町田ゼルビアvsセレッソ大阪の試合を観て思ったこと J1第14節 【2-1】
どうも、ゼロファジです。
5月15日はJリーグの日ということでミッドウィークに行われたJ1第14節の中から町田vsC大阪の試合をチョイスして試合を見ました。今回は試合を見た実感、考察をまとめていきたいと思います。
スタメン
町田は442、セレッソは433というフォーメーション。ミッドウィークなので、試合間隔もきっと短いのでしょう。選手の顔触れも普段とは違うのかもしれない。が、その違いまではわからず。
セレッソは一時首位に立ったものの勝ちなしが続いて順位を下げているということで、非常に他人事には思えぬ状況。けが人だけはどうしようもないよね。
では、試合の中からいくつかポイントを抜き出して考えていきたいと思います。今年の町田を見るのは初めてですが、まず印象深いのは守備の良さです。
町田の守備について
基本的にはこのように442の並びをキープしながら、センターサークルのセレッソコート側の頂点あたりにFWが立ち、セレッソの組み立てを阻害していくミドルプレスが基本線なのかなぁと。
しかし、相手のバックパスをきっかけにそのままハイプレスに移行するシーンもしばしば見受けられました。ちなみにこの、ハイプレスやミドルプレスの見分け方は守備を開始する高さで判別するといいです。
相手コートの深いところから邪魔しにかかる場合はハイプレス。さっきのセンターサークルらへんはミドルプレス。もっと引いて構えるのはリトリート(撤退守備)。この3つをざっくり見分ければひとまずはOK。
町田の守備を見ていて「相変わらず手厳しいな」と感じるのが、町田コートに引いた時の守備でした。このようにボールを持っている選手(ボールホルダー)に対して継続的にプレッシャーをかけて、相手がボールを収めた瞬間にはもうすでに目の前に町田の守備者が飛んでくる。そんな状況を作っていました。
スペースもなく、プレッシャーも早いため、ボールホルダーには余裕をもってプレーするゆとりがなく、そこからさらに奥へとボールを運ぶのがなかなか難しかったですね。J2にいた頃よりもさらにこの辺りは磨かれているように思います。J2ならば少し自由を与えてしまってもミスが多くて問題にはならないシーンも、J1では許されないということなのかもしれない。
なかなか「運ぶ」ができないセレッソ大阪
一方のセレッソはなかなかに苦しい組み立てを強いられていました。サッカーの攻撃はボールを前に「運ぶ」というアクションで表現されます。そこへいくと、セレッソは思うように「運ぶ」をやらせてもらえず、もどかしい試合だったかなと。両SBがいないのはボールを持ちたいチームにとってはかなりキツイでしょうね。
町田はアンカーの田中を継続的にケアします。そうするとセレッソはどうしてもどちらかのサイドにボールが誘導されていきます。SBを中に入れたり、あるいはIHとポジションを入れ替えたりと工夫はしていたものの、町田のブロックの中を経由して運ぶことがなかなかできませんでした。
そんなセレッソで最も有効と思われた攻撃はサイドチェンジ。町田は442のブロックで守り、ボールのほうに固まりごとズレていくので、ボールのないサイドにはスペースができます。
セレッソは433なので、WGを置くフォーメーション。したがって、タッチライン際でボールを受けるレシーバーを用意しやすい。そこで、左CBから対角のロングフィードを蹴って、右WGのクルークスに届ける。そこでクルークスがボールをキープして味方が押し上げていきましょうと。
ボールが空中を進むならさすがに町田のブロックが堅牢とはいえ、防ぎようがない。とはいえ、セレッソにはこれといった決定機はなく。町田の守備はおおむね安定していました。後半になると町田にも疲れが見えてきて、PKを取られたシーンもありましたが、もしかしたら日程的な部分かもしれない。しかし、後半セレッソのショートパスの組み立てが良くなったか?というとそうでもなかったような印象でした。
オ・セフンの高さを使った右サイドの攻撃
一方町田の攻撃では、2点特筆すべきポイントがあります。まずはやはりオ・セフンに触れないわけにはいかないでしょう。
194cmの長身で、ハイボールに滅法強く、この試合でもガンガンボールを競り落としていました。GKや最終ラインからのクリア、あるいは中盤に飛んできたハイボールの跳ね返し。あらゆるボールがオ・セフンめがけて蹴られており、またそこに競り勝つ。
オ・セフンが競り勝つことを前提にしてFWの藤尾、左SH藤本らがこぼれ球を拾い、そのままゴールになだれ込むという。このオ・セフンを使った電柱殺法は効果抜群でした。これにはセレッソのCB陣もさすがに手を焼いており、オフサイドトラップを目論んで電柱殺法を無効化しようと試みるもいまいち効果はなかったですね。
とにかく、後ろでボールを持て余していてもオ・セフンのハイボールで勝負すればいいという道筋が残されているので町田は判断コストがかなり軽くなっているんだろうなと。これは助かるんですよね。岡山もデュークで助かりました。
オ・セフンの基本ポジションは左ですが、右サイドは様子が異なります。町田ゼルビアは左右でタイプ違いのロングボールを蹴るんですよね。
左サイド奥のスペースに強い執着心を見せる町田
右サイドにおいて徹底されているのは、SBの背後のスペースへのロングボール。この意識は極めて強く、幾度もチャンスを演出していました。前半の平河の単騎抜け出しの決定機なんかは象徴的かなと思います。
ロングボールを蹴ってここに藤尾や平河が侵入してレシーバーとしてボールをキープできるならよし。しかし、なれなかったらなれなかったでも構わない。
なぜかというと相手がボールをコントロールしたら即座に守備に転じて相手の自由を奪っていく。それで奪うことができれば再び攻撃に転じることができるし、できずともタッチラインに逃げさればマイボールとなる。タッチラインに逃げて、町田のスローインとなればロングスローでセットプレー化できるわけで。実に低リスクで効率の良い攻め方になっている。
なお、余談ですが町田のやり方とJ2レノファ山口のやり方はかなり似ているのでもし興味あれば山口もチェックしてみてほしいです。今年の山口はかなり堅いですよ。
やりたい攻撃と選手のキャラクターと
ところで、こうした町田の攻撃を作るにはどういうキャラクターの選手をそろえるといいのだろう?と考えると、より味わいが深くなります。
町田の右サイドの攻撃のように、空いたスペースに侵入して展開したいというのであればスピードがないFWだと不向きでしょう。ならばある程度のスピードはいるよねってことになる。サイドで1vs1になったとき何ができるか?も問われるでしょう。ドリブルで剥がす、クロスを上げる、自力で持ち込んでシュートにこぎつける。そうした攻撃周りのスキルも欲しい。
そうなると、平河や藤尾のような選手が右サイドに起用されるのもうなずける話だし、彼らに代わる選手に同じ役割を託すならそういった適性があるのかどうか?は一つの注目ポイントになる。
このように、やりたい攻撃・やりたい守備がわかってくると、どういうキャスティングならばうまくいくんだろう?と考えを進めることができます。
町田にはナ・サンホやエリキやバスケス・バイロンもいるということで、なるほどそこの層は厚そうだなと。オ・セフンにしたってデュークがバックアップできるしね。手堅い編成だなと思います。
町田の守備がやや不安定だったパターンは?
おおむね安定していた町田の守備でしたが、前後半を通じてもっともつけ入るスキがありそうなシーンが63分のこのシーンでした。キム・ジンヒョンからのロングボールを競り合い、そのこぼれを町田のボランチが回収した場面。
こんな感じでとったらすぐに右サイド奥!ができれば問題ないでしょうが、状況によってはそういう選択ができない場合もある。そして、もろさを見せるのはそういうシーンでした。
柴山のチェイシングをターンして交わした柴戸のプレーはよかったんですが、今度はそこに田中が寄せてきて足元からボールを奪ってしまう。そして奥埜→レオ・セアラ→田中と繋がれて大ピンチとなってしまったシーンでした。このように、町田のゴール近くでボールを奪った後、次につなげる場面でミスして奪われるケースがちょくちょくありました。
全体的には安定している守備なのでそこがとりわけウィークに映るということもあるでしょうが、前半にも同じように低い位置からのパスをひっかけて相手にペナルティエリアに侵入されるシーンがあったんですよね。なので、町田としてはこのあたりをもうすこし安全かつ効果的に交わして「運ぶ」ができるようになるといいだろうなあと。
後半火を噴きまくった右サイドアタック
後半はもうとにかく右サイドアタックが火を噴きまくっていて、ほんと執拗にという表現がふさわしいくらい何度も何度も右サイド奥のスペースをアタックしていった町田の攻撃でした。
あまりにも多すぎるので時間だけ列挙しますが、53:36は右サイドからの決定機。56:09、59:02、63:52、81:02と。どんだけ右から殴るんじゃい!?というくらいで。もしかしたらセレッソの強みとか、そういうスカウティング上の狙いもあるのかもしれないですね。そこまではちょっとわからんけど。
そして生まれた先制点も、カウンターから右サイドで藤尾が時間を作ってバックパス。それを受けた仙頭のスルーパスに抜け出したナ・サンホが右サイド奥のスペースを侵略。折り返しのクロスをオ・セフンが仕留めると。やっぱり右サイド奥か!というようなゴールでした。
クロージングに失敗したが勝負強さも見せた
終始安定してゲームを進め、1点リードできたゲームだったのでなんとかしのいでゲームを閉じたかったところでした。しかし、後半の終わりごろにはかなり守備も疲れてルーズになってきていましたし、前半の守備の良さ、ボールホルダーに厳しくいくとか、そういうところを維持できなくなっていたように思います。
セレッソも決してスムーズにパスを繋げていたとは思わなかったですが、やっぱ局面局面での技術とかコンビネーションがうまいので、ルーズになっちゃうと危険なシーンを作ってくるよな、というところでしょうか。
しかし、ATにはデュークでの勝ち越しヘッドが決まり結局2-1で勝ちと。首位神戸にぴったりつける大きな勝点3となりました。去年のJ2で対戦したときも思いましたけど、このチームはほんとにねばり強いというか、勝負強いところがあるんですよね。多分、今年もそこは継続されているのだろうと思います。じゃなきゃ首位争いは無理だもんな。
なんというか、高校野球の強豪校みたいに勝負どころだな!ってところで点とったり、とらせなかったりするんですよね。そういう際の強さみたいなのを去年2回対戦した時も感じました。
しかし、昇格してすぐ優勝争いとはとんでもないことです。すごいことが起こっていますね。果たしてどこまで行くのか楽しみにしたいと思います。
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