J2第2節 岡山vs徳島 ゼロ式【図解】レビュー
どうも、ゼロファジ(@Zerofagi)です。
開幕戦を4-1で快勝し、1節終わっただけとはいえ首位につけ、気持ち良く望んだホーム徳島戦でした。去年までいっしょに戦った白井永地や安部崇士がスタメンに名を連ねており、そういう意味でも負けられない一戦でした。
写真提供:hide(@fagi1598)
こちらの記事はDAZNの中継の試合時間を付記してあります。該当する時間のシーンをDAZNで見ていただくと楽しさがよりアップしますのでお時間ある方はぜひそのようにお楽しみください。
前半の流れ
巧みにボールをつなぐ徳島に対し、構えて守備を固める岡山。前半開始早々、高い位置でボールを奪いチアゴが先制ゴールを決める。一進一退の攻防の中セットプレーからチアゴがPKゲット。しかし、デュークがミスで追加点ならず。徳島は岡山のプレスをいなし、藤尾のヘッドで同点に。
0.両チームのスタメンとフォーメーション
それでは、まず両チームのスタメンとフォーメーションを確認していきましょう。
岡山も徳島も433、ということで同じフォーメーション同士の対戦となりました。ちなみに、この状態を「ミラーゲーム」と呼んでいる人もいましたがそれは間違いだと思います。(諸説あるみたい)
実況さんとかでも間違うくらい誤解されやすいのですが、ミラーゲームになるのは442同士、343同士なので注意しておきましょう。では、かみ合わせをチェックしていきます。今日浮いてくるのは誰かなー?
433同士をかみ合わせてみると、このように両チームのアンカーポジション(本山・櫻井)の選手がマークしづらい配置になるのだな?とわかります。したがって、このアンカーをどうケアするのだろう?とあらかじめ予測を立ておくと観戦の助けになってくれます。
1.先制点から読み解く岡山の守備の考えかたとは?
この試合は素晴らしい守備から安部崇士のミスを誘いノリノリのチアゴがいきなり先制点を決める展開になりました。実は得点が生まれる背景には岡山の守備のねらいが詰まっていたのですが、そのあたりを深堀していきましょう。
まず、岡山の守備の配置をチェックしていきましょう。
この試合に、ボールをつなぐのがうまい徳島に対し岡山は451でセットして守備することを選択しました。このように、WGがMFの列に格納され中盤が5枚になります。
さきほど、かみ合わせのところでアンカーが浮きやすいぞ!ということを確認しました。では実際木山ファジはどうアンカーをケアしていたのか?というと、
ワントップに入るデュークが、櫻井へのパスコースを遮断してフリーで持たせないようにしています。これでまずアンカーに楽にもたれることはない。じゃあ、他の徳島の選手はどうなのか?というと、
徳島のWGはSBが、FWはCBが、SBはWGがみることによりマッチアップしています。つまり、誰が誰を見るのか?がはっきりしています。そのかわりに徳島のCBを見ることを諦めていますので、この試合徳島のCBがボールを持ち出すというシーンが増えたわけです。とりわけ大事なのはボールをインサイドで受ける徳島のIH(渡井・白井)この2名を田中雄大、河井陽介で消すこと。
徳島は安部→WG西谷とつなぎますが、そこは河野に見られています。前には進めないのでバックパスして、左SB新井へと渡りますがそこも宮崎幾笑に見られている。実に窮屈になっており、手を焼きます。しかたなく、バックパスをして・・・
安部ちゃんへもどしたところへデュークがプレッシングをかける。そうすると、ミスを誘発してチアゴがかっさらい見事2戦連続3得点目のゴールを奪ったという流れでした。安部崇士らしからぬ実にイージーなミスでしたから、相当に悔しかったことでしょう。ちなみに、ここでのチアゴのファーストタッチ・セカンドタッチは必見です。
まず、ファーストタッチでミスってしまうとボールが流れて徳島のCBに追いつく時間を与えてしまいます。ところが、チアゴは一発目でややまえに蹴りだし、走るスピードを殺さずにボールを前に置くことに成功しています。これにより、減速しなかった分徳島のCB内田も寄せきれなかった。つぎのセカンドタッチではシュートが打てる場所にビシッと置けたためにこの素晴らしいゴールが生まれることになりました。技術、高い!
2.徳島の前プレの考え方と岡山の対策とは?
今度は岡山の組み立てに対する徳島の守備の考え方、そしてそれを岡山はどう解決したがっていたか?をチェックしていきましょう。まず、徳島の前プレ時の追い込みかたはどうだったか?というと、
バイスにはFW藤尾が、徳元には右WG浜下が、田中には右IH白井が、本山には左IH渡井がマークし、バイスの近場をビシッとロックする形が出来上がっています。このあたり433の前プレに未熟さを見せる岡山とは違って、実に整理された印象を抱かせる徳島の守備です。では、この徳島に対して岡山は、バイスは何を選択したのでしょう?
バイスはチアゴへの浮き球のパスを選択しました。これは実に理にかなった攻撃です。なぜかというと、WGチアゴと徳島の川上がここで1on1になっており、チアゴがはがすことができれば一気に相手陣内に流れ込むことができるからです。ちなみに、このシーン、チアゴは軸足でトラップして川上をダマそうとしていますので是非見てみて!もう、この男、ノリノリである。
もし、WGのところでボールが収まったらどうなるのか?このシーンで確認しておくと、
このように、チアゴ→田中でスペースに侵入できます。青色のエリアを見てもらうとわかるように、バイス→チアゴのパス一本で徳島の5,6人の守備者を置き去りに出来るのですよ。これは左サイドに限ったことではなく、右サイドでも見られます。
図は割愛しますが、梅田のスローを右サイドで受けた宮崎幾笑がボールを落として、IH河井が前向きで受ける。この時点で徳島の守備者を5,6人を置き去りにすることができています。徳島の前プレに対してWGへのフィードでかわしてやろう!という岡山のねらいを確認できるシーンですね。
3.アンカー櫻井を前に向かせるための徳島の工夫とは?
アンカーが浮きやすい。だから、デュークでアンカーを消す。だから徳島はCBがボールを持ち出すけど、出しどころがない。これがここまでの流れ。では、徳島はこの事態を好転させるためにどのような工夫をしてきたのでしょう?
シーンは、徳島CD内田がボールを持っているところからはじまり、最終的にはクロスに藤尾がドフリーでヘッドしてしまうな流れに至りました。つまり、岡山の守備が失敗しているシーンです。それはなぜか?
内田がボールを持っている時点で、近場のパスコースはありません。SBへのコースはチアゴが切っており、IHへのパスコースは田中が切っています。またアンカーはやはりデュークが消している。
内田から安部へとボールが渡ります。このとき、徳島のIH渡井がボールを受けに落ちると同時に、左WBの西谷が岡山のMFラインの背後に移動します。本来左サイドの際にいるはずのWGがここまで中に入られると、右SBの河野もついていけません。そこへ安部からタテパスが刺さる。
西谷から櫻井にボールを落とすと、ここでようやく徳島のアンカー櫻井がフリーで前を向くことに成功しました。と、いった具合にWG西谷の移動とライン間でのボール受けで岡山の守備をかいくぐって、櫻井をフリーにし、やがて右サイドへ展開して白井がフリーでクロスをあげる、という流れになったというわけですね。
アンカーは消した。だから、CB安部がボールを持つ。けど、いい展開を作られる。配球者として優秀な安部をなんとかしたい。そういうわけで、岡山も少し守り方を変えます。
安部がボールを持つと、右IHの河井がMFのラインから飛び出して安部にプレッシャーを与えるように変化します。これにより、安部からいいボールを出させないようにけん制しようという岡山のねらいですね。この時、河井は背後にいる渡井へのパスを出させないように注意しながら出ていっています。
おもしろくない??このせめぎあい。
4.前半15分から失点シーンまでの注目ポイント
このあとの岡山はIHの河井をそのまま前に出して、451というよりは442ぎみの立ち位置へとシフトしていきます。
おそらくこの狙いは、より前プレに行きやすくして高い位置でボールを奪おうという狙いだったんじゃないかな?と推察します。具体的には、
櫻井は変わらず消しつつ、CBには河井を、両SBには幾笑とチアゴで見る形にすることによって出しどころをなくしてしまおうということでしょう。これにより徳島がつなぎを捨ててロングボールを蹴る回数が増えたので、効果はありました。ところが・・・
それまでアンカーへのイージーなパスは許していませんでしたが、次第にFWとMFの間でボールを受けられるようになっていきます。特に、前から行く前線と後ろのコンパクトさは意思統一ができていない場面も散見され、課題を感じるポイントでした。
なお、セットプレーからまたチアゴがPKゲットしたシーンですが、ここではデュークの個の力の高さ、柳のフィードのうまさを感じられるシーンでしたね。ニアゾーンに侵入しマイナスの折り返しをチアゴというシーンでしたが、デュークが安部ちゃんを振り払って抜け出したうまさ。このように、デューク単品で相手CBを上回るシーンは今後増えると思います。
PK失敗により勝利を遠ざけてしまったデュークですが、まあデュークが安部ちゃんとのデュエルに勝ってなければこのシーンないのでね。この分だと何倍にもして返してくれると思うので安心して待ちましょう。まだここ2か月で60分しか実戦をしていないのに、ここまでできてればいまは十分でしょう。
5.失点シーンから見えてくる白井永地の仕事ぶり
それでは、前半の最後に失点シーンをチェックしましょう。シーンは徳島のGKへの前プレからはじまります。このシーンは、読んでいて途中で「あっ!」と思う人もいるかもしれません。
バックパスを起点に、デュークが徳島のGK長谷川にプレッシングをかけます。長谷川は左CB安部へとパス。そこには河井がプレッシングに出ています。さあ、問題は次のシーン。
安部はクリアではなく、左WGの西谷にロングボールを送るのですが、このボールが絶品でした・・・・。西谷はハイボールでは河野に勝てないのでふわりとした浮き球は跳ね返されます。だから、たぶんこのボールは安部ちゃんが意図してヘッドの競り合いにならない早い球をチョイスしたんじゃないかな?とおもうんですね。すると、どうなるか?
西谷が落としたボールを、渡井が前向きにおさめます。この時点で、4人から5人くらいの岡山の守備者を置き去りにすることができ、徳島はスピードアップしてなだれ込むように右サイドを駆け上がります。これって・・・
前半岡山がプレス回避に使っていたのと同じ技なんですね。うーむ。
渡井から右WBの浜下へとボールが渡り、浜下はドリブルで運びます。岡山もかなり帰陣していてバイタルにも本山が戻ってきています。しかし、ここでまず浜下のクロスがスーパーでした。まさにここしかないという精度のクロスをあげて藤尾のゴールをアシストしたわけですが、これは仕方ないとあきらめのつくクオリティですよ。J1クラスだわこりゃあ・・
このシーンを見ていて「なぜ背の高いはずの柳はクリアできなかったんだ?」と疑問に思ったひと、いませんか?ちょっとその原因を探ってみましょう。
まずは、公式サイトの柳のインタビューを読んでみましょう。
まずは、それぞれのマークを確認しましょう。柳のマークは当然ながら相手のFW藤尾です。その藤尾にやられたのだから柳はなにをやっているんだ!!となる気持ちはめっちゃわかる。でも、もうすこし話を進めてみよう。次に、右SB河野が見るべきマークは左WBの西谷です。これも問題ないでしょう。
では、なにが問題なのか?
それは、白井永地です。
白井永地はボールがサイドに出て徳島が前進できると確認すると、自分はまっすぐ岡山のペナ内へと前進をはじめます。ここで問題だったのが、白井永地の走り込んだエリアなんですよ。
白井永地はバイスと柳の間のスペースめがけて走ってくるんですね。すると、柳はかなり困った状況に追い込まれます。というのも、本来は藤尾をマークしなければならないのに、目の前に白井永地が入ってくるので、白井永地にヘッドで決められたら元も子もないからです。局所的に2対1の状況になってしまっていた。
もう一度同じシーンを見てみましょう。今度は柳目線で。あきらかに自分の目の前に飛び込んできた白井永地に気をとられてしまいます。いかにも、白井永地らしいすばらしいサポートじゃないか・・・・
しかし、安部ちゃんの絶品フィードに、浜下のスーパークロス。そして白井永地の走り込みと、元岡山の選手たちの素晴らしいプレーで失点してしまったのは実に悔しい。しかし、レベルの高いプレーでした。さすがだわ徳島。
後半の流れ
徐々に岡山のプレッシングを回避して前進しはじめる徳島。徳島の即時奪回を交わして逆襲に転じる岡山。徳島が押し込む時間帯が長くなる中、岡山も反撃にでる岡山。両者交代選手を投入してラストスパートをかけるもスコアレスで後半は終了した。
6.本山遥が凄すぎる件について
後半、岡山は風下になったことも影響してかロングボールを前線に送り、デュークが競ったこぼれを拾うシーンが目立ち始めます。デュークのロングボール勝率が高いため、中盤にボールが落ちるわけですがそこでセカンドボール争いを優位に進めた岡山が序盤のペースを握ります。
そんな中度肝を抜くプレーを見せていた本山遥の守備を紹介しときます。
シーンは中盤でのセカンド争いを制した岡山が、本山→田中とパスを通し、徳島のMFのラインを突破したところから。
ちと、ごちゃついていますが本山→田中雄大とパスがわたり、この時点で徳島のMFのラインを突破することに成功しました。
MFのラインが突破されたので、ここで徳島のCB内田が飛び出して田中雄大のチェックに飛び出します。なお、右SBの河野は田中雄大がボールを奪われると予想していなかったので、右サイドの奥へ侵入すべくダッシュを開始していました・・・
ボールを回収した櫻井は即座に左WG西谷へスルーパス。河野がオーバーラップしていたので、誰もいなくなった岡山の右サイドをドフリーで侵入することができました。
SBの背後のスペースをケアするタスクを担うアンカー本山は、なんと快速WGの西谷を後ろから追いかけてサイドの奥でストップすることに成功します。しかも、ノーファウルで。もし、本山が戻らなかったら柳とバイスで徳島のアタッカー3枚と対峙せねばならず失点はほぼ確実というシーンでしょう。いや、ほんとにすごいスピードと献身性。相手西谷だからね・・?
7.徳島の即時奪回とビルドアップの熟練度について
徳島は後方からの繋ぎのみならず、ボールを失ったときの振る舞いに特徴を持っています。いわゆる即時奪回というやつで、失ったらすぐに切り替えてボールを奪い返しに一気に襲い掛かるスタイルをもっています。
こちらのシーンはスローインから岡山がボールを奪い、バックパスしていく展開ですが、徳島はボールを失ったその足で即座に奪い返しにきています。このように、狭いエリアでボールを再び奪い返せれば再度カウンターに入れますし、自分たちがカウンターを食らうリスクを減らせるってわけですね。
ところが、ここは岡山が一枚上手でした。
光ったプレーを見せたのは柳。バイスからボールを預かる逆サイドの右サイドへ大きなロングフィードを蹴り込みます。これを宮崎幾笑がおさめて、河井へ。河井のクロスにデューク。という流れるような攻撃を披露してくれました。
一方、ビルドアップで熟練度の高さを見せたのは徳島。
デュークを川本と交代させ、前線の運動量を回復させた岡山は前プレを継続します。このシーンでも安部の周りはロックされおり近場にパスコースはありません。しかし・・・
このシーン本山がサイドで渡井をマークしているのですが、その分中央は空いてきます。徳島は本山をサイドに連れ出し、そこに西谷が落ちてきてボールを引き出してしまいます。こういうのほんとにうまいよなぁ・・・。しかも、即座にそのままサイドチェンジを入れ、逆サイドの浜下をスピードアップさせると。正直、バリエーションの種類もコンビネーションの高さも岡山の数段上というほかなく、実に見事でした。
この試合でわかってきたこと
さて、最後にこの試合で見えてきたことを整理しておこうと思います。まず前プレについてですがこれは433の形にこだわらず、442の形でも出ていく姿勢が見えました。しかしながら、徳島に前プレをはがされてしまうシーンも少なくないため、上下動の激しいサッカーになっています。その分、本山遥が足を攣るわけだ。ですので、前プレでどれだけチームに利益が出せるか?は今後注目したいところです。
また攻撃の方では、徳島のようにプレスをいなすシーンは少なかった。まだまだこの点についても発展途上というところでしょう。チームの成熟は一歩一歩である反面、選手個々の力の高さでゲームを有利に進めるシーンが散見されたのは好材料でしょう。柳のフィード、ヘディング。チアゴのスキル。そしてデュークの高さ。本山のスピードと献身性。十分に昨季J1の徳島に通じています。
そして何と言っても河井陽介はすげーわ・・
特に判断の難しい場面でのプレーの選択、その成否に技術の高さを感じるんですが本当にうまい。はじめて上田康太を見た2014年「これがJ1でやってるひとか・・」と思ったのですが、あの衝撃を越えてきますね。
今後チームの成熟度が上がっていけば、個々の力を底支えしてさらに活躍できるようになると思います。去年石毛秀樹が右SHに入ることでクオリティがあがりかなり脅威なグループを作れたように、今年のチームも高いポテンシャルを持っている選手は間違いなくそろってます。
楽しもう。ポテンシャルは確かにあるよ。木山ファジには。