『兼サポ・個サポは悪なのか?』について語り合うファジサポのAとB
B「あのさあ」
A「お、どした?」
B「Aはサポーター歴長いでしょ?」
A「うん、まあそれなりには」
B「兼サポ、個サポって知ってる?」
A「兼サポは、"兼任サポ"のことで、複数のチームを応援するひとのこと。個サポは、"個人サポ"のことで、誰か特定の選手を応援するひとのことだね」
B「実は、ちょっと困ったことがあってさ」
A「ほー、どしたの?」
B「ファジにレンタル移籍してきた選手の個サポをやってる友達がいるんだけどさ」
A「うん」
B「なんか、SNSのDMとかで叩かれちゃっててすごく落ち込んでて」
A「ええ?そりゃしんどいね...」
B「"個サポってそんなに叩かれるようないけないことなの?"って悩んでてさ」
A「うん」
B「なんか声をかけてあげたいけど、どうしたらいいかわからなくて」
A「たしかに難しいなあ」
B「ちょっとAに相談してみようと思ってさ」
A「OK」
B「ありがとう」
A「その個サポの友達はどういうひとなの?」
B「ファジにレンタル移籍してきた選手をずっと応援してて、ルーキーのころからずっと個サポしてるみたいなのね」
A「うん」
B「これまでいくつかチームを渡り歩いてきてるんだけど、そのたびにおっかけて応援してて」
A「すごいね。ガチファンなんだ」
B「人間的にもおだやかで礼儀正しいひとだよ」
A「いいひとなんだね」
B「そうそう」
A「そのひとはなんで叩かれてるの?」
B「どうもね、サポーターならひとつのクラブを応援するのが筋で、そのひとみたいに選手が移籍したらコロコロ行く先を変えるのは浮気みたいなものじゃないか?って言われてるみたいで」
A「あー...」
B「移籍元のサポーターからも、移籍先のサポーターからも非難されてて、すごくかわいそうでさ」
A「それで、"個サポやるのは悪なのか?"って悩んでるわけだ」
B「そうそう」
A「なるほど。たしかに複数のチームを応援する兼サポも、選手が移籍するたびについていく個サポも、ひとつのクラブだけを応援するわけじゃないもんね」
B「うん」
A「だから、そこに違和感を持つひとが叩いてくるってわけだな」
B「おれは兼サポも個サポも悪じゃないって思ってる」
A「うん」
B「だって、そのひとが純粋に好きな気持ちの通りにやってるだけじゃない?」
A「たしかにそうだ」
B「ひとがどう楽しむか?はそのひとの自由だと思う。それを他人がとやかくいうのはおかしい」
A「サッカーの楽しみ方はたくさんあるもんね」
B「でしょう?」
A「どんなやり方で楽しもうと、正直その人の勝手だし、Bの言うようにつべこべいうのは余計なお世話だよな」
B「でも、浮気だ!と怒る人がいるんだよ」
A「そうだね、Bはそうやって言ってくる人についてどう思うの?」
B「あたまおかしいと思ってる(怒)」
A「まあまあ、落ち着きなよ。Bまでカリカリしてたら話にならないじゃないか」
B「うん...」
A「試合を分析的に観るように、落ち着いて整理しながら話を進めてみようぜ」
B「そうだね、ごめん」
A「まず考えたいのは、浮気だ!と非難してくるひとたちの心理的な背景だよなあ」
B「どういうこと?」
A「なぜ彼らは"浮気だ!"と叩いてくるのか?そう言わせる理由はなんだろう?ってこと」
B「理由か...なんだろう。全然わからん。わかりたくないのかもしれん」
A「ひとつ言えるのは、彼らには信念がある。それは"サポーターたるものはひとつのクラブを熱心に支えるべき"って考え」
B「うん」
A「その信念に照らし合わせてみると、ひとつじゃなくてふたつみっつとウロウロする兼サポは悪となる」
B「そうだろうね」
A「また、選手にくっついてチームを渡り歩くことになる個サポも、コロコロ行く先がかわる浮気者となる」
B「うーん...」
A「彼らの理屈で行けばそういうことになる」
B「でもさ」
A「うん」
B「ひとつのクラブを応援しなきゃいけないなんて決まりはないよね?」
A「ないね。全く」
B「だったら、すきにやってていいはずなのにさ。叩くひとたちが浮気だ!って言ってくるのは押し付けじゃない?」
A「そうだね」
B「なんで押し付けてくるんだろう?」
A「ひとつには彼らは彼らの信念こそが正しいと思い込んでるってことがあると思う」
B「じゃあ、それ以外の考え方は間違いだって思ってるのかな?」
A「多分ね。だから兼サポや個サポの存在が目について、叩きたくなっちゃうんじゃないかな」
B「叩いてどうしたいんだろう?追い出したいのかな?」
A「自分と考えの違うひとが目障りに感じるのかもしれないね」
B「じゃあさ、なんで彼らは自分たちの考えが正しいって思っちゃうんだろう?」
A「それは、たぶん数が多いからだと思うよ」
B「数か」
A「うん。たしかにひとつのクラブを応援するひとと、複数クラブを応援するひとを比べたら、たぶん圧倒的にひとつのクラブを応援するひとが多いと思う」
B「マジョリティ(多数派)ってやつか」
A「そう。しかし、兼サポや個サポは逆に数が少ないからマイノリティ(少数派)になる」
B「うん」
A「周りのひとがみんなひとつのクラブを応援してるから、それをやるのが当たり前。それをやるのが正解だって自然と考えてしまうんじゃないかなあ」
B「うーん...なんか納得がいかないんだよなあ」
A「ただね、ひとつのクラブを応援するのが正しいと考えてるひとたちも、大きな勘違いをしてると自分は思うのよ」
B「勘違い?」
A「彼らは正解はたったひとつしかなくて、その他は間違いだと思うから叩くわけでしょう?」
B「たぶん、そうなんじゃないかな」
A「でも、正解ってたくさんあるんだよ」
B「正解がたくさんある?」
A「ひとつのクラブを応援するのが正しいだろ?って思う人のなかでは、その考え方は正しいかもしれない。だけど、そうじゃないひとには別に正解でもなんでもないわけ」
B「うん」
A「一方で、兼サポや個サポの中では複数応援することが正解なわけだよ」
B「うんうん、そうだよね!」
A「そう。だから、ひとによって、また好みや関わり方によって、そろぞれいろんな正解があるんだよ。だから、これが正解だから従え!とか、従わないやつはおかしい!とか、それは正解がひとつしかないって勘違いしてる人の意見に過ぎない」
B「うんうん!」
A「いくつもの正解がごちゃまぜになってるのがサポーターだし、スタジアムだし、サッカーだってとらえておくのが自分はいいと思ってる」
B「あー、ちょっとわかる気がするわ」
A「自分の好きなことがあまりに好きすぎると実は危ないんだ」
B「どういうこと?」
A「昔、他サポの知り合いにずっとゴール裏で応援してて、それが最高に楽しいってひとがいたのね」
B「うん」
A「彼はあるとき思ったんだ。"声出し応援はこんなに楽しいのに、どうして他のサポーターはその良さを知らないんだろう?この良さを知ろうともしないのが理解できない"って」
B「うん」
A「最終的には"声出しこそが最高なのに、それを理解できない人はおかしい"と思っちゃった」
B「ああ...」
A「それから彼の目には他の楽しみ方をしている人が"わかってないやつ"として写るようになってしまったんだ」
B「そのひとにとっては声出しこそが正解だったんだね」
A「そうなんだ」
B「でも、他に正解があるなんて思えなかった」
A「うん。だから、自分にもよく言ってたよ」
B「なんて?」
A「戦術とかいいからとにかく、声出しに行ってみろよって」
B「それでAはどうしたの?」
A「2回だけ行ったことがある」
B「どうだった?」
A「楽しかったよ。ふつうに。でも、自分はどうしても試合中に何が起こってるのか知りたい気持ちが抑えられなくてさ。ゴール裏にいたらよくわかんないじゃない?」
B「そうだろうね。みんな一生懸命応援してるし」
A「だから、自分はここじゃないんだなと思った」
B「Aの正解はゴール裏になかったんだ」
A「サポーターは楽しむのが仕事だと思うんだよね」
B「うん」
A「だから、楽しめたらそれが正解!でいいと思う」
B「そっか。そうだよね」
A「ただ、どうやったら楽しめるかはひとそれぞれに正解がある」
B「なんかさあ」
A「うん」
B「一番モヤっとするのが、同じクラブのサポーターが一方をああやって叩くじゃない?」
A「うん」
B「それやって何になるんだ?っていうかさ」
A「そうだね」
B「もし、叩かれて凹んでおれの友達が個サポやめちゃったら一体誰が得をするんだろう?って思うんだよね」
A「うんうん」
B「すげー悲しいし。絶対良くないと思う。だけど、どう言葉にしたらいいかわからない」
A「まあ、参考になるかはわかんないけどさ」
B「うん」
A「同じサポーター同士で対立して、叩かれてる方がサポーターやめちゃったとするじゃない?」
B「うん」
A「そしたら損をするのは誰だと思う?」
B「・・・叩かれたひと?」
A「そうだね。でも、他にもいるんだ」
B「ええ?他に?誰だろう」
A「それは、クラブだよ」
B「ん?応援してるクラブ自体ってこと?」
A「そういうこと。サッカークラブって人気商売でしょ?だから、すこしでもたくさんの人に関心を持ってもらって、チケット買ったり、グッズ買ったりしてもらいたいわけじゃない?」
B「うん」
A「少しでも興味持ってもらうために、お金も時間もひともかけて必死で集めようとするわけだよ」
B「うん」
A「ドライなお商売の目線で考えれば、正直お客さんがどんな興味の持ち方するか?はなんでもよくて、とにかく興味持ってもらう。そして足を運んでもらう。そのために努力する」
B「そうだね」
A「でも、そうやって来てくれたひとが、他のサポーターに叩かれて''もうくるもんか!"ってなったら、純粋にお客さんひとり無くしちゃうじゃない?」
B「たしかに」
A「ひとつもクラブのためにはならないよ」
B「うん、あ!」
A「お、気がついたな?」
B「それはもう"サポート''とは呼べないよね?」
A「ふふふ、その通り。足を引っ張っちゃうからね」
B「そっか、そうだよなぁ」
A「だから同じサポーターを叩いてのけものにするなんてマジで意味がない。そんなことして喜ぶのはむしろライバルだよ」
B「ありがとう。だいぶ整理できてきた」
A「それはよかった」
B「じゃあ、個サポの友達に具体的に声をかけるとしたら、"自分が楽しいと思うことをやってるんだから間違いじゃないよ"って感じがいいかな」
A「そうだね、それがいいかもしれんね」
B「でも、DMとかで直で叩かれるのが結構しんどいみたいなんだよなあ」
A「あれは、たしかにね...」
B「Aも経験あるの?」
A「全然あるよ、もう慣れてるけど。それでも刃物みたいな言葉でいきなりグサッと刺されるようなショック感はあるよ」
B「そうらしいね...」
A「ああいうの来たりすると、自分がめちゃくちゃ拒絶されてて居場所がないんじゃないか?みたいに思っちゃうこともあるんだけどね」
B「うん」
A「そんなことないからね」
B「うん」
A「近いところに自分のことを知ってくれていたり、信頼できる人がいれば、そういうの来ても平気だよ」
B「そっか」
A「だからBがそういう存在になってあげたらいいんじゃない?」
B「うん!おれにできることあんまりないし、せめてそのくらいなら」
A「あとは、マイノリティの立場にいるひとは理解してもらいたいって願望をある程度諦めるのもコツとしてアリだと思うね」
B「というと、個サポのことをたくさんの人にわかってもらいたいって思わない方がいいってこと?」
A「そうそう。別にネガティブに考えてそういってるわけじゃなくて、わかってもらえたらラッキーだなくらいでちょうどいい。ほっといてもたくさんのひとが良さに気づいて参加してくるんだったら、そもそもマイノリティにはならないでしょ?」
B「ああ、そうか」
A「そうないってことは、たくさんのひとにとって良さが見つかりにくいってことだからね」
B「よーくわかった。つきあってくれてありがとう」
A「お役に立てたならよかったよ」
B「おれもいつか個サポになる日が来るのかなあ...」
A「個サポになってもファジサポでいてね??」
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