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私のサッカーを色眼鏡で見ないで


※この記事は次の2つのnoteに感銘を受けて書きました。


スフィーダ世田谷所属の下山田選手のnote。

藤枝順心高校でサッカーの指導者をされている中村翔さんのnote。


記事の中で、”女子サッカーは男子に比べてパワーや技術が物足りないためにサッカーとしての魅力が落ちる”こういう考え方が前提となったうえで「女子サッカーは~」と語られてしまう現状があることがよくわかります。お二人の話は女子サッカーと男子サッカーを対比させた場合についてでしたが、このテーマはもっといろんなケースにも当てはまるんじゃないかな?と思っています。

なので、もうちょっと範囲を広げた言い方をするならば、

サッカーの楽しさは選手やチームのパフォーマンスの質に左右される

こうした考え方。ファン・サポーターのみならず指導者の中にも結構根強くあるんじゃないかな?と思います。というか、自分も昔はそうだったもん。子供のころ。セリエしか見たくなかった。当時世界最強のリーグだったから。


ですから、こうした考えを否定するつもりはありません。というかできません。高いクオリティのものはそれなりの楽しさを提供するものです。ですから、高い価値を持ち、高い値段で売られていきます。サッカーの世界は1部2部というようにピラミッド型になっているケースが多いですが、全世界的にみてもリーグですらランキングがあり、上下の別があります。


お二人も認めておられるように、女子は男子に比べてフィジカル的に劣ります。つまり、男子水準のクオリティが出したくても出せない。しかし、そうだからと言ってクオリティのより低いサッカーは楽しくないものなのでしょうか?自分はここについて強い疑念を持っています。


下山田選手は現役の競技者として、そして中村さんは指導者としてこの問題について語ってくれましたので、自分はJ2クラブを応援するひとりのサポーターという立場から話を進めてみたいと思います。


サンフレを見る眼鏡でファジをみないで


自分は、ファジアーノ岡山という岡山県をホームにするJ2クラブを長年応援しています。サッカー観戦歴としては25年くらいありますが、そのうち10年はこのクラブと歩みを共にしてきました。


サポーターになって3年ほどたったある試合。メインスタンドで試合を観ていると一人の年配のおじさんが試合中ブツブツ言っているのが耳に入りました。なにかにつけて「サンフレ(サンフレッチェ広島)なら・・・」「J1のレベルだったら~~~」と、ファジの拙い攻守をみるにつけサンフレを引き合いに出して、その物足りなさを指摘するのです。フォーメーションも同じ、また監督は広島にゆかりのある人物。志向するサッカーの方向性もサンフレに近いものがありましたので、余計そう感じられたかもしれません。

このサンフレおじさんの言うようにクオリティが高いサンフレのほうが、

・おもしろい

・できることが多い

・見栄えがする

・迫力がある

・スピードがある


全面的にそうなんです。そりゃJ1でタイトル争いしてるわけですから当然な話です。しかし、ひとつ聞き捨てならなかったのが「こんなん見てて楽しいんかな」とこぼしたことです。


はっきり言って、楽しいです(たまに楽しくなかったけど笑)。


サンフレにできることができないからファジはJ2にいるわけで、同じようにサンフレにできることができない他のクラブたちとしのぎを削っているわけです。そのためにもリーグの別があるわけで。そういうファジアーノ岡山を見るときに、サンフレッチェ広島を見る用の眼鏡を通して見れば、足りないところしか浮かんでこないのは当たり前の話でしょう。サンフレに求めてしかるべき水準はサンフレに求めるものであって、ファジに求めるにふさわしいものではありません。


これは、海外⇔日本といった対比の場合でも同様です。


プレミアやブンデス、リーガ等欧州トップリーグは世界のサッカーシーンをけん引する最先端です。そこでは世界中から優秀な選手が集められトップレベルのプレーを披露してくれます。世界最高峰のクオリティを楽しみたい人にとって、欧州のトップリーグはその要求を受け止めるにふさわしい存在でしょう。

一方のJリーグはそのトップofトップからはほど遠いレベルであることは否めません。世界最高峰のクオリティを求める色眼鏡で見れば、Jリーグなんぞは極東のトレンド遅れの弱小リーグに映るかもしれません。しかし、かといってJリーグが面白くないのか?というと決してそんなことはないのです。


言わずもがなですが、男子⇔女子の対比でもまた同様です。


見る側の姿勢がおもしろいかどうかを決める


要は男女に関係なく、選手によって、チームによって、魅せるサッカーの姿は全く異なってくるわけで。結局、サッカーの魅力は見ている人 / やっている人自身がどう意味付けするのかどうかで決まるはず。


下山田選手のnoteにもこう書かれているように、自分も見る側の姿勢がおもしろいかどうかを決めるんじゃないか?と考えています。

見る側が選手・チームに対して勝手にハードルを上げて過剰な期待を寄せたとしても、選手・チームがそれにこたえられるはずがありません。できもしないことを要求して、いざ出来なかったから「つまらない」というのはなんぼ客でもちょい身勝手に過ぎるかなあと。もうそれは不幸せなマッチングとしか言いようがない。しかし、これは見る側の工夫で変えていけます。


では、見る側がどのような姿勢をとればクオリティを問わず楽しめるのでしょう?ひとつ自分の体験を共有させてください。


すべてのチームにはそのチームのキャラがある


男子・女子。J1~J3。JFL。地域決勝、地域リーグ。県リーグ2部まで。ああ、欧州トップリーグも。


これまで様々なカテゴリのサッカーを見てきましたが、試合内容は別として「クオリティが低いから楽しめなかった」というのはほとんどありませんでした。自分の体験上どうしてそう思えたのだろう?と振り返ってみると、そのチームにはそのチームのキャラがあるということを踏まえてサッカーを見ていたからかもしれないなと思います。


カテゴリが下がっていけば当然ミスは増えます。J1・J2のようなガチのプロじゃありませんから、ボーンヘッドも増えます。けど長所も短所も全部含めてそのチーム。あのチームだったらできるけど、このチームにはできない、でもそれもチームのキャラなんですよね。そのチームはそのチームのキャラをいかに生かして相手に勝つか。そういうせめぎあいがどのカテゴリでも行われていて、レベルの差はあれど全部おもしろいんです。


今そこにあるサッカーを愛せじゃないですけども、他のどっかのチームを見る眼鏡はいったん外して、そのチームのキャラをしっかりと見てゲームを楽しんでみる。偉そうな言い方になってしまいますが、そういう姿勢の人がもっともっと増えていけばいろんなところでよりサッカーが楽しまれていくんじゃないかな?と思っています。


余談


ちなみに、自分は女子サッカーの魅力は遅さにあると思っています。


これはどういうことかというと、慣れていない人にとってサッカーというスポーツは展開が早すぎて、ピッチ上の情報を読む時間があまりにも短すぎるんです。ですから何が起こってるのかわかりにくいんですね。


女子は男子に比べるとパススピードやダッシュのスピードが遅くなります。しかしその分展開を追うのに優しく、選手の配置をチェックしたり次の展開を読んだりするのにいくぶん余裕があります。


サッカーを読んで楽しみたいのであれば知識の積み上げとゲームを見る回数をこなしていくことが大事だと思いますが、まずサッカーの展開に目を慣らせるのであれば女子サッカーはもってこいだなと思っています。




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