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利根運河

利根運河

利根川は輸送に重要な川で、銚子からの物資が上る。
江戸川は東京湾に注ぐ。
その間をつなげたのが利根運河だ。詳しいことはしらない。
魚や醤油を運んだらしいが由来に興味はない。今は草深い土手の下で細く水面がさざなみをたてていたりする小さな水路だ、というかそういう部分しか知らない。
大きな水門が県道沿いに一つあり、その先にコンクリートで四角く区切られたプール状の取水施設なのだろうか、水溜めがあって、そこに何人か釣り人がいた。いい位置のひとはしきりに光る小魚を釣り上げていた。
何を釣っているのか聞くと、ハヤ、と言う魚をねらっているとのこと。ハヤというのはオイカワと言う魚の事だと認識している。断続的に魚釣りをしていたので本による知識が少しある。図譜によると尾に近い下の鰭が蝶のように垂れる綺麗な魚だ。
こんなところに居るのか。
次の週釣り竿をもって行ってみた。餌は赤虫、小さな針で小さな浮きをつけてチョコレートの様な形のコンクリートで護岸された川のほうで仕掛けてみると、まもなく釣れた。
クチボソという割とどこにでもいる雑魚ではないか、と思った。
一応、水をくんだバケツに入れた。五センチぐらいだ。
その後、ややあってまた同様の魚が釣れた。
四角のコンクリプールの方は先客で埋まっている。しかも、そこは深いようで、みんなリールを使っていた。後ろに回って釣果をのぞくとやはり五六センチの魚体が水を張ったバケツの中で休んでいた。話しかけてみると、その人はタナゴを狙っているといった。まだ、ここにはタナゴが居るのか聞いてみると、居ることはいるが川魚の料理屋が網をおおがかりにしてさらっていってしまうのだという。その後は釣れない。今日あたりはどうかな、と釣り竿を上下しつつ教えてくれた。
そのプール状のコンクリの向こうは利根川だ。あちらは広くて魚影が薄く、釣りにならないそうだ。
斜めに護岸されたコンクリートのへこみの部分を踏みながら水面ちかくまで降りていく。泥が乾いてひび割れ、反り返ったり剥がれたりしている。
水は透きとおっているが、コンクリートは泥で赤茶けて、虫がういたり、水の中のもやもやした生き物か植物かわからない何かが流れたり引き戻されたりしていた。
自分の影が水の中にくっきり落ちたり、揺れたりした。草の緑と空の青。濃紺の流れ。少し肌をじりじりさせるはっきりとした日差し。
二十三年前ぐらいの土曜日の昼下がり。


ヘッダー写真は利根運河と関係ありません

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