ケベック州

メタセコイヤの木立の下で降りしきるセコイヤ
の枝葉を茶色く見ている　今日は北風だから
影の向きとははすかいに茶色くて細長い枝葉
が降ってくる　降っても降ってもまだ尽きない
程度に木立は深くて　それでも幾分梳かれた
梢透かしに青空が見えて　そこを勢いよく薄い
雲が過ぎていく　風の音は強く　いつものボリュ
ームではラジオがよく聞き取れない　日向は
すぐに影になって居場所が少しずつ広場の方
へずれていく

比較的早い時間に目当ての魚が数匹獲れた
からあとはもう様子見で　カラスが向こうで集ま
っては散り　少し近づいては散り　さらには頭上
の枝に数匹集まってきたのでしばらく見上げて
いたけれど特に何も起こることなく散り　師走
だというのに撮れる写真と言えば秋のような物
ばかりで　そういえば公園の入れ口で兵器の
ようなレンズのカメラをささげ筒のように持った
若くない男と何人かすれ違って　どのような
写真を撮るのだろう　誰もがきれいだと思うよ
うな写真を撮るんだろうな　そのための望遠だ
ろうな　と半ば軽蔑しつつ脇を通り過ぎた

はっきりした紅色に開ききった花があって椿な
のだろうか　木の葉もきっぱり深緑で声の大き
な女のような　今年初めて今日革ジャンを着た
どのような経過から家にあったものかわからな
いキャメル色の毛布を背中の大きさに鋏で切っ
て裏地に安全ピンで止めてある　それだけで
かなり温かいから　ベストなどと言う胴体だけの
保温は腕の寒さに対しての耐性を積み重ねた
上での形よりもより省略しながらの温かさだか
ら　後は首　首手首の対策で身軽になれる

橋を渡る手前で見たところ水と木立との色合い
から不意にケベック州という言葉が浮かんでき
た　言葉でしか知らない土地だが　それにきっ
と寒さも比較にならないだろうが　ドッグランが
奥にあるから下町の珍しい犬もよく歩いていて
犬を連れている人同士は多分味方側と互いを
認識していてきっとこちらは部外者なのだが
その閉鎖性が犬の顔に出て来ているならまだ
敵対の心理もわくがレトリバーの垂れた耳な
どはむしろ友好の手紙のようでこんなに寒いと
身体からあたたかくなる例えば生姜をすり下ろ
した甘酒など　その後の自転車運転は違法か

千葉　埼玉　東京　偽のカナダを通ってまた橋を
渡るときに鉄橋の下に常設されたテントから
人が出てくるのを半年で初めて見た　手前に
芒原が影と光に分かれていたので写真をとった
がトリミングした　非常時に非常時の舟が出る
停泊エリアに白い鳥が飛んでいたので何度か
シャッターを乱打したが　トリミングした写真は
風に布切れが流れているように見えた　引き延
ばしたら写真の時間がすっとむかしに退行した

早く水場を引けたからみずべのいきもの園に
立ち寄った　西に大きくとられた窓の部屋に母
子と水槽に入ったアオダイショウがいた　男が
無言で水槽の手入れをしていた　水槽の水は
緑でうなぎが飼われていたようだが普段はうな
ぎは筒状のところにいるので体は伸びても姿
を見せない　秋のフィルタがかかっているのか
母子は顔が白飛びしていて蛇は灰色がかって
いた