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長〜い四半期の末に 大塚家具

最近ネットで大塚家具とヤマダ電機のコラボ店の広告を見かけます。これぞシナジー? あまりにベタな戦略に、小馬鹿にする経営コンサル系YouTuberの動画も流れていましたが、これが意外に好成績だとか。

そんな大塚家具の気になる前期本決算データが、7月末になってようやく金融庁のEDINETに登録されていました。前決算期は、決算月変更のために2019年1月に始まり2020年4月に終わる変則16ヶ月間。第3四半期(2019年9月)から長〜い第4四半期(7ヶ月)を経ての本決算となとなりました。

掲題のチャートは、そんな大塚家具の貸借対照表(BS)推移。ぱっと見てあれっ?と思った方もいるかも知れません。なぜなら大塚家具は、昨期2度にわたる第三者割当増資で資金調達したはず。一度目は中国系ファンドからで第1四半期に約26億円、二度目はヤマダ電機からで第4四半期に約44億円、総額70億円。ヤマダ電機社長との共同記者会見も大きく報じられていました。一昨年度期末の純資産127億円から6割増し、なのに純資産が減っているこの違和感?

では、BS推移チャートを四半期推移にしてみるとその痕跡は見られるのか?

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1Qの時点で若干純資産が増えていますが、中国系ファンドの増資額26億円の半分程度。その資金も3Qまでには溶けてしまって、4Qにはヤマダ電機による44億円の追加増資。でもその痕跡は見られません。その原因はもちろんその増資分を相殺する同期間の赤字。PLの推移をチャートにしてみると、

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大塚家具と言えばカグヤ姫こと現社長と大塚パパとのお家騒動。これまでの赤字はパパ時代の資産を切り売りすることで凌いできました。大塚家具の固定資産推移チャートにはその顛末が見て取れます。

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2018年12月期までに有価証券等主だった固定資産は売り切ってしまい、残ったのは店舗の差入補償金(賃貸の敷金みたいなもの)。もう後がないところで決まった増資だったのです。大塚家具の2020年4月期決算の最終赤字は77億円、増資分70億円は期中に溶けてしまいました。

ところで、財務諸表に詳しい方なら掲題のBSチャートを単年度だけ取れば、それほど悪くない印象もあるかも。純資産比率は60%を超え、流動資産が流動負債の2倍以上あって財務的にも余裕がありそうです。

XBRL財務分析サイト「財務諸表ハック」では、企業の流動比率チャートを公開しています。大塚家具の場合は、こんな感じ

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各年度、左側(借方)に、流動資産、右側(貸方)に流動負債をスタックチャートで描いています。直近の流動比率は2.36倍、教科書的には安全圏の数字ですが、資産の半分以上を在庫が占めています。流動資産チャートは下から現預金、受取手形、売掛金と積んでいて、ここまでが当座資産でカバーできる範囲です。

では、大塚家具は今後どうなるのか。コロナの影響が長引く中、黒字転換が遅れれば更なる増資が必要になるかも知れません。ヤマダ電機とのコラボ店が起爆剤となって一気に好業績に繋がることを期待しています。

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このnoteで掲載した大塚家具の経営分析チャートは「財務諸表ハック」で公開しています。

大塚家具財務チャート: https://www.tukuttemiru.biz/zhack/?seccode=E03078

流動比率について知りたい方は動画でも紹介しています。

動画リンク: https://www.youtube.com/watch?v=CNuhSEAFzo8


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