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映画感想『Winter boy』
原題「仏 LE LYCEEN / 英 WINTER BOY」
◆あらすじ◆
冬のある夜。寄宿舎で暮らす17歳の少年リュカは父が事故死したとの連絡を受け、アルプス山麓の実家に帰る。愛する父の死に直面し、大きな悲しみと喪失感にさいなまれるリュカ。葬儀の後、兄に連れられて初めてパリを訪れたリュカは、兄の同居人である年上のアーティスト、リリオと出会う。優しいリリオに心惹かれるリュカだったが、リリオにはある秘密があった。
クリストフ・オノレ監督の実体験を元に作られた作品らしいが思春期の恋愛や父の死による喪失と再生が不安定な年代の心情に寄り添うように描かれていた。
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劇中では一度だけリュカの口から触れられたがこの作品のカギは主人公のリュカだけが父親の死の真相に疑問を持つ体験をしていると言う事。
そのシーンをプロローグに持って来たのが素晴らしいしその体験の有無にこそ彼と家族との【父(夫)の死】への感情や向き合い方の違いが見て取れる。
主人公がゲイだという事もリアルな性描写も自然に設定されているし移民や差別問題への言及も日常に在ると言う描き方が良かった。
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田舎からパリと言う大都会に出て経験する一つ一つがリュカにとって耽るに値するものだったのだろう。
自分の居た世界が現実だとしたらパリと言う装飾された街は願いが全て叶うパワースポットに思えたのかもしれない。パリに在る全てが現実から逃れられるツールなのだと・・・。
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ただ、逃れようとしても・・・いや仮に逃れられたとしてもそれは自分の欲望が創り出す幻影であり、瞬きする一瞬で目の前から消えてしまう様な迷夢だ。
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リュカが迷夢の境から抜け出せたのは誰しもが全てを想い通りに生きている訳ではないと知り、抱え過ぎた荷物を下ろす事を学んだから。
父親が自分を道連れにしようとしたかもしれない記憶と父の死の真相・・・。
それでも生きていると言う【現実】が彼を【生の継続】へと導いたのかもしれない。
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今作は同性愛者を主人公に置いているが先ず彼らは当たり前に存在するという設定である事が他作品との違いだろう。
そしておおらかにゲイライフを送っている思春期のリュカが父親の死をどう乗り越え成長していくか?に重点を置いている所に共感できる。
個人的には主人公が性自認に苦しむ話ももちろんまだまだ理解されない設定で描く事も必要かもしれないとは思うがむしろ家族がどう理解していくか?と言う話がもっと沢山描かれてもイイと思うのだ。
もう性の多様性を認めないなんて出来ないんだからね!
そうそう、余談だが息子のリュカがパリで有名な場所に行ったと話した時母親(ジュリエット・ビノシュ)が「ポン・ヌフ?」って訊くんだがそれはもしや監督のご愛敬っすかね?ww
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