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無名の楽器

無名の楽器

中古楽器を商おうというのは以前から考えていたことで、せっせとオークションで集めていた。どうせ後で売るのだから先行投資とばかりにいろいろ買い集めた。

昔の国産ギターは特に手当たり次第に行った。グレコ・ヤマハ・トーカイ・フェルナンデス。

驚くのはヤマハの楽器の精度だ。ヤマハの古いギターは本当に劣化が少ない。音もいい。が、個性がない。実用品というか、万人が納得する品質。

もし、今の新品と当時の古いヤマハが同じ値段だったら古いヤマハの方を私はおすすめしたい。そもそもあまり新品に興味がない。

グレコは個体差が激しい気がする。レスポールモデルで中が空洞の作りのモデルがある。型番で言えばEG500(この500というのが値段を表す。五万円だ。ヤマハも当時はだいたいそうで、頭の一桁に万をつければ当時の定価)の80年前後あたりか。これはレスポールの形をした別物で、軽く、音は好みは分かれるだろうが私は好き。取り回しがよく使いやすい。

以前、楽器屋で初心者のお客(でも楽器を始めるにあたり本格的なものを手に入れたい)と店員の会話を聞くともなしに聞いた。「やっぱり高い方が丈夫で長持ちするんですかねぇ」「いや、むしろ逆です。高い方がいい木を使っていい塗料を繊細に塗るんで、剥がれやすくなったり、木が割れやすくなったりするんですよ」

そのときは、楽器について、少しお金も入ったからエレキギターでも買ってみるか、といった気持ちでその場に居たのだが、そうか、やっぱりマーチンとか高い奴はそういう短所があるのか、などと妙に納得してしまった。

そして、エレキを買うはずがなぜかヤマハの12弦のでかいギターを「この値段で単板ですよ」などと言われ「単板ってなに?」とか思いながら「あぁ、そうですよね」といいつつ電車でダンボール入りのそれを抱えて帰ったのだった。

そんなところから今、所有ギターは100本を超え、それらを整理するにつれ、無名のがらくたの様なものがなんと多いことかと改めて驚いてしまった。

無名のレスポール、ストラト、テレキャスター。プレシジョンやジャスベースもどき。ノーブランド。しかし、たたずまいは本物のようにいい、と言いたいが何でこんなの落札したの、と言うようなもっといえばノーブランドならともかく、ロゴが精巧に入れられてしまっているものすらある。当然、それを承知で落札したのだが当時は。

音については、正直、高いものもやすいものもアンプを通してエフェクターをかけまくってしまえば、よく分からない。それに好みもある。同じ音でも聴いてきた音楽によって、それぞれ聞こえ方が違うのではないかと思う。

それがうまくマッチングできて、いい取引ができるような、生業になるかは別として、ゆくゆくは楽器商を目指したい。

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