあるので、コチラご参考ください。

手順としては、

①自分の機種を選択
②使用状況を選択
③起動状況(パスワードで解除できるかどうか)
④購入ルート(中国大陸、香港、国外、シムロックの有無など)
⑤色
⑥型
⑦容量
⑧保証期間
⑨アカウントの解除の可否
⑩背面の状態
⑪ディスプレイの状態
⑫ディスプレイの明るさ
⑬修理状況
⑭それ以外の状況

*上記はiPhone8の場合ですが、機種によって項目が若干ながら変わってきます。

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私が以前使っていたXiaomi 8を試しに鑑定してみましたが、MAX970元で買取可能です。
970元であればちょっと売るのは惜しい金額...笑

仮にその場で売らなかくても鑑定士がブチギレたり、執拗な営業を行うことはありません。

ブースのディスプレイを使って鑑定士た場合は、その結果のQRコードをスキャンすることで、爱回收のWechat公式アカウントに遷移し、半自動的に会員登録されます。
その公式アカウント経由でミニプログラムに遷移し、自己査定した場合のデータも残ります。

爱回收のマーケティング戦略

上記プロセスにおいては、オフラインでの鑑定体験を通じて、

①自分の持っている不要なスマホの市場価値理解
②スマホ買取に対する抵抗の軽減


を顧客に対して価値提供することができています。

仮に即決して売却しなかったとしても、その後、毎週1度Wechatの公式アカウントから通知が届くようになるので、ミュートでもしない限り常に顧客に対してナーチャリングできます。

一度鑑定したものを本当に売りたい!
となった場合は、店頭にいかずとも、郵送して買取額をWechatPayもしくはAlipayによって受け取ることができますので、オフラインからオンラインへの移行は比較的スムーズと言えます。

中古買取りにより中国のスマホ購入のサイクルの短期化に直結

下記リンク先の記事によると、2018年時点で中国国内のスマホユーザーの数が中国人の人口と並び、13億個を超えています。

これまでは、スマホを持っていない中国人が持ち始めるが故に、スマホが爆発的売れる要因となっていましたが、現在飽和状態なので、新しいスマホに買い換える人が増加しない限り、スマホメーカーは頭打ちを食らってしまいます。というか元に喰らい始めています。

爱回收のように至るところに買取専門のオフラインショップを立ち上げることによって、使わなくなったスマホを買い取らせるだけではなく、

「去年シャオミのMi 8を買ったばかりだけど、5Gスマホが登場したから、壊れていないし気に入ってるけど買い替えてみるか!」

といったユーザー心理を生み出したり、

「最近黒を買ったものも、やぱり白のほうが好きだから買い替えてみたい」

と移り気な気持ちを増長させたりすることができます。

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結果的に、買い替えサイクルを短期化させることによって、スマホメーカーは新型スマホが売れるようになり、一方、経済的な理由で新品のiPhoneを購入したいけれども、購入することができないユーザーに対して安価で提供し、どんどん上のクラスの人から中クラスの人へ、中クラスの人から下のクラスの人へとスマートフォンが流れていきます。

それ故に爱回收のパートナー企業には、中国スマホメーカーが含まれています。メーカーは新製品を販売していかないといけないですからね...中国スマホ市場はどこも似たような性能になってきているので、非常に大変そうです。

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その結果、ゴミの排出量削減につながるばかりではなく、欲しい機種を安価に入手できるので人々の欲求を満たすことが可能になります。
欲しい物が手に入ることで犯罪に手を染める人が減少すると言われているので、中国政府も実は中古事業に関しては後押しをしているという話は聞いたことがあります。

今の所、オフラインでのスマホ回収のプラットホームを提供しているところは見たことはありませんが、今後も爱回收は人々の生活の中に溶け込み、爱爱回收と呼ばれる日もくるかもしれません(爱回收を愛するという意味)。

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