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2023仲春 続川べり巡行

平日というのに土手の平場に大きなテントが
三つ立っていた 天幕といっていいくらいの 遊牧
民でもあるまいに 休日と休日の合間だから
休みを取ってきているのだろうか 誰もが休みた
いときに休む 気を使ったものだったが今となっ
ては別に好きに休めばよかったと思う 今はあの
人達との縁もすっかり途切れて これからも恐らく
再びあいまみえもしない 

土手は菜の花にむせる マスク越しでも匂うので
相当だろうとずらしたらむせた そういえば通勤
しなくなってから風邪をひかなくなった 寒いから
ひくのではなくてやはり感染症だと思う 寒いと
感染の敷居が下がるのだろう もう五年 あの
不快な病状を経験していない マスクはこれか
らも基本つけて暮らすだろう メリットがコミュ障
には多い 口元を人と話すに見られたくない

むせる菜の花

川辺の竹は竹職人のために残しておくという
不文律 そんなことを思い出して確か竹が川べり
には生えているはず それが一番の目的でき
ている 見当はあった それを土手から見下ろし
た 矢切の渡しの手前の竹藪だった 

竹の根本は何かに似ている

実際渡しまで降り立つのは何年ぶりだったろう
か まだ付き合っていたころの妻と来たような
気がしなくもない このあたりは下手に確かめる
と私じゃないと言われたりするので黙っている
河川敷の平坦なゴルフ場を割って雪柳が茂る
砂利道を歩くと みずみずしく鮮やかな緑に揺らぐ
竹藪が見えている 布袋竹の竹藪だった 矢竹
だとこれほど穂を伸ばさない 孟宗ならばもっと
高い 渡しまで突き当たると石碑があって一応
写真に収めておいた むしろが立てかけてある
簡単な売店のような物があって しきりに犬が
吠えかけてきた 何故か竹藪には誰かが切った
竹の切れ端が短く落ちていることが多い そこを
使えそうなものを選んで拾って帰る ちょうど
釣り竿の持ち手によさそうなこぶこぶの根本の
部分がいくつか落ちていたのを拾い 長すぎる
物を足押さえに折り その音で犬がやや常軌
を逸して吠え掛かる リードの元は色の黒い
太った年配の女性で どうもむしろの露店の
店番をしているようだ 興味もなさそうにこちらに
目を一瞬向けて すぐに関心なく無表情になる
フランクフルト100円 と書いていたがそれは
どこに保管されているのだろう 丈の短いスカート
の女性と制服を着た女子高校生がむしろに張り
つけられたおもちゃのアクセサリーを必要以上
に寄り添って見ていた ある種の少女たちは
いつも必要以上に寄り添うっている風に私に
は見えた

私は今まで東京で拾った竹で江戸竿などと悦に
入って細工をしてきたが 石碑には 下総の国
と昔の国名が彫られていて 下総竿 などと
意識の中で呟いてみた 先ほど拾った神社の
矢竹が 肩掛けからはみ出してからから音を
立てている 神穂竿 などと出来上がりを構想
してみる 帰ってきてから気が付いたが穂先に
なる枝の竹を持って帰るのを忘れた という事
で今ある葛飾のとハイブリッドの竿になる

帰りがけ 思いがけずにもう一つ 幹線道路の
交差の谷間に小ぶりな布袋竹の竹藪を見つけた
もう竹は足りていたがこの藪には切れ端枝一つ
落ちていなかった 緑と枯れた飴色が入り交ざる
細身の竹が西日に照らされていた 強い西日で
そうなるのかもしれなかった

こういうの書くの多分男 多分爺 

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