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小説『MANATAMA-マナタマ 動物界編-』第2話 予感

じいちゃんに拾われてからおよそ半年、食いしん坊の俺はメキメキと成長して、ライオンのようなたてがみを持つ立派な猫ちゃんに成長していた。

じいちゃんに拾われて何が素晴らしいって?まず1日3食の自動ご飯システムは当然のこととして、金髪ねーちゃんのとこは言うに及ばず、恵まれていた保護猫活動家のおっちゃんのところより数倍広い上に、外への出入りが自由ってとこだ。

俺の最近のお気に入りは、お寺の裏にある広大な森の中で木登りを楽しむことだ。森の中で生活しているガチ野良の友達もたくさんできて、毎日遊ぶのが忙しくて大変だよ。まぁ、猫にも派閥があるから、たまに縄張り争いで戦うこともあるけどな。喧嘩じゃ誰にも負けねぇ。おかげで俺はいつの間にか森の猫のリーダーになっちまった。あ、森の中に入っている事はじいちゃんには内緒な。

噂をすれば、じいちゃんが向こうから口笛を吹きながら縁側の長い廊下を歩いてやってきたぞ。よーし!いっちょ脅かしてやっか!

俺は体勢を落としてかがみ込むと、後ろ足を蹴り上げ勢いよくじいちゃん目掛けてジャンプした。

ずべし!

「わぁっ!?」

早朝の爽やかな静寂の中に、じいちゃんの素っ頓狂な声が響き渡る。油断したじいちゃんの顔に朝の挨拶代わりに思い切り張り付いてやったのだ。じいちゃん、メシくれ。

「お前は本当に激しいな。はげしーくんか」

じいちゃんは俺を引き剥がすと、呆れた顔をして台所まで連れて行ってくれた。カリカリの袋を持ってくるじいちゃんに、俺のお腹はまるで唸り声を上げるかのように鳴った。かつお&チキンの被毛ケアな。こいつが美味くてさ、もう1年以上リピートしてる。猫用器だと足りなくて2、3回おかわりしてたら、犬専用の大盛り器に代えてくれたんだ。お蔭で元々の低栄養が嘘のようにメキメキと大きくなっちまった。

「ほんと、でかくなったよなぁ」

がっつく俺を感心した面持ちで眺めるじいちゃん。俺が食べている間に、じいちゃんは隣の部屋で出かける身支度を始めた。あー、今日は"出張のお勤め"ってやつだな。戻ってきたじいちゃんは身なりを整えつつ

「海よ。今日は街へ出張のお勤めだから少し遅くなるぞ」

俺の予想通りの言伝をするじいちゃん。ちぇ、今日はポクポクなしか。あのポクポクに後ろから蹴りを入れてじいちゃんを驚かすのが好きなんだけどな。

「あとでメイ婆ちゃんが来てくれるから遊んでもらいなさい」

改築したばかりの玄関で、じいちゃんは下駄箱からお坊さんの靴を出し、座って履きながらそう言った。メイ婆ちゃん…あの人か。ふんわりした人間で優しくて好きなんだよな。来る時はたいてい孫とかいう子供が2人セットでついてくるから騒がしいんだけどな。

じいちゃんは思いだしたようにポンと手を打つと、メシを食べ終わって舌なめずりをする俺に、いたずらっぽい笑みを浮かべながらこう言った。

「裏の森には狂暴なイノシシが出るから入らんようにな」

イノシシ?イノシシってウマいのか?森の猫たちの間でも狂暴な動物の話は聞いたことがないぞ?イノシシという響きに完全にはてなマークが浮かんでいる俺を後目に、じいちゃんは玄関の扉をガラガラと開けて

「それじゃ海よ、行ってきます」

眩しい朝日が扉の外から入り込み、じいちゃんの姿が光に包まれてかすんでいる。じいちゃん…?この時俺は、なぜだかじいちゃんが遠いどこかに行ってしまうのではないかという、一抹の不安のような感覚に襲われていた。

3話に続く

あとがき

漫画『MANATAMA』はメジャー誌での連載用作品として描いていますが、連載が決まれば1話から描き直す予定です。

つまり、現在公開している漫画の1話と、小説の2話やそれ以降の話については、商業用のベースとはなるものの、連載が決まった時点で打ち切りなのです😅

悪しからず、です。。。

また、審査員様向けに設定資料集の記事ではネタバレ的に世界観設定やキャラ設定を公開していますので、読まれている方はもし商業誌作品に移行した時に「あぁ、あのキャラか~」となると思います笑




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