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ファジアーノ岡山北川社長の会見を解説してみた

どうも、ゼロファジです。

先日行われたファジアーノ岡山の新加入会見。その中でファジアーノ岡山の北川社長による会見が行われました。その内容についてこんなツイートしたんですが・・・

とてもたくさんのリアクションがありました。会見内容も非常に見ごたえがあるので、興味ある方はぜひYouTubeでご覧ください。


この内容に関してはめちゃくちゃ語っておきたいものになっていましたので、ファジサポ歴、J2歴12年の自分から見た解説を書いてみました。もしよろしければお付き合いくださいませ。

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ファジアーノ岡山北川社長の会見を解説してみた



先日ファジアーノ岡山の新加入会見が行われました。その中で、北川社長から2021年の振り返りと2022年の展望、およびその先の未来についてビジョンが示されました。で、この北川社長の会見内容がもう・・・ほんとに凄い内容でして。リアルでみているときに感動して心が奮い立つような気持ちになったんですね・・・

あの感じをたとえると・・・少年マンガとかで主人公たちが劣勢に立たされてるんだけど、これから最後の攻勢をかけて敵をやっつけに行くぞ!みたいな。そういうアツい展開がこれからまっているっていうことが分かった会見になっておりました。

で、この内容なんですが理解するためにいくつか知っておかないといけないポイントがありまして、それを知らないと「ふーん」で終わってしまう内容だと思うんですね。正直それだとウチのクラブのがんばりや覚悟が伝わらないと思うし、この会見を聞くと「ああ、ファジアーノ岡山を応援してきてよかったな」ってしみじみ思える。そんな内容になってますので、そのあたりが伝わるようにじっくり解説していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

おさえておきたい重大ポイント


で、今回いちばんお話したい重大なポイントはこちらです。

ファジアーノ岡山は市民クラブ、県民クラブとして、J1昇格を達成する
んだ、ということ。

いろいろな語り口があると思うんですが、なんせボリュームがすごいので全部は話しきれませんので、今回はこのポイントに焦点を絞ってお話していきたいと思います。解説に入る前にいつもどおりまずは言葉をしっかりとチェックしていきましょう。

今回のお話で特に大事な言葉は、「市民クラブ」という言葉。そして「J1昇格」という言葉ですね。この2つの言葉の意味に加えて、J2リーグ自体の話やこれまでの岡山の歩みも加えながら説明していきます。

市民クラブとは?


まず、市民クラブという言葉こちらからいきましょう。この言葉厳密な定義とかは正直よくわからないんですが、通例サッカーで使われる用語としては、「親会社を持たないクラブ」という意味になります。


親会社を持たないクラブはどういう特徴があるかというと、資金力が乏しくて成績が上がりにくいということがあります。これはサッカーの常識ですが、資金をたくさん持っているクラブのほうが、いい選手や監督をそろえられる可能性が高いので必然的にいい成績が残しやすくなります。簡単にいうと、上に行こうと思えば思うほど、必要になるお金も増えてていくということですね。

そこいくと、市民クラブはお金がないのでリーグで上位に食い込む難易度がより高いということです。

では、逆に親会社を持つクラブとはどういうところか?というと、浦和レッズや鹿島アントラーズ、J2だとV・ファーレン長崎。こういうところは親会社を持つクラブです。

J2でいくと、この長崎がわかりやすいんですが、ジャパネットたかたが親会社になりまして、いまやJ2屈指の資金力をほこるクラブになっています。この長崎のケースについては、個人的に話しておかないといけないことがあるので、のちほどJ2の歴史にからめてお話ししたいなと思います。

J1初昇格することはめちゃくちゃむずかしい偉業


で、次に「J1昇格」という言葉、ここを深堀していきたいと思います。


このJ2リーグの昇格レースには大きな特徴がありまして、それは現状では「J1経験クラブによるイス取りゲーム」になっているというものです。

これはどういうことか?というと、自動昇格枠が2つあってPOまで含めると6クラブまで昇格可能性があるわけですが、正直上位は「一度でもJ1に行ったことがあるクラブ」がほとんどおさえこんでしまうんですね。これは過去の成績を見てもらえばすぐにわかるので暇なときにチェックしてみてください。大事なことは、J2リーグには「J1経験クラブ」と「J1未経験クラブ」の2種類があるんだなと意識しておくことです。特に後発の地方クラブサポーターはここの意識をしっかり持っておいた方がいいですね。

では次に、ここ10年でJ1初昇格を勝ち取ったクラブはたったの3つしかないということ。つまり、J1未経験だったけどはじめてJ1に上がって「J1経験クラブ」になったよ!ってクラブはたった3つしかなかったということです。

2022シーズン、J2リーグは22クラブ参加してますが、その内半分の11クラブが「J1経験クラブ」です。ということは、J1未経験クラブも11クラブということですよね。だから、だいたい半分くらいがJ1未経験クラブなんだなと。ここ10年でいくと、J1未経験クラブが毎年およそ10クラブあったとすると、10年かける10クラブで、のべ100クラブがこれまでの10年でJ1初昇格を目指してがんばってきたわけです。その結果、見事初昇格達成しましたー!ってクラブがたったの3つ。

J1昇格というとすべてのクラブにチャンスはあるんですけども、J1未経験クラブの立場からすれば、100分3という超狭き門をくぐる勝負なんだってことがわかります。これがJ1初昇格の実態です。

次に、資金力に乏しい市民クラブは昇格レースに絡むことが難しいってことなんですけども。市民クラブはほとんどが昇格に不利なJ1未経験クラブです。お金がない上に11クラブもある有利な「J1経験クラブ」の群れをかき分けて、バッタバッタとなぎたおして、上位に食い込まないといけません。100分3の針の穴を通すような偉業を成し遂げる挑戦をしないと、初昇格は遠い夢なんだということです。


「市民クラブ」かつ「J1未経験クラブ」がJ1初昇格を目指すむずかしさおわかりいただけただろうか・・・


J2リーグとは?


では、次にJ2リーグ自体について、そしてこれまでの歴史にもちょっと触れておきたいと思います。

繰り返しになりますがJ2にはJ1経験クラブ・J1未経験クラブの2つがあるよってこと。そして、市民クラブと親会社を持つクラブ、この2種類があるよってこと。

で、先ほどの話を踏まえるとJ2というのは後発の地方クラブがたどりつける最高のリーグに近いという現実が見えてきます。

J2には地域リーグ、地域CL、JFL、J3というように下から昇格を重ねてここまでやってきたクラブがたくさんあるわけですが、ほとんどが市民クラブですので競争力に乏しくJ1初昇格がめちゃくちゃ難しい。結果、それ以上上にはいけなくて、J2に留まると。あるいは、J3に降格してしまう。これが後発地方クラブの現実です。

ここからすこし歴史の話になりますが、DAZNがJリーグにくる以前のJ2の空気感についてお話しておきたいと思います。

これは北川社長の会見の中で話されていましたが、昔のJ2って売上が10億くらいあればJ1昇格を狙えるって水準だったそうです。つまり、お金のない地方の市民クラブであっても、地道な努力を重ねていけばなんとか到達できるんじゃないか?そういう数字だったわけですね。だから、みんな市民クラブでお金ないけどクラブもサポーターもがんばっていっしょに努力してJ1目指そう!と。どのクラブでもそういう気運はあったんじゃないかなと思います。

ところが、DAZNが来て格差が広がってきたこともあり、10億で良かったところが15億の売上がないと厳しいとなり。だんだんと天井が高くなっていくんですね。コロナ前の2019年では20億を超えるクラブが6つもあったとのことです。PO圏内は6位までですから、正直もうその6つで埋まるじゃねーかっていう・・・そういう現実があるんですよ。

10億ならなんとか・・・と努力してきた市民クラブがどうやって20億もの売上を作って、親会社を持つクラブ、J1経験クラブと渡り合って100分3をやるっていうの??という。僕らが向き合ってる「J1初昇格」というのはそういう勝負の話なんですね。

そして、見逃せないのは大きな企業がJ2クラブに投資しはじめているということです。長崎にはジャパネットたかた。町田ゼルビアにはサイバーエージェントがついていますが、それまで市民クラブであったところに親会社がついて「親会社を持つクラブ」にクラスチェンジする例が出てきています。当然、親会社がつけば資金的にかなり優位に立てますので強くなります。長崎はJ1経験クラブですが、町田もそう遠くない未来にJ1にいくでしょう。

こうした流れがあって、はたして市民クラブにJ1昇格の未来はどれくらいあるんだろうか?年を追うごとに状況は難しくなっており、タイムリミットは迫ってきています。

市民クラブがJ1を目指せるタイムリミット


冒頭のツイートを再度貼っておきます。会見の中で市民クラブがJ1を目指せる期間は長くても2025年くらいまでなんじゃないか?と言われていました。DAZN後のJ2でもだいぶタイムリミットは迫ってきているな・・・と感じていましたが、もうほんの数年後には市民クラブはほとんどノーチャンスですって未来がくる。そういう予測がJ2クラブのトップから明らかにされているわけです。

さきほどJ2は後発の地方クラブがあつまる最高のリーグと言いましたが、今後さらにJ1行くのはムリゲーになってきます。後発地方クラブの終着点がJ2である。それに近いことになる可能性があります。

Jリーグクラブが地方各地に出来て、大都市でなくともプロサッカーを楽しむことができる環境になった。この功績は計り知れないと思います。いまも、Jリーグを目指して各地域で切磋琢磨しているサッカークラブはたくさんあります。しかし、このままでいけば彼らも行けてJ2までが限界になります。そういう未来も仕方ないと思う反面、それでいいのかな?とも思ったり。ここは語るべきポイントがいくつかありますが、今回は割愛します。

市民クラブの優等生としてのファジアーノ岡山


では、次にファジアーノ岡山についてお話していきます。


それまでのファジアーノ岡山のキャラクターは「市民クラブの優等生」というものでした。よそのクラブが集客に苦しむ中、木村前社長のもと着実に観客動員と成績を向上させ、ほかの地方クラブが視察にくる。ファジアーノ岡山とはそういう見本になるようなクラブであったわけです。これは余談ですが、いまだと水戸ホーリーホックさんがいい感じになってきています。岡山で上手くいった例を活かされているなとお見受けすることが度々あります。たぶん岡山の例はめちゃめちゃ研究されていると思いますね。

一方、サポーターの方もそうした「優等生な岡山」というキャラ、他所がやっていない取り組み(ファジフーズや夢パスなど)をやる独自性、そういったファジアーノ岡山というクラブ自体が持っているキャラクターそのものに「誇らしさ」を感じていたひとも決して少なくないと思います。チームの成績が上がっていくことも嬉しいんですが、クラブ自体が成長していくことも同じように楽しんで、喜んで、誇りに思っていた。かくいう自分もその一人でした。

そうして地道な努力を重ねた結果、DAZN前あたりではトップのJ1経験クラブ集団の次の位置には岡山が上がってきている。「次、初昇格するとしたら岡山だろう」J2界隈ではそうささやかれるほど評判は広まっていました。


で、岡山が市民クラブとしてJ2の中で有力化していったのは、もちろんクラブがすごくがんばったこともあるんですが、当然サポーターもがんばっていたんですよね。

それは観客動員に現れていて、2016年PO決勝にすすんだ年には平均観客動員数1万人を達成しています。たぶん、後発地方クラブでこれを達成できたのはウチ以外では松本山雅くらいしかないんじゃないでしょうか?この数字はJ2民なら分かると思うんですが、かなり大変な数字です。

当時「どうやったらひと呼べるんだろう?」ってファジサポみんな考えてましたよ。だから、「金はないけどみんなでケツを押し上げてJ1にいくんじゃあ!」っていうそういう努力あっての数字、6位という成績だったと思います。

ところが、2017年以降岡山は停滞してしまいます。DAZNが来て格差が広がったこともありますし、以前であれば期待値で5、6番手くらいにはつけられていたところが、よくて8番手9番手、なんなら中位くらい。「次、初昇格するなら岡山」という評判はほとんど聞かれなくなったころですね。トップ集団の次の位置を維持できなくなっていました。

2016年をピークにどこか熱を失ったかのように感じられるシーズンが続いていましたが、個人的には「市民クラブの優等生として努力を続けてた岡山がJ1に届く」そういうストーリーを再び描くのが難しい、そういう現実をみんなどこかで感じていたんじゃないかなと思うんですね。心のどこかで「今年もいいけど2016ほどじゃないよな・・・」と折り合いをつけなきゃいけなかった。だから、熱量もあがらずにどこか平熱な季節がつづいてしまった。


それが2017年から今に至るまでの岡山の歩みだったのかなと感じています。


ジャパネットたかたによるV・ファーレン長崎子会社化の衝撃

そして、先ほど長崎の話をしますといいましたが、おなじ市民クラブとして下から上がってきてJ2にやってきたV・ファーレン長崎は2017年に経営問題が明らかになり、資金不足で社員への給与未払いが発生する見通しになってしまうんですね。つまり、経営がうまくできてなかった。手落ちがあったわけです。しかし、そのクラブを救おうとジャパネットたかたが手を差し伸べた結果。今にもつぶれそうだった長崎は、一転してJ2の資金力豊富なクラブに早変わりしてしまったわけですね。

それまで「市民クラブでも努力をしてJ1に行こうよ」とやってきたわけですし、市民クラブはみんなそういうところでしのぎを削ってるんだと思っていたんですね。

ところが、経営で失敗し、市民クラブとして成長していない、観客動員も決して多くはない、そういう長崎がジャパネットたかたの子会社化をキッカケに一気にごぼう抜きして強豪化してしまうという出来事を目の当たりにした。

なんじゃそら・・・って思うしかなかったですよ当時は。

クラブやサポーターが地道に努力を重ねていても、親会社がついちゃえば一気に追い抜かれるのか。おれたちの努力はいったいなんだったんだ。

いや、わかっちゃいるよ。長崎サポーターはなんも悪くない。もちろんジャパネットたかたもサッカーを救ってくれた。わかっちゃいるけど・・・とても素直に受け止めたくはない。ジャパネットたかたによる子会社化はそういう衝撃があったんです。



「サッカーには夢がある」


高田明さんが口癖のようにおっしゃっていた有名なフレーズですが、立場によってはその響き方はかなり違って聞こえてくるものです。


2020年アウェイ長崎戦で有馬前監督が率いたファジアーノ岡山は5-0の大敗を喫しました。内容を見ればスコアは当然という格の違いで、こちらがやっと1つできることをあちらは3つも4つもできてしまう。そういうサッカーをやっていました。そろえた選手のレベルも数段上。でもまあ、それもサッカー。うーん・・やっぱうらやましい気持ちはあるよ正直ね笑
翌年、有馬ファジ無敗期間中にリベンジを達成してくれたのはめちゃくちゃ嬉しかったです。

とあるファジサポさんのツイートがすばらしいので紹介しておきます。若いのにしっかり考えてるファジサポがいておじさんはうれしい。


2022年岡山は市民クラブとしてJ1を目指す

これで必要なお話はすべてそろいました。

あたらめて2022年ファジアーノ岡山がしかける大一番はどういうものなのか?それをチェックしておしまいとしたいと思います。

まず、立場。

市民クラブとしてJ1を目指すということ。そして、J1未経験クラブとして初昇格を目指していくということ。

先ほど述べたように、J1経験クラブは11もあります。岡山の先にすでに優位なクラブが11もあると考えておいてもいいと思います。そして岡山の後ろにはたくさんのJ1未経験クラブがあります。

おそらく、この時点でJ1昇格を現実的な視野に入れて勝負ができるJ1未経験クラブは岡山のほかに相当に少ないと思います。だから、2016年あたりのころと同じように、J1未経験クラブのトップとして再び勝負に出来る時が訪れたと考えていいと思います。ほんとにクラブに感謝したいし、ファジアーノ岡山を応援していてよかったと思います。

そして次に、2022年を勝負の時にできたということ。減資増資を行うことで、打って出るチャンスを得ることができたわけですが、それも地域の支えがあってこそ。地域の支援の力をあつめて、ファジアーノ岡山はJ1の高みに到達する。ほんとに市民クラブはドラゴンボールの元気玉方式です。


そして次に、現実的に市民クラブがJ1昇格を目指せる季節はいよいよ終わりに近づいています。2025年というタイムリミットの話がありましたが、その後にJ1昇格を目指す競争力を身につけようと考えるならもう、親会社を持つクラブへの転身以外にないでしょう。だからこそ、「市民クラブとして」という言葉が重たい意味を思ってくるわけです。

これまた若いファジサポの素晴らしい予想ツイートを紹介しています。


そして、2017年以降どこか失ってしまった「ファジアーノ岡山の成長物語」。あれを取り戻して次なるストーリーをはじめるその最初の年がついにやってきたということ。クラブとサポーターがいっしょになって、岡山を上へ上へと押し上げていたストーリー。あれを上回る筋書きを今度こそ描く。そのチャンスが2022年です。

長々とお話してきましたが、下手な説明にお付き合いいただきありがとうございました。読んでくださったかたに無事に伝わっているといいなと思います。

ファジアーノ岡山は勝負に出ます。J1昇格を果たすために必要な準備をして、クラブはこの舞台を用意してくれました。このクラブの心意気に応えていっしょに戦いたい。それ以外に思い浮かぶ感情がありません。押しつけがましいことをいうつもりはありませんが、ひとりひとりのできることを集めて、かならずJ1に行きましょう。


それでは、ホーム開幕戦でお会いしましょう。













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