「歩く、を科学する」 トークイベントに参加してきました
先週のお話しになってしまうのですが、こちらのイベントに参加してきました。
このイベントは、司会の鎌田雄介さんが手掛ける「GRID ROOFTOP CINEMA」というイベントのPRのために企画されたもの。
イベントは鎌田さんの進行の元、まずは乙武義足プロジェクトの紹介VTRをみんなで鑑賞。このVTRは他のイベントでも見たことがあるのですが、私が一番いいな、と思うのは膝関節の無い短い義足で乙武さんが立ち上がって「おー!!」と目を輝かせるシーンです。
続いて、乙武さんと義足エンジニアの遠藤謙さんが登壇し、トークスタート。このプロジェクトが始まる経緯などを伺いました。R25の対談をきっかけに、遠藤さんからこのプロジェクトを提案された時、乙武さんは義足の練習なんてする気はなかったそう。でも諸事情で仕事が一切なくなってとても暇になり、 じゃあ、義足でも履いてみるか!という軽いノリで始めてしまったのが地獄の始まりだった‥とか笑。こういうとこ、何だかいいなぁと思ってしまいます。
今、乙武さんは膝関節をロックした状態で歩く練習をしているそうです。Instagramにも度々、その様子がUPされていますが、四肢欠損の方がこんな風に歩くのはとてもすごいことです。不勉強な私ですが、世界中探してもこんなことしてる人居ないんじゃ無いかな、って思います。そしてこれからは、ここに膝関節を着けて練習を開始するそう。「本当の地獄はここからです!」というプロジェクトメンバーの一言に「えー!!」と驚愕されていた乙武さんが印象的でした。
乙武義足プロジェクトのフェーズは3段階あって、今はまだ1段階目の山を登り始めてすぐの所なんだとか。歩行ができるのが第1段階、階段や段差を登れるのが第2段階、そして乙武さんが義足で歩いている風景が「当たり前」として社会に認識されるのが第3段階、というのが遠藤さんの描いているプランだそうです。最初に見たVTRでも、遠藤さんは「乙武さんを世界で一番速く走らせたい」とお話しされていました。
これはNewsPicksのWEEKLY OCHIAIに乙武さんが出演している際にお話しされてたことなんだけど、乙武さんにとってこの義足プロジェクトは「リハビリテーション」ではないのです。
リハビリテーションの語源は「失った人間の権利の復権」。生まれた時から歩くことが当たり前ではない身体だった乙武さんにとって、「歩く」ことは失った機能ではありません。乙武さんが歩くということは、単に身体の機能を拡張するだけのこと。
このお話しだけで、「障害の存在」や「多様性・ダイバーシティ」、「リハビリテーションと理学療法士が存在する意味」など、たくさんの大切なKeyWordが浮かんできませんか?
こういう視点、普段の臨床やリハビリテーションのお勉強だけだと中々気づくことができません。それに、何だかワクワクします!私がこのプロジェクトから目が離せない理由には、こういう所があるんじゃないかな、って思います。
乙武義足プロジェクトは元々、エンジニアの遠藤さんを筆頭に、義肢装具士の沖野さん、デザイナーの小西さんの4人で構成されていたのですが、リハビリテーションのイベントに乙武さんが出演されたのをきっかけに、プロジェクトメンバーに理学療法士を入れよう!というお話しになったとか。たぶん、↓のことですよね。
で、理学療法士の内田さん登場。内田さんは3年目の爽やかイケメンです。
内田さんの名前が出た途端、乙武さんが理学療法士としての内田さんの凄さを語り出します。彼がチームに加わって初めて練習したとき、重心移動の仕方を少しアドバイスされただけで、歩きやすさが格段に変わったんだとか。
内田さんは、所属先の社長さんと遠藤さんとの繋がりでプロジェクトに参加されたそうですが、本当はもう少し経験のあるセラピストの名前も候補に挙がったそう。でも、プロジェクトに入る理学療法士は「乙武さんが気軽に文句を言える存在であって欲しい」という遠藤さんの思いから、技術があって尚且つ若い彼が抜擢されたそうです。単なるプロフェッショナルの集合体にするのではなく、チームとしてのバランスを考えている遠藤さんに感服してしまいます。
それから、あの偉大な乙武さんからこんなにも信頼されている内田さん。もともとはパーソナルトレーナーをされているそうですが、練習を始めるに当たって乙武さんの生活歴や日常での動生活動作を情報収集し、まずはその人となりを知ってからアプローチを考えているんだとか。
どんなプランを立てるんだろう、と正直に言って想像もつかない世界でしたが、そこは同じセラピスト。真摯に向き合うためには基本の基が大切なこと、その上で細かい技術や知識が必要になってくるんだということを、改めて勉強させていただきました。ほんと尊敬。
それから義肢装具士や理学療法士といった、「良い仕事なのに社会的な認知が低い義肢装具士や理学療法士を、プロジェクトを通してもっと世の中に知ってほしい」遠藤さんにはそういう思いもあるそうです。
会場には私を含めた多くの理学療法士も参加していました。遠藤さんのお話しに、思わずじーんと胸を熱くしてしまったのは私だけではないはず!笑。
それから義足自体のお話し。乙武さんが履いている義足は、より人間の足の形に近いデザインを心がけているそうです。この義足、イベントで本物を見ることができたのですが、黒塗りでまさにサイボーグという感じがめちゃめちゃカッコイイ!!
実は義足について、シルエットやデザイン性ではなく機能を重視して考えてみたらどうですか?という意見もあるんだとか。でもここにも深い理由があるんです。
この遠藤さんの一連のツイートを読むとなるほどな、と思えるのですが、社会の中のちょっとした「違い」は人間の総意誤認効果によって大きな「違い」として捉えられてしまいます。人間は自分と近い価値観を持つ人とコミュニティを作りたがるため、この総意誤認効果は「多様性」を目指す上で社会のボトルネックに。義足を履いていることが眼鏡をかけるように自然なこととして認識されるためには、このちょっとした「違い」を少なくすることが必要です。それ故に、乙武さんが自然なシルエットで自然に歩くことを目指しているんだとか。
「乙武さんが義足を履いて歩く」ということだけでもすごいことなのに、
その背景には「社会」や「障害」に対するたくさんの思いが込められていること。
またそんな思いを背負う乙武さんを支えるために、
私と同じ理学療法士の方が携わっていること。
「私が理学療法士だから」というのはもちろんあるのですが、いろいろな方の思いを聞かせていただくと、仕事人としてだけでなくひとりの人間として、このプロジェクトを応援したいな、と思ってしまいます。理学療法士の方にはもちろんですが、それ以上にもっとたくさんの人にこのプロジェクトを知ってほしい。
そんな風に思っていたら、質問コーナーでフジテレビの関係者の方が「プロジェクトを進める上で衝突したことなどありましたか?」と聞いていて、切り口すご!!と思ってしまいました笑。余談です笑。
最後になりますが、微力ながらこれからも乙武義足プロジェクトを応援しています。
私も写真、撮ってもらいました🤗
読んでいただきありがとうございます。まだまだ修行中ですが、感想など教えていただけると嬉しいです。