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#写真

二週間後 わたしのnote遍歴7

楽になりたい。どういうことか。すべてを投げうちたいという事。つまり生きる事すべてを。 そうなったら限界だ。今まで 同じ薬を判で押したように処方してきた医者ではだめだと思った。別の医院 通院すら苦痛なのでできるだけ近い医者。ネットで探して電話をかける。一刻も早く診てもらわないと・・・ 電話受付の段階で 担当者は話をよく聞いてくれた。やわらかい対応だった。少し気が楽になった。 しかし 最も早く取れる予約が二週間後だという。 二週間 地獄に耐えろと。貧困不安妄想地獄。あたま

写真のしろい

写真のしろい ワタナベアニさんという写真家、デザイナー、文筆家がいる。私は写真についてはとるのは好きだが、全くの素人で、アニさんがFBにアップしてくれる写真もただきれいだなあ、とかおもしろいなあ、としか見ることが出来なくて、技術的なこと、たとえば露光とかそういうことの詳細はよくわからない。 また、かなりの多筆家でその文章はなまなかなコラムなど目ではないほど面白く、視点がユニークで、示唆に富む刺激的なものだ。哲学から下ネタまでのふれ幅が大きいのも魅力の一つだ。 いつものよ

月を撮る

月を撮る リコーGRはとてもいいカメラだと私は思う。気に入っている。玄人の視点ではどういう評価か知らない。しかし、素人としては簡単で自分が気に入る写真が、高確率で撮れるのがいいカメラだ。ただ望遠が効かない。近くの物を撮る専用になっている。 望遠撮りたい。ということで先般、光学三十倍のコンデジを手に入れた。月を撮りたい。そして、撮れた。 珍しく、比較的からりと晴れた日の夜、月が出ていないかと窓の外を見たら出ていた。窓から少し、乗り出すようにして、窓枠で体と手を支えて、月に

ポメラの不満

ポメラの不満 ポメラというミニワープロのような機械で文章を書いている。思えば初めて文章を打ち込んだのはワープロが出始めて数年経ったときだった。新薬治験ボランティアという名の高額バイトの報酬で手に入れた。打った文章をみる窓はほんの2行程度の表示しかなかった。何を打っていたのか忘れてしまう。 そして、PCへと打ち込みは移り、適当な文節でもかなりの精度で変換が出来、コピーペーストも一瞬で出来る。賢い。 で、ポメラ。変換精度はかなり劣る。少し複文節になるととんでもない変換となる

GR

GR 精密描写とかスポーツ写真のようなアクティブな写真には疎い。リコーのGRというシリーズが好きだ。最新型のふたつ前、「GR」というのを数年前アマゾン中古で手に入れた。現在の最新型が「GRⅢ」なのだが、このシリーズはGRデジタルで4まで、デジタルが抜けてGR、GRⅡ、GRⅢとややこし。 GRデジタルは2から4まで持っているが、3が自分としては一番しっくりきていた。そして、リニューアル後、デジタルの抜けた「GR」だが、マクロ(接写)が10センチ以上離さないとできなくなったとこ

絶えた家

絶えた家 雑木林に道とも言い難い細い筋がじぐざぐに通っている。かさかさ言う草を踏みながら分け入ると、古い、大きな瓦屋根の屋敷がある。引き戸のサッシは後から取り替えられたらしくまだ新しい。鍵を渡されて、後はご自由にといわれる。大きな家屋に不釣り合いの小さい鍵は思ったよりスムーズに回った。たたきにビニールのサンダルが一足、ハの字にぽつんと脱がれていた。この家は絶えた家だ。                        係累すべてがもうこの世にいない。おおかたの家財は整理されてい

家の風

家の風 以前は栄えていたのに寂れてしまった場所はいろいろなところにある。街道沿いの宿場町のようなところ。商店街があったと思われる旧道。木造の古い平屋に立派な瓦屋根が葺いてあり、古い店で荒物などを扱っている。新しい買い物客など見込めそうもない古い商い。引き継ぐものも絶えつつありこの代でその歴史を閉じる。あるいはもう閉じて、がらんとした店のあとに行李などが積み重ねてある。何か、歴史的な価値のある道具のようなものが残っているかと思えば、そのようなものはすべて手放して逸散している。

轡虫

轡虫 父親と反りがあわなかった。父親が惚けてから、本当に久しぶりに、ようやくちぐはぐながら会話を交わすようになった。             おそらく、父親は私に過大な期待をかけていたのだろう。何か、男の子供に対する、父親なりの、何らかの基準があって、それを私は押しつけと感じた。そして、反発した。父親の言うことにすべてノーを返した。     そんな親子関係にいた私は自分の子供にも知らないうちに、またはたまに気づきつつ、自分の父と同様の態度をとってしまう。          

吉田

吉田 世界遺産になってからなお人気が高くなった富士山だが静岡と山梨で見え方が違うのは周知の通り。山梨側を北麓というが冬はめっぽう寒い。吉田口のある富士吉田市は冬には昼間でも氷点下の日もザラだ。降り積もった雪は溶けずにさくさくの氷になり、快晴の日には細かく光ってきれいだが、溶けないと言う温度が数ヶ月続くということでもある。町のどこからも富士山は見える。みんな富士山を我がことのように自慢する。標高が高いので沸点がひくく、インスタントラーメンを上手に作れない。物価は決して安くなく