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2.夫に跳び蹴りプレゼント

誤解無きよう。

私は
履歴書の「長所」の欄に

『おっとりとして温和』と書く程
気が長い。

忍耐力もあるほうです。

父が短気だったから、空気を読んで
大人しくしていることも慣れています。

人目を気にする質でもありました。

そしてひたすらに、無気力、でした。

同居という環境下で

夫が

結婚と同時にパチスロの借金をカミングアウトした時も

臨月に突然 退職して帰ってきた時も

陣痛がきているのに「お金貸して」と言った時も

義妹のお年玉や義母の財布からお金をくすね「出ていけ」と罵られている時も

(やっぱり無茶苦茶やな)

アルカイックスマイルを浮かべ
のらりくらりと たゆたってきました。

ここまでとは思っていませんでしたが、
あらかたそういう人だ、とは
知った上での作っちゃった婚です、
仕方なし。

「諦め」というのは、
エネルギーを使わず済むので、
パワー不足(と思い込んでいた)の私には
丁度良い姿勢だったのです。

そんな私が
夫を跳び蹴ったのはこれまでで一度きり

夫が
子どもの貯金箱を
缶切りで開けて
空っぽにしたからでした。

クローゼットにしっかり隠してあった
50万円貯まる貯金箱

「満タン」を達成したくて
500円玉に拘らず1円玉から
入れていたから

大金ではなかったものの

それでも半分強は
硬貨が貯まっていました。

その尊い夢の缶詰が
気持ちいいくらい『パッカーン』と
口を開けて

1円残らず空っぽになっていて

ご丁寧に、隠していたその場所のままに置かれていて
(せめて隠蔽する労力くらい
費やせなかったのか)

夫がやった証拠はない

けれど今までの輝かしい経歴と
状況証拠が十二分。

「頭に血がのぼって」
「気付いたらこうなっていて」
「体が勝手に動いて」

観衆がいたにもかかわらず

私はガレージで
助走をつけて夫に跳び蹴り
体幹にクリティカルヒットさせ
ヘビー級の夫をガラクタの上に
倒れ込ませ

その勢いのまま
空っぽの貯金箱で
一発
二発
夫の頭をどついていました。

夫は 私が持っている空っぽのそれを
一瞥し
何の反撃も反論もしてこなかったから

証拠なんてなくても
そういうことです。

義母と、
遊びに来ていた義母の妹の
「どないしたん!」という声が
遠くから…
その二人も私が持つそれを見て
察したようでした。

子ども二人はまだ年少と入園前

夫が自分たちの足元で
土下座して謝っている理由は
当時は分からなかったでしょう

ぽかん、としていました

そんな
ぱっかーんぽかんの後も
色々な あれやこれやの
いざこざをたくさん経た結果

私は
ようやく世に言う
「人は変えられない」
ということを心から理解し

それが
私に覚悟がなく
中途半端なせいだということに
気付き

一成一代の
賭けに出たのでした。

次回
「博打嫌いの大博打」

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