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大回り

大回り

暑さは脱いでも涼しさに限界がある。とくに外出時は裸で歩くわけにも行かないし、仮に裸になっても暑さには変わりはない。その点、冬は寒ければ着込めばある程度防寒出来るのがいい。とくにマフラーの効果は絶大だ。首に、少し上等なマフラーを巻くだけで絶大な防寒効果を発揮する。

というわけで冬になったらやってみたい。大回り乗車。同じ駅を通らずに一筆書きで隣の駅まで大回りをして電車に乗る乗り方。一日、昼食を含めて千円の旅。

いろいろなルートを考えてみたところ、もっとも遠いところで小山のあたりまでいけることがわかった。また、田園地帯を通り抜けるルートや、武蔵野の方に足をのばすルート、湘南の海の方へと至るルートなどいくつかのルートも調べた。

暖かい電車の中で、マフラーをゆるめて窓の外の見たことのない風景を見る。写真を撮ったりする。冬の枯れ葉いろの寂しげな風景と吸い込むと気管のこごえる冷たく透んだ空気が好きだ。

昼食は駅構内の温かい蕎麦を立って食べる。そこで、少し暖まったら、ホームの突端の、人のいないベンチで、書き物をしたい。ポメラを膝に、冷気の中で内省的な文章を書きたい。

今更どうにもならない過ぎたことなど、かじかんだ指でとつとつと文字を埋めてみたい。降りたことのない駅の中で、背中を丸めて。この世に一人しか居なくなったような顔をして。

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