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豪雨

豪雨

バケツをひっくり返したような豪雨をとあるデパートの集配場で学生時代に経験した。集配場はトラックが入ってくるため大きくシャッターが開いている。大雨の映画を見ているようだった。しばらく雨宿りするとすぐにやんで、濡れそぼった町を帰った。ここ近年、ゲリラ豪雨と、すさまじい雨が局地的に降ることがよくあり、房総半島の真ん中あたりに居るときに一番すごいのを経験した。

その日はその地域を集中して訪問する業務に就いていたが、天気予報の言うとおりまもなく雨が降り始め、あっという間にワイパーも効かない、雨音で会話も出来ない、傘の役に立たないすさまじい雨を雨雲を追いかけるように移動しなければならなくなった。ただでさえ雨で視界が効かず、ナビに従って動いていると道はどんどん細くなり、また低地に向かっているようで道は川になっている。対向車もほとんどいない。

そのとき、私は女性職員とペアでその業務をしていたが、少し車外に出ただけで二人ともずぶぬれになった。外気は秋口にしては暑く、ずぶぬれの格好にはエアコンが寒い。こんな風になるとは思っていなかったのでろくな雨具も準備していない。よく、テレビで川のような道を進む車を見ていたが、まさにあんな具合で、こういうときはアクセルをふかしながらマフラーに水が入らないようにしなければならないと聞いていたので、とにかくアクセルを開いて、少しでも水の少ない方にいけるよう闇雲にはしった。できれば高台のようなちょっと車が止められる場所で雨をやり過ごしたかった。

こう言うときに限り、そのような場所は都合よく現れるわけもなく、ホームセンターを見つけたので駐車場に入ったところ、そこもぐんぐん水位が増してくる。となりで同行者がスマホを見てるとやはり確実にいま、一番ひどいところのさなかにいるとのこと。まずい、とそこもすぐに逃げだし昼食をとろうにも田圃と雑木林しかなく、一時間ほど車を走らせただろうか。雨が何事もなかったかのようにびたりと止んだ。

道はところどころ冠水し、おそるおそるその水をわたりながら、ようやくのことガストを見つけた。そのガストはその一週間前にこれほどではないがやはり雨にやられて駆け込んだのと同じガストだった。

まだ乾かない衣服のままランチにドリンクバーをつけた。私は何度もスープをおかわりした。同行者はホットドリンクを飲んでいた。足下の濡れがいつまでも乾かなかった。店を出ると、雨が上がりはむんと蒸し暑く、田舎の空に、つぎつぎと雲が小早く流れていった。

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