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花見川電鉄

相変わらず夢か。夢だ。

花見川電鉄という鉄道会社に就職している。

電鉄なのに職場は工場で、金属製の薄いグリーンの箱型の何か装置ががらんとしたコンクリの床にどういう規則か知らないが設えられ、そこで何をすることもなく、ぶらぶらしている。

同じようにぶらぶらしている男や女が何人もいるが、皆若く、こんな年輩者でも雇ってもらえて、とやや幸運に感じると同時に、全く勤めなどするつもりはなかったのに何故、という僅かな憤りも同時に感じている。

と床が揺れ出して、すでに、制服制帽もなく普段着のままなのに研修列車出発だ。

乗務員室がやけに広く、そのくせ何の計器が配されるでもなく、ただ、横ばかりの向きの揺れにやや広めのスタンスをとって立っているのがやっとの体で、その車両と後一両の二分の一のサイズの車両に、客なのか、研修指導員なのかわからない人たちがほんの数人座っているだけで、本来なら私が何かをすべきなのだろうが何も教えられて居ず、また、何も教えようと言う気もないようなのが先輩車掌の表情からきっぱりと感じられ、ああ、ここで何もすることはないのだ、と悟ったとたんにぞっと寄る辺なさが心の奥底からわいて、裏切られたから開き直る、というような投げやりな気分に覆い尽くされた。

そのあとは、ただ、どういう用事でかその極端に短い車両をせわしく行き来する車掌の後をついていったり追い越したりしながら、今夜の歓迎会に気をもみながら電車の中を動き回って働いたふりをしていた。

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