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あかい顔

そもそも抱かれたとは
思ってはいないんです
たくさんの人と関係が
あったとしても 水彩画の
滲んだようなところの
記憶しかなくて
自然に帰ったような感じで
損したとも思わない
夕方のような記憶

けれども
あの顔だけは今でも
鮮明に思い出せる
赤い油絵
私が勝手に驚いた
だけだけど

いわゆる 行きずり
はいつも私を高みに上げる
こちらがキーを握っていて
駆け引きなんてあるようで
ない
薄暗い隅っこでの手探り
とおもっているのは
私ではなくて

私の心を満足させてくれたなら
ご褒美に身体を付けます
心の満足は一瞬でしかないし
身体の変調はかすかかもしれない

やけに赤っぽいホテルの部屋で
いきなり男は電気をつけた
途中だというのに
仁王立ちになり
私を偉そうに見下ろした

男のそのあたりに
顔があった
局部を中心にコンパスで引いた
ような赤くただれた顔の輪郭
中心の部分だけが
紫にすらりと伸びていた
激しくえづいた
涙が滲んた

想像してみていただけますか
私が隠してきたことを


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