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男泣き

男泣き

男泣きも安くなった。よく、テレビで男が泣いている。泣くことに関して言えば、男が泣くのは親が死んだときだけだ、と教育されてきたので、基本的に泣かない。泣きたいことがあっても。ただ、年とともに涙腺は緩くなり、テレビドラマなどで思わず泣いてしまいそうになることもあるが泣かない。我慢する。

泣くことはストレス解消にいいと聞く。泣くためのイベントなども聞いたことがある。しかし、泣きイコールみっともないと価値観に深く刻まれている。それでも、何人かに泣くところを見られたことがある。できれば、その記憶を消してもらいたい。泣いたところを見られた人には二度と会いたくない。

妻には二回、泣くところを見られた。一回は父が死んだとき。もう一回はなぜか、さいたまにあったジョンレノンミュージアムで、ジョンの生涯をコンパクトにまとめた案内映画を見たとき。なぜ、あんなに涙が流れてきたのか今でも不思議だ。どこか、スイッチみたいな物があってそれをうかつにもさわってしまったとしか言いようが無い。一度、スイッチが入ると涙腺は極端に脆くなる。それこそ、踏切で目の前を電車が通り過ぎても涙が出てくる、そんな気がする。

その、さいたまでは、何泣いてんの? と妻に呆れられて、気恥ずかしいような、もどかしいような、恨めしいような感情を妻に抱いた。ジョンレノンはインマイライフで、愛すべき場所のいくつかはすでに無く、いくつかは今でも残っていると歌っていたが、私の泣いた場所のひとつはもう、今はない。

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