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紫は狂気の色だと

うっすらと頭痛の朝 竹に絹糸を巻いて透き漆
で塗っていたものの手触りを確かめる 上から
下へ指でつまんで 引っ掛かりが無いか 尖って
いるところはないか ある程度確かめたうえで
いずれにしろ3000番くらいの紙やすりで水研
ぎすると 目に見えての塗り斑は消えて 肉眼
ではすっかり平たく 硬く塗り固められたように
見える 細い番手の紫色の絹糸を重ならない
うにきっちりと巻いたのに よくみればわずかに
すきまやもり上がりのような物がわかる 紫に
着色された絹は深い紫で 上塗りで朱に固めた
りするのがもったいないような美しさ 紫は狂気
の色だと小さい頃よく言っていたが 何が根拠
なのだろう 黄色い救急車というのも聞かなく
なった

またにわかに向こうが透ける原石の類を見たく
なって ネットの画像に並ぶ方解石や水晶を
見ていたら 人工水晶という言葉が目に入った
水晶はガラスで模すことが出来るだろうとは思
っていたが 人工的に作り出せるのは知ってい
たようで 忘れていたようで つまり知らないと
いう事だろう 人工とはいえ生成は天然の水晶
と同様な成り立ちになるので 人工か天然か
というのはもはや区別がつかないそうだ ガラス
玉も人工天然水晶も物質的にはそれほど変わ
るものではないらしい ガラス球も水晶玉も
気持ち次第では同じなのだった

気持ちだけを切り替えれば結局は似たようなこ
となどいくらでもあるのだろう そのあたりを突き
つめていけば心のありようみたいなややカウン
セリングめいたものが書けるのかもしれないが
結局は人から言われたところで自分が心から
納得しなければ本当の救いにはならないだろう
逆に 本当の救い などと考えることは恐ろしい
気がする 何でも これにすがりさえすれば救
われると言った物事は そんな便利な物事は
おそらくない たまに苦しみ たまに救われ 波
風なく暮らすのは味気ないかもしれないが幸せ
だ 多分幸せなことなのだ 断言してから修正
してみる 

大きな水晶が安い理由は多分限りなくガラスに
近い模造水晶だからなんだろう 水槽にごろごろ
落としておくという用途だからそんなに気にする
物でもなかった 娘が留守にしている間に水槽
の汚れをぬぐって 沈めてあった水晶を取り出し
てみたところ 苔を帯びてうっすら緑がかってい
た 多分ガラスに水苔がつくように模造水晶に
も苔が同じくたかるのだ それを小魚たちが
ついばむから洗い落さずにそのまま沈めた 離れて
から見ると緑がかっては見えなかった

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