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省エネ走行も勝利の鍵を握る電気のF1

– フォーミュラE 第6(2019-2020)シーズン 第4戦 -
完全電動のレーシングカーが世界各国を転戦する「フォーミュラE」(FE)。2014年にシリーズが始まった頃には、成功を疑問視する声が多く聞かれました。伝統的なレースの魅力の一つに挙げられるエンジンの爆音はサーキットから消え、加速時に「ヒュルヒュル」という電動ラジコンカーにも似た金属音がするのみ。トップスピードも時速200キロちょっと。300km/hオーバーのF1や、時には400キロを超えるアメリカの「インディカー」と比べると、「数字的には」見劣りします。

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一方で、コンピューターゲームから飛び出したような未来的なマシンの造形や、モーターの出力を一時的に上げる「アタックモード」機能、SNSを使った人気投票上位のドライバーに与えられる「ファンブースト」(数秒間、モーターのパワーを最大限使用できる)など、新しい試みによって急速に注目を集めています。

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また、FEは全てのレースが公道を一時的に閉鎖して造られる「ストリートサーキット」で行われるのも特徴の一つです。幅が狭く、コンクリートの壁に囲まれた逃げ場のないコースで24台ものマシンが繰り広げる接触すれすれのバトルは、トップスピードだけでは語れない魅力があります。

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市販車の電動化トレンドとも相まって、アウディ、BMW、DS(プジョー・シトロエングループ)、ジャガー、ニッサン、マヒンドラ(インド)、ポルシェおよびメルセデス・ベンツといった自動車メーカーが多く参戦しているのも特徴です。

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さて、昨年秋に中東のサウジアラビアで「シーズン6」(2019-2020)が開幕したFE。第4戦がメキシコの首都、メキシコシティで開催されました。

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優勝したジャガー(「パナソニック・ジャガー・レーシング」)のミッチ・エバンス選手(ニュージーランド)は、予選2番手のポジションからスタートし、直後の第一コーナーで先頭に立つと、後続を引き離して45分+1周のレースをフィニッシュ。前戦チリでの3位に続き、連続表彰台を獲得して年間ランキングでもトップに立ちました。

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アントニオ・フェリックス・ダコスタ選手(ポルトガル)は、中団の9番手スタートでしたが、戦略的な走りで2位に入賞。ダコスタ選手の乗る「DSテチータ」のマシンは、常にライバルよりも数%余裕のあるバッテリー残量を示していました。FEでは、スタート時に100%まで充電したバッテリーをゴールまでどう「もたせる」かがとても重要です。市販のハイブリッド車などと同様、FEのマシンもアクセルをオフにして惰性で走行している際、多くの場合にはエネルギー回生(充電)が行われます。

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とにかく速くはしることが勝利につながるイメージもあるモータースポーツですが、どこで加速して、つまりエネルギーを使用して、どこでセーブ(もしくは回生)するのか。状況に応じたドライバーの頭脳的な走りが重要なのです。ちなみに、チェッカーフラッグを受けた後、ダコスタ選手のマシンに表示されていたエネルギー残量は「0.0%」でした。

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3位には「ニッサンEダムス」のセバスチャン・ブエミ選手(スイス)が入り、「シーズン2」の年間チャンピオンが、今シーズン初のポイントを獲得しました。

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「モタスポ!Park」は時々、ドイツの部品メーカー「ZF社」に情報提供などのお世話になっています。このZFがサスペンションや駆動系システムを開発しているインドの自動車メーカー、「マヒンドラ」。

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マシンに乗る2人のドライバー、パスカル・ウェーライン選手(ドイツ)とジェローム・ダンブロージオ選手(ベルギー)は、トラブルにより最後尾スタート(23、24番手)となりましたが、アグレッシブかつ、エネルギーをセーブする戦略的な走りで9位、10位に浮上しダブル入賞を果たしました。

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次のレースは、2月29日に、モロッコのマラケシュで開催されます。「モタスポ!Park」は、FEに関する情報やレースの様子を引き続き掲載していきます。是非、チェックしてくださいね。

写真 © FIA 2013-2020

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