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まんしのおっちゃん


まんしのおっちゃんは共産党だった
戦後から死ぬまでずっと
まんし とは 満州の事
まんしのおっちゃんは田舎を棄てて
満州に渡った
満州に賭け 満州で一旗揚げて 
満州に骨をうずめる覚悟で
にっぽんを棄てた

満州でいろいろなことが昔
あったことは読みものなんかに
記録されている
正しい記録かどうか知らない
階層によっても体験は
全く異なってくるだろう
上層部はいち早く逃げたという
話も聞く
とり残されたそれ以外の人は
命からがら祖国を目指した

まんしのおっちゃんは
帰れた一人
そして共産党に入った
ということは共産主義者に
なったということだ
農村で党に入ることが
その当時どんなことか
祖父はカンカンに怒り
縁を切る と言ったらしい
ただでさえ満州行きには反対
していたようだった
それで帰ってきたらア〇
軍隊にいた祖父には
全く理解できない存在だろう

まんしのおっちゃんは
農業にあきたらず商いを
起こした
フルネームが屋号の店
商売は軌道に乗り
親類も党を差し引いて
普通に接するようになる
選挙に出て 町の議員になった
町から市になり議員を続けた
最後には県議になった
先生と呼ばれたか
それを良しとしたのか知らない
若い頃にかかる熱
孤独感からの革命へのあこがれ
まんしのおっちゃんに
共産主義について聞いてみた
かどうか記憶が定かではない
きいて まあそれは云々
とはぐらかされた気もするし
本当に聞いていたとしても
はぐらかされた気がする
銀色の四角いフレームの眼鏡を
かけていた
見ようによってはインテリ風                      何かの冊子で肖像を見た                        母が持っていたものだ
つなぎを着ているところしか知らない
まんしのおっちゃん とは
母が言っていた彼の事だ

まんしのおっちゃんは
若い頃ひどい目にあい
それからは主義に殉じた
傍目にはそう見える
そういう経歴に見える
どんな目にあったのか
どんな世界を夢に見たのか
縁遠過ぎて全く知らない
これらの話は全て母からの
また聞きをそれらしくまとめた物だから
じっくり話したことはない


書くにあたって
ネットで検索かけてみたが
党に関する情報は
全く引っかかることがなかった
死んでしばらくたつとはいえ
県議までつとめたのだから
出てきてもよさそうなものだ                     唯物論では魂は無それともすべてが記憶違いか
出てきたのは
フルネームの屋号による
彼の商売が続いていること
けれども
グーグルの口コミには
星も                                  書き込みも何もなかった


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