ロシア語一日一善(266)

レフ・トルストイ編著 八島雅彦訳注 東洋書店から

Уничтожь один порок, а десять исчезнут
Род

уничтожь は уничтожить の命令形で「滅ぼす、一掃する」の意味。порок が「欠点、欠陥」の意。「一つの欠点をなくしなさい」が直訳になる。десять 「10」なので、десять пороков ということだろう。исчезнут は「消える」だが完了体であることを考えると、「(…すれば)10の欠点が消える」という文脈を感じる。この現在形の完了体のニュアンスを言語化するのが難しい。単純に未来のことを提示するのではなく、条件が満たされるとこう作用する、といった意味合い。問題の文だと「消える」という動作が完全に行われるので完了体が用いられているとも解釈できなくはない。もっとも уничтожь という命令形も完了体なので、一文に複数の動詞が完了体で示されるとき、一つの動作が順に展開されることを考慮すると、「一つの欠点を滅ぼす」→「十の欠点が消える」という因果関係になっているとも言える。逆に言えば、「一つの欠点を滅ぼす」ということをしなければ「十の欠点が消える」という動作は起こらないので、「一つの欠点を滅ぼしなさい、そうすれば十の欠点が消えるでしょう」という命令形の節を条件節のように訳すことができる。命令形=если と定式化まではできないだろうが、内在する意味を考えると、命令形が条件を示すというのは妥当な解釈ではないか。ただこう断言している文法書は見つけられなかったので、慎重に検討しなければならない。
接続詞 а は、「一つの欠点についてはそうだが、翻って、10の欠点の方は」という対比の意味合いが強い。

試訳
欠点を一つ無くせば、十の欠点が消える。
ロッド

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